なぜハダカデバネズミはネズミなのに30年以上も生きれる?: 長寿の秘訣とは
今回は、ハダカデバネズミの作り出す特殊なヒアルロン酸が、ハダカデバネズミが長生きするのに重要であることを示した研究を紹介します。
ハダカデバネズミは、30年以上も生きる、ネズミの中では最も長い寿命を持つ生物です。
今回の研究は、彼らの長寿の秘訣が、彼らの作り出している特殊なヒアルロン酸にあることを突き止めています。
人工的にこのヒアルロン酸を生産してヒトに投与するような技術に応用できれば、ヒトのアンチエイジングにも応用できる可能性があります。
紹介論文
Naked mole-rat very-high-molecular-mass hyaluronan exhibits superior cytoprotective properties
Nature Communications volume 11, Article number: 2376 (2020)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32398747/
ハダカデバネズミとは
ハダカデバネズミは、体長が10-15cmほどで、体毛がほとんどないネズミで、エチオピアやケニアなどのアフリカに生息しています。
地中で生活しており、体温を調節する機能がなく、哺乳類でありながら体温調節ができない変温動物です。
ハダカデバネズミは、普通のネズミの10倍以上、実に30年以上も生きる、とても長寿な生き物として注目を集めています。
その長寿のメカニズムが以前から盛んに研究されていて、長寿の理由にの1つとして、ガンになりにくいということが挙げられます。
ハダカデバネズミはがん抑制作用を持つp53というタンパク質の濃度が普通のマウスと比較して50倍も高く、そのためにガンになりにくいため、このことが長寿の理由の1つとされています。
ハダカデバネズミの作り出す長鎖ヒアルロン酸が、細胞傷害の軽減に重要
今回の研究では、ハダカデバネズミの作り出す、長鎖ヒアルロン酸(vHMM-HA: very-high-molecular-mass hyaluronan)が、酸化ストレスなどによる細胞のダメージ軽減に重要な役割を果たしていることを明らかにしています。
この研究ではまず、ハダカデバネズミの作りだす長鎖ヒアルロン酸が、他の生物が作りだす普通の長さのヒアルロン酸に比べて、酸化ストレス刺激による細胞のダメージを軽減させ、細胞死を抑制することを、培養細胞を用いた実験で明らかにしています。
この長鎖ヒアルロン酸は、ハダカデバネズミの細胞だけでなく、普通のマウスやヒトの細胞のストレス障害ダメージも軽減してくれることを明らかにしています。
つまり、この長鎖ヒアルロン酸による細胞傷害の抑制効果は、ハダカデバネズミだけでなく、ヒトにも応用できる可能性を示しています。
長鎖ヒアルロン酸は、CD44というタンパクの凝集を抑制することで、細胞の傷害を軽減している
また、細胞に酸化ストレスなどのダメージがあった時には、CD44という細胞表面に発現しているタンパク質が1カ所にたくさん集まり(凝集)、それによってダメージを受けた細胞が死にいたる機構が働きます。
普通の長さのヒアルロン酸は、CD44の凝集を促進してしまうので、細胞の傷害を軽減することができません。
しかしハダカデバネズミの作りだす長鎖ヒアルロン酸は、CD44の凝集を抑制し、それによってダメージを受けた細胞が死にいたることを抑制していることが、明らかにされています。
簡単にいうと、ハダカデバネズミの長鎖ヒアルロン酸は、その長さが障害物となることで、CD44が1カ所に集まるのをブロックしているのですが、普通の長さのヒアルロン酸は長さが足りないために、CD44の凝集をブロックできず、むしろ促進してしまうのです。
まとめ
✅ ハダカデバネズミはとても長生きするネズミで、その長寿のメカニズムに注目が集まっている
✅ ハダカデバネズミの作り出す長鎖ヒアルロン酸が、細胞傷害の軽減に重要
✅ 長鎖ヒアルロン酸は、CD44の凝集を抑制することで、細胞の傷害を軽減している
この長鎖ヒアルロン酸による細胞傷害の軽減効果は、ヒトの細胞でも確認されているため、ヒトのアンチエイジングにも長鎖ヒアルロン酸を応用できる可能性があります。
高齢社会の世の中ですが、できるだけ健康に寿命を全うするためにも、今回のハダカデバネズミの研究のように、他の長寿な生き物から学んで応用するような研究はとても面白いですし、いろいろな成果がでてくることを期待します。
今後も分かりやすい、簡潔な記事を心がけていきます🙇🏻♂️