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万引き依存性 感想

私には万引きをして捕まったことがある家族はいません。また、友人や知り合いの中にも知っている限りではいません。

では何故、本書に興味を持ち手に取ったのかというと、直感的に知っておいた方がいいと思ったからです。

万引きという行為は、私達の日常生活にある最も身近な犯罪の一つです。でもその実態は世間にあまり知られていないし、理解もされていません。

なぜ、万引きは無くならないのか?
なぜ、常習犯が多いのか?
なぜ、理解されないのか?

これには家族の問題が大きくあります。
万引きに走るトリガーが、家族の問題に起因することが最も多いのです。

盗んだものを転売して稼ぐ、あきらかな悪意を持った人達もいます。しかし、若い世代の一部にすぎません。

多くは40代以上で、日常のストレスや家計を助けるための節約が動機になっています。また、認知症や摂食障害の方達もいます。

私はなんとなくですが、万引きを繰り返す人は、自分ではコントロールできないことを知っていました。「依存性っぽいもの?」という感じで。

私の親は60代後半ですが、元気で日々を過ごしています。今のうちに何が起きても対処ができるようにしたいと思っています。本書もその内の一つです。

ここから、私が勉強になったことを紹介したいと思います。

・万引き行為そのものに依存している人
・「止めて欲しい」というメッセージ
・金銭的な被害と同じくらい、深刻な被害
・万引き依存性の治療

・万引き行為そのものに依存している人

万引きをやめたくても、やめられない。「気づいたら、お店のものを盗んでしまっていた」というのは、一般の人には理解しにくいでしょう。

悪いことだとわかっているなら、または逮捕されるのが怖いなら、やらなければいい。そう思われるはずです。彼らは万引き行為に依存しているからこそ、盗みたい衝動を制御できません。

盗まないと決めている、でも自分を止められない。
(中略)

万引き行為に依存している人は万引きをやめたいと言う表層的な思いがある一方で、心の奥底では万引きをしたいのです。それによって得られるものがあるからです。

それは盗んだ商品ではなく、本人が生きていく上で必要なものです。
本書より抜粋

本書のこの部分では、ある万引き常習犯が紹介されています。この方は度重なる万引きにより、執行猶予期間中で、次に逮捕されれば実刑は確実です。それでも万引きを行い捕まります。しかも娘の結婚式当日に。

万引き依存性は、自分の意思だけでは絶対に止められないことがわかる例だと思います。アルコールやドラッグ、ギャンブルといったものと一緒で、適切な治療が必要というのがよくわかります。

・「止めて欲しい」というメッセージ

彼らの行動は完全にパラドキシカル(矛盾している状態)です。捕まりたくないはずなのに、捕まえてくれと言わんばかりの盗み方をする。

そうすることで、彼らはある人に向け、こんな自分を止めてほしいと言うメッセージを発しているのです。
(中略)

万引き行為とは自分の苦しみの原因となっている人への復讐という側面があると解説しました。

復讐というと激しい感情のようですが、それも「いま自分が辛いのだとわかってほしい」と言うことに尽きます。
(中略)

人は、伝えたい相手がいない時に万引きをしません。身近にいないにしても、誰かに自分のSOSを伝えたくて万引きを通して発信します。

依存症の人は、無意識レベルで誰も見ていない、誰も捕まえない、誰にも何も届かない所では盗みません。

人間関係の中で進行していく病です。だからこそ、人間関係の中で回復していく病でもあります。
本書より抜粋

スーパー等で万引きされる商品は、買おうと思えばいつでも買える、少額なものばかりだそうです。
節約のためと考えても、割に合わないと考えるのが普通だと思います。

それでも万引きしてしまうのは、捕まることで「メッセージを伝えたかった」というのがよくわかりました。そのメッセージを伝える相手は、やっぱり家族なんですよね。家族の問題が大きいですよね。

・金銭的な被害と同じくらい、深刻な被害

万引きがよく発生する現場のひとつに、スーパー、コンビニ、ドラッグストアと並んで書店があげられます。
(中略)

大手書店では「被害総額は年間1千万円を超える」といい、個人経営のお店の店主が「1冊盗まれると損失をカバーするには10冊売らなければならない」と嘆いていました。
(中略)

そのうえ、いったん万引き犯を補足すると、本人の聞き取りから警察への連絡、事情聴取への対応などで数時間はかかるそうです。

損害保険に入っている店舗だと、万引きされたことが発覚した場合、書類を提出する必要があります。

そのために、在庫を確認して被害にあった商品数をカウントし、保険会社への被害額を報告する書類を作成して保険会社に提出し、さらには警察に被害届を提出となると、この作業にも数時間を要することになります。

万引き犯がひとりいるだけでも、店舗は大いに振り回されることがわかりました。規模の小さな書店では損失をカバーするだけの体力がありません。

個人経営の書店は年々その数を減らしていますが、万引きがその一員ではないとは言えないでしょう。

万引きというものに対して、する側の重さとされる側の重さはあまりに日対照的です。
本書より抜粋

万引きが店舗に対してどれほどの損失になっているのか、よくわかると思います。ある店舗は、最初から一定の万引きがあることを予測し、その損失を価格に反映しているそうです。

それは、普通に買い物をしている人達が、損失を補っていることになります。万引きする人達を減らすことは、私達や社会全体にメリットがあるのです。
他人事ではありません。

・万引き依存性の治療

当クリニックにおける万引き依存症の治療は、医師と患者が一対一で向き合い、治療を施していくというものではありません。特別な薬も出ません。そもそも万引きを止める薬はありません。

同じ万引き依存症の問題を持つ仲間と一緒に、認知行動療法と呼ばれるアプローチで盗まない自分に変わっていきます。
 
その際、私たちオリジナルのワークブックを使います。万引き依存症からの回復の道すじを示すテキストです。
(中略)

治療には、次に紹介する「三本柱」があります。参加者にもこれを説明しよく理解した上で初めてもらいます。

1:通院治療
2:再発防止
3:自助グループ
本書より抜粋

治療の詳細については、本書を読んでもらいたいと思います。ほんとうに困り果て、疲れ切ったご家族が最後にたどり着くのが専門の医療機関です。

そこで依存性という病気だと知らされて、初めてほっと息をつくご家族も多いそうです。ですが、完全な治療法はありません。何度も再発を繰り返しながら、地道に改善していくしかないとも説明されています。

ここまで、本書「万引き依存性」を紹介させていただきました。この問題に興味を持っていただけたなら、是非、読んでみてください。

ある日突然、警察に呼び出されてご家族と対面した時、かけてあげる第一声は、今までとはきっと違うもになると確信しています。

感想文を読んでいただいて、ありがとうございました。

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