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葛飾北斎 / メトロポリタン美術館
日の当たらない部分をメインに、彼を浮き彫りにできれば、幸せだー⑧
また、新しい長谷川等伯の一面を、見つけた。
「我が左手を右の手で書きたるとも、下手書たらば、手に似申まじき程に、見た見ぬにもよるまじきと申候は、きこえたる事なり。さまで利発なる老人とも、見えざれども、その道に心をつくし修行せし者の云う事には、よくきこえたる事あり」
上の文章は、かの「大根の沢庵」で有名な沢庵和尚が、長谷川等伯に会った時のことを書き記した文章である。
「絵の下手な画家が自分の左手を見ながら右手で描いたとしても、似ることはない。それは、実際に見たということが問題ではないからだ」
といった内容だ。等伯から直接そのようなことを聞いた沢庵和尚は、のちに、
「それほど賢い老人には見えないが、絵を描くことに心を尽くし修行した人間のいうことは得心できる」
と、三十歳ほど年上の等伯の人となりを語っている。
「それほど賢い老人には見えない」と沢庵は言っているが、そこには、等伯の少し不器用な生き方を感じさせ、加えて、愚直な絵師像がうかがえる。
等伯の生きた道と、絵を描くこととが彼の場合は、一致していたのだろうと感じさせる一文である。
国宝「松林図」の作者であり、「狩野永徳のライバル」であったと語られている彼を、日の当たらなかった部分をメインに浮き彫りにできれば、幸せだと思う、今日この頃である。
(※絵と本文とは、関係ありません)
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