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彩の旅

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──それは、モノクロの世界を旅するひとりの愚者の物語。
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2021年6月の記事一覧

【中編小説】彩の旅 Prologue Ⅱ

 Intro 2 -in the forest-

 森の中はいたって静寂であった。
 たまに風が通り抜けて草木はざわめく。
 月と星が彼らに微笑んでいる。
 その奥を見てみると、かすかな光が漏れている。
 パチパチという火が弾ける音。そこには男と少女が小さな焚火を囲んでいた。今は、一時の休息。自らの責務を忘れて安らぐ数少ない一時である。
「その後、ブリテンを平定した妖精エインセルと英雄アレキサン

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【中編小説】彩の旅 Prologue Ⅰ

 Intro 1 -Once apon a time...-

 ロンドンの夜は今日も静かだった。誰もが寝静まった午前零時ごろにロンドンの空に異変が起こった。
 ──それは、綺麗な光のカーテンだった。
 ロンドン城塞を流れるテムズ川のそばにあるビックベン時計塔の背景にはいつものロンドンにはない"オーロラ"が上空を彩っていた。ブリテン島では決して見られることのないオーロラはロンドンの人々の心を撃ち抜

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