冬剱・完登!(令和5年12月・早月尾根)
冬剱(ふゆつるぎ)
その響きは特別である。
夏ですら「日本百名山で最難」とされるなか、積雪期においては誰にでも登れるものではない別格の存在。地元の山岳ガイドとして、この冬剱という課題から目を逸らすことは出来ない。
昨年12月の冬剱は盟友と2人で挑み、悪天候と時間切れで敗退した。
今年はいわゆる「リベンジ山行」となった。
メンバーだが、まずは誰もが認める剱岳最高のガイド、国際山岳ガイドの多賀谷さん。
またその多賀谷さんつながりで、越後湯沢のナンバーワンBCガイドのジュンさん。K2の覇者(元早月小屋及び剣沢小屋スタッフ)のあつし君。それに私の計4名。
全員自分の面倒は自分で見れる、かなり強力なメンバー構成となった。
伊折集落まで車で入り、そこから馬場島までの8キロの林道をいざ行かん!
ちなみに、ここでバテてるようなら話になりません(笑)
馬場島で富山県警山岳警備隊に入山の挨拶を済ませ、他パーティーの入山状況を聞くと、R大学の山岳部が数日前に入山しているとのこと。
(もちろん狙ってきてるわけではないが、トレースが期待できてありがたい。)
初日は松尾平の奥で幕営。
雪が少なくてヤブがうるさい。
早月尾根1600m手前の急登を行く。
冬剱の経験がある方なら分かると思うが、写真のごとく、この時期の剱にしてはラッセルがかなり浅い。(先行パーティーのトレースの存在ももちろんあるが)
昼頃には早月小屋につき、出来すぎである(同所泊)
明日はアタック日。
好天の予報だが、これをアタック日にするために逆算して入山日を都合3日ずらした。
豊富な冬剱登頂実績を持つ多賀谷さんのやり方である。
翌日早朝。
満月の明かりに照らされるボーナス付きで、頂上アタックに出る。
相変わらず先行のトレースがあり、それに大幅に助けられる。
夜が明けてきた。
毛勝三山をバックに「ハイチーズ!」
「ピラミッドピーク」への登り。
ブッシュの出方からも、今年の寡雪具合がわかるだろう。
早月尾根上部らしい「急雪壁」の登り。
今年はマイルドだったが、年によっては「ほぼ垂直」になることもあるので、侮らない方が良い。
「獅子頭」から本峰バットレスを望む。
「構図」が良いですねー(撮影;K2の覇者さん)
獅子頭からの下降(臨場感あります。)
下りたコルから振り返る獅子頭(ド迫力!)
ルート核心の一つ「堅雪のルンゼ」手前の多賀谷ガイド。
圧倒的存在感!(かっこよ!!)
「堅雪のルンゼ」を抜けてロープを伸ばすワタクシ。
頂上は近いが、気は抜かないように!(雪はほんといつも硬い!氷!?)
ついに本峰頂上!!
積雪で「冬だけ標高3000mになる」剱岳。
頂上の祠の屋根を見つつ。(バックは剣沢)
素晴らしいメンバーに、素晴らしいお天気!!(感謝!)
K2の覇者さんもご満悦です。
(お客さん役ありがとう!)
10分程度の休憩の後、下降に入る。
もちろん、下降のほうが難しいし、危ない。
下降が本番。
強風で弧を描くロープ(獅子頭のリッジ)
早月小屋まで、無事に帰ってきました。
やったなぁー。
昨年のリベンジ果たしたなー。
(今夜はささやかな宴会だ!)
翌日、馬場島までの下降をそつなくこなし、無事に帰ってきました。
今回のメンバー。
天候的に非常に恵まれていたとはいえ、4日間、剱岳と全力で向き合ってきました。
みんな良い顔してる。
山行中はメンバーそれぞれの強さやテクニック、バイタリティーを存分に見せてもらいました。
個人的には、来季から予定している「冬剱のガイド」に向けて、剱ナンバーワンガイドの多賀谷さんから様々なノウハウを教えていただいたと思っています。
ありがとうございました。
これからも、剱岳に恥じないガイドとして精進していく所存です。
また今回、笑いの絶えない、それでいて締まるときはきっちり締まる、素晴らしいメンバーでした。
ジュンさん、あつし君、最高の時間をありがとう!!
最後に、自戒を込めて。
『勝って兜の緒を締めよ』(令和5年12月 剱岳の山岳ガイド 香川浩士)