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感じた臘月と朧月の、なぞかけの瞬間…一椀をともにしたい人

 どちらも「ろうげつ」と読みます。しかし、「臘月」は陰暦12月の別名です。「朧月」は「おぼろづき」で、ほのかに霞んだ月の事で春の季語です。

 昨日の茶道のお稽古の茶室で、このことが話題になりました。

 以前、お道具拝見の問答の時、主人役の私は、自作の茶杓の名前を「朧月夜」と答えたことがあります。

 実は、この「朧月」は先生のお気に入りの言葉だったのです。そこで、先生がどうして「朧月」が好きなのかを説明してくれました。その時に出てきました、あの話が。先生が、

「朧月は源氏物語の『花の宴』の章に出てきます。花の宴の夜の事。高貴な独身女性は、夜は一人で外に出ることはありませんが、その日の夜はきれいな朧月の夜でした」

 と、始まったのです。私は機を得たりとばかりに、先生の説明の後を続けて、

「そう。その高貴な綺麗な女性と、散歩に出ていた光源氏がばったりと出会って、そこで二人は恋に落ちてしまうのですよね」

「そうです。その女性は、『照りもせず 曇りも果てぬ 春の夜の 朧月夜に似るものぞなき』と歌を詠んでいたのです」

 源氏はその歌を詠んでいた若い姫君と出逢い、契りを交わしてしまいます。そのため彼女に決まっていた春宮への入内が、一度は破綻します。その後、改めて入内するのですが。その朧月の夜の二人は、素性も知らぬままに扇を取り交わして別れたのですが、その姫君こそ、右大臣の六の君と呼ばれる『朧月夜』(おぼろつきよ)という女性だったのです。と、先生の話は続きました。

 まさに、主人(先生)と客(生徒としての私)との茶室での心の交流の瞬間を感じることのできた、お稽古でした。

 これだ! 一椀を共にしたい人との瞬間………。

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