須恵器・土器を愉しむ【観覧メモ】瀬戸蔵ミュージアム(愛知県瀬戸市)の本気の窯業博物館
2021年3月上旬観覧。名鉄瀬戸線「尾張瀬戸駅」下車徒歩約5分。事前情報ゼロで、何となく瀬戸焼の物産館的なものを想像していたが、建物の大きさに驚く。建物2階に受け付け。館内は2階と3階を使ったかなり大きな施設。数十分の駆け足見学を想定していたが…。(下図は館内配布の案内図)
まず焼き物の出荷で賑わうかつての駅。そこからやきもの工場や窯の再現。
13世紀前半、鎌倉時代に中国で焼き物を学び、日本各地に土を求め、瀬戸に窯を開いた陶祖。
ここからは窯業全般を産業技術の発展を細かく説明する「生産道具展示室」。轆轤は轆轤ピットに刺した手回し、足蹴りから電動、自動まで、実物が並ぶ。記録映像の動画も要所要所にモニターがあり、土作りから窯の作業まで、それぞれ数分だが全部見たくなる内容。2階だけでも相当な時間が必要だ。
山茶碗焼成時の窯の中での「積み方」の変化。
2階が本格的工業史の博物館なら3階は、マニアックな考古の博物館だ。入口の土師器や須恵器の展示は序の口にすぎない。
そこからは壁を覆う「瀬戸焼の歩み」の展示。5世紀の須恵器生産の開始から、30から50年スパンで、器種の変化を延々と実物で展示し続ける。碗や皿の変化の背景に人びとのコミュニティや食生活の変化が伺え、ものすごく刺激的。平安時代と戦国時代の時代劇を思い浮かべ、宴席のシーンに出てくる器はどんなものだったかを思い出す。横に一歩移動するのもたいへんだ。時間がまったく足りない。
町には窯業に関する歴史スポットもたくさんあるようだ。もちろん、窯元や陶磁器販売店も。これは一泊必要だった。とりあえず、この壁も制覇できなかったので、再訪しなければいけない。
ご当地焼きそばとして「瀬戸やきそば」ののぼりを発見。特徴は「蒸し麺を使用。具はキャベツと豚肉。いたって普通の焼きそば」とのこと。ただ1つ決まりがあり「瀬戸焼に盛り付けること」。「瀬戸焼」の「そば」なのだ。このコンセプトは正解では。かならず瀬戸焼を使う。客も瀬戸焼きを写真に撮る。器としてのお試しもできて、欲しくなる。そしてそばはいたって普通に美味しかった。