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横山秀夫 短編集 を読む

先日、横山秀夫原作のドラマの再放送を目にした。数年前、氏の小説にはまり片っ端から文庫本を買って読んだ。主人公の組織内でのちりちりと苦しい心情は当時の自分の心情そのままで、のめり込むように読んだのを覚えている。

ひと通り読んでからは読まずにいた時期を過ごしていたのだが、ドラマが面白かったので再び読みたい思いに駆られた。文庫本集はまとめて知人に譲ってしまったので図書館から借りた。

借りたのは「陰の季節」「動機」。前者は松本清張賞、後者は日本推理作家協会賞短編部門賞をとったというのは後から知った。特に選んだわけでもないが、氏の代表作であろう単行本を手にしたのは偶然とはいえ面白く思った。あっという間に2冊読み終えた。

本との出会いは人との出会いと同じでタイミングがある。特に自分自身の読むタイミングが必要だ。求めて入手しながらそのまま読まずにいるものも多い。その時は面白そうとと思いつつ、それほどでもなかったと思うものもある。偶然手にした名も知らぬ作家が書いたものが自分の心を捉えることもある。その時の自分の興味が向くか向かないかだけである。

意識的に選べば良いとは思うが、自分でもどれに己の興味が趣くかわからない。「あなたの読書傾向からおすすめされる本」だけではまかないきれないものがそこにはある。図書館や書店に足を運ぶのはそのせいだ。

話がそれた。今の自分には短編集があってるようだ。頭の中にするっと入ってくる。長編が読みたいと思う時は今後来るのか心配にはなるけれど。

柚月裕子氏が、何かのインタビューで横山秀夫氏を尊敬してると聞いた事がある。柚月氏の警察小説は自分には生々しすぎて読んではいないが、リアリティがすごくあるらしい。検事シリーズは好んで読んでいる。

横山秀夫氏の文章は面白かったので、是非直木賞を取ってほしかった。取れた作家だと思ってる。選ばれなかった経緯を後から知ったのだが、一読者には窺い知れないことがあると思った。賞がとれるにこしたことはないが、とらなくても面白いものはある。それは読者が知っていればいい。意外に天網恢々疎にして漏らさずなのは、その後のさまざまな事柄から思い至る。不思議なものだと思っている。

梅雨明け宣言の報が西から届く。夏なのだと思う。冷たいものを口にしながら本を読む至福。これはいまだに変わっていない。変わりゆくなかで残された幸福なひとときの一つ。

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