【診断書ビジネス】オンライン診療での診断書と守るべきものについて

前置き

この記事を書くかどうか非常に悩んだ。

というのも、以前書いた記事↓の反応で、産業医の方々の中には、従業員の安全やメンタル維持のために尽力してくださっている方もいると分かり(そして私が産業医に言われた「何社も産業医をやっているがどこの会社も同様」ではなかったことが分かり)、本当にほっとしたのと、涙が出る程に嬉しかったからだ。

そのため、『診断書ビジネス』への対応・懸念について、従業員の治療の観点等から産業医・精神科医の先生方が述べていらっしゃるのも一人の従業員として有り難いと感じたし、医療の知識もない素人の私が書くのは憚られた。

しかし同時に、そう思うことは、私は権威バイアスや同調バイアスに(一人で勝手に)かかってしまっているのでは? とも思った。

そのため、恐らくは浅慮で失礼な記事となるであろうけれど、ここに思ったことをそのまま記していきたい。

守るべきもの

X(Twitter)で話題になっている心療内科、懸念を示している精神科の先生方、産業医の方々の意見を読んでいて、守るべきものがいくつかあると感じた。

①診断書が貰えず、休職に入れずに苦しんでいる/欠勤して解雇等になった/死を選んでしまう方への救い
②患者に適切な治療を行うべきであり、不要な診断書発行で稼ぐべきではない(医療機関から提供される医療の質の確保、医療者の倫理)
③産業医面談で、診断書を悪用して休職手当等を受給しようとする社員を倫理的に弾かなければならない産業医の負荷への配慮

今回X(Twitter)で話題になっている心療内科により救われる対象は①だ。
起き上がる気力もない、心療内科の予約が1か月先まで埋まっている、産業医面談も予約で埋まっている(または産業医が会社とグルになってしまっている)、近隣に心療内科がない地域である……このような従業員にとって、オンライン診療で即日診断書を発行して貰えるのは救いとなるのではないだろうか。
(私は休職以前からメンタルクリニックを対面診察で受診しているためこのパターンには該当せず、推察である)

一方で、②、③についても正論である。

考えるべきことは、②、③を守ることによる利益(患者本人、保険料を払っている他の従業員、主治医、産業医等への健康、金銭的、業務負荷等の全て)は、①の救いを従業員に与えないことに勝るかどうかだ。
亡くなった人を生き返らせることは出来ないと考えると、①を前提に置きつつ、②、③を守れる方法を模索する方が従業員のためとなるのではないだろうか。

X(Twitter)で見かけた投稿で
『体調悪いから仕事ができない状態において、診断書がなければ休めない』という仕組み自体に疑問を呈していたものがあった。
これが改善すれば、①の方も休めるだろう。

また、今、私がnoteを書きながら思いついたレベルでは以下である。
・オンライン診療での診断書は仮とし、産業医面談で対面の診断を受けるように助言いただいた場合には、再度別の医院を受診する必要がある。
(オンライン診療での症状が偽りであった場合は、診断書提出日に遡って、休職ではなく欠勤、有給扱いとする)
・緊急時産業医ホットラインを作る(診断書を貰うことが出来ない場合の電話・オンライン相談窓口を設ける)
 ※ただしこれは産業医の負担増となる。

なお、会社側で受診する医療機関を指定するという案も見かけたが、私は避けていただきたいと思う。
メンタル疾患はお医者さんとの相性があり、また、産業医の中にはX(Twitter)で発信してくださっている方のような倫理観を持っていない産業医もおり、会社に都合のいい医療機関しか認めないケースも想定されうるからだ。
従って、会社側で受診する医療機関を『指定』ではなく、(これこれの理由で)『お勧め』というレベルに留めていただきたいと思う。

対面診療を前提とする議論により対象外となること

そしてもう1つ、大変失礼だが、感じていることがある。
今回のX(Twitter)を見ていて、私は生存者バイアスを思い浮かべた。
正しくは、生存者バイアスで上げられていた事例を思い浮かべた。
戦時中、飛行機のどこの装甲を強化すべきか検討する際に、『生還した飛行機』を基に検討しかけた(それに対して、生存者バイアスに気付いた人がいた)というものである。
対面の診断の方がより正確に症状を診断できるのは理解できる。そして、日々、そのような患者さんと対面で向き合い、治療してくださっている先生方はその重要性を理解されているのだと思う。
一方で、その患者さんは『対面の診察までたどり着けた患者』であり、前記の①(オンライン診療)で救われるのは、そこまでたどり着けない『生還できていない』飛行機の方なのではないだろうか。
この『生還できていない』飛行機がどれくらいあるのか、私は把握できていない。彼らがどのような選択肢を選ぶのか……欠勤か、退職か、死か……。産業医面談も受けられない状況であれば、産業医の先生方も実態は把握が難しいのではないだろうか。
だが、いないとは言い切れないのではないだろうか。いる前提で議論をした方が、その逆よりも、誰かを救える可能性が高まるのではないだろうか。

最後に

今回の議論を見ていて、産業医の先生方も、精神科の方々も、倫理観を持ち、従業員の安全を重視してくださっていることをさらに痛感した。

3月4日追記

話題のメンタルクリニックさんからHPの表現について訂正や記載意図についてのお知らせが出ていた。私は、この形態のメンタルクリニックさんが無い方が患者のためになる、とはやはり思えなかった
https://x.com/mentalDrkokoro/status/1764305018273124429?s=20

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