教室で山下さんが膨らんだ

詩です。



先生から見て二列目の一番後ろに座っているから、
五列目の前から二番目の山下さんが
膨らんでいくのがはっきり見えた
なにがあったのかな? 夏休み明けだからかな?
教室には数学の小テストに集中する空気が満たされているから、
弾け飛んだワイシャツのボタンが
メダカの生きている水槽を叩く音は流された
山下さんが蛍光灯に耳をこすらせている頃
加藤と桜井と岡本さんの姿が見えなくなった
ぼくは久しぶりに降りた地元の駅前の風景が変わったことを
嘆きながら、できたばかりのスターバックスに入る
苦いような甘いようなものって最高だよね
とつぜん、カラオケのマイクみたいに突き飛ばされた
なにが起きたのか分からず世界を見回してみると、
隣の席のアメリカンフットボール部キャプテンの渡辺さんも
膨らんでいた
真鍮のボタンがくい込んで痛いから、先生に
席を変えてもいいかを聞こうとしたら
黒板だと思っていたものが先生のベルトのバックルだった
渡辺さんから逃げ出しても肥大化する山下さんに阻まれて
最終的に巨大化する先生に捕まって身動きが取れなくなった
運動不足でも身体ってそれなりに丈夫なんだなと思っていると
骨の折れる音が辺り一面でしていることに気づいた
今の学校の形はきっとトマトを三つ詰め込んだ袋と同じだろうな



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