案山子

詩です。


足を下ろそうとすると
そこにはタンポポがあるから待って、
と言われて
下ろす場所を変えようとすると
そこにはアリさんの行列があるから待って、
と言われて
また変えようとすると
そこにはオレンジのBB弾があるから待って、と言われて
また変えようとすると
そこらへんにコンタクトが落ちてるから待って、と言われて
右足は地面と再会することはないまま
ぼくは案山子になった

あれはオタマジャクシだろうか、あれはただの精子だろうか、それとも生まれることのできなかった花火だろうか、あれはヒジキぐらいまで育った鼻毛だろうか、あれは柿本人麻呂の歌だろうか、あれは国が亡びる予兆だろうか、それとも涙だろうか
いいえ、あれは流れ星です
燃えに燃え尽くしている球体です
流れ星が地表にまで落ちてきて、
そのたびに爆発が起きる世界には
鳥なんかやってきません

わたしは、自分がこんなに緑色が好きだとは思いませんでした
えぇ、世界を渡ってから気づいたんです
鳥が鳴いている所は緑色をしているんです
香りも、人間の居場所なんかどこにもないという感じで、
ホントそうだよな、って思います
爆発って何色って言ったらいいんですかね
やさしさを鳥よけにしか使えない場所では
夕焼けの赤色がとてもとても人気で
カラスの鳴き声が背筋にきます



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