幻想的な物語
詩です。
ボードレールを読んで待ってるあなた
わたしも片手で読めるように練習した
川崎駅の時計台は七時半を指している
針の隙間が45度
西の空が穿たれて、解き放たれた太陽光線
上げられないヴェールが、血が滲んでいくように
オレンジに染まる
青空と橙雲で一足先にインディゴになった部屋で
たぶん読み飛ばしてしまった物語があった
天国のような浮遊庭園から流れ落ちてくる滝
虹、虹、環状虹の向こうに見える
圧倒的な水量で、蜜のように甘い
ドラム缶風呂くらい、ほんの一言で満たしてくれる
栓はしないで。
いつのまにか常識よりも説得力を持ってしまった
やさしさを、挟んだままの本は
三百円で買い取られた
――反歌
片手ではちゃんと読めない物語 不器用すぎて本降りになる
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