脆さ
授業がおわった。周りが一斉に立ち上がる気配がする。ぼくは板書
のさいごのさいごをノートに写している。教室の空気が渦巻いてい
る。ぼくは渦と渦の狭間でぐずぐずしている葉っぱのような心地に
なった。ぼくはいつも周りとズレる、と思って周りを見ると、周り
とズレている人はけっこういることに気づく。朝に買ったおにぎり
が入ったビニール袋を鞄から取り出す。椅子を引くと、床を削って
しまっているような音がする。教室の扉は重くて脚に力が入る。廊
下の空気は誰もいなかった空間特有のひんやりさが霧消している最
中だった。こうだいくんが待っていた。こうだいくんはお弁当を持
ってきている。二人で教室から離れたところにある中庭まで歩く。
中庭の空気は開放的かつ周りに無関心で心地が良い。こうだいくん
はクリスチャンだからごはんを食べる前においのりをする。今日も
右手と左手をがっちりと組み合わせて目を閉じている。ぼくはおに
ぎりの②を引っ張っているところだった。ぼくとこうだいくんは友
だちだ。ガジュマルの木みたいに。ガジュマルの木は編み込まれて
いる。命綱みたいに。太い枝と太い枝が絡まり合ってうねって、空
を目指しながらさらに太い枝が絡まっていく。あれは枝じゃなくて
地上に出てる根っこらしいよ。そうなんだ、知らなかったよ。おに
ぎりの海苔は簡単にちぎれるけれど、ガジュマルの木は簡単にはち
ぎれない。ぼくとこうだいくんは友だちだ。こうだいくんがおいの
りしているところに、教室でも大声を出せる人たちがやってきた。
教室でも大声を出せる人たちは、中庭でも大声を出す。教室でも大
声を出せる人たちが、おいのりしているこうだいくんに気づいた。
教室でも大声を出せる人たちにこうだいくんがおいのりしていると
ころを見られた瞬間、ぼくは固まって動けなくなっていた。
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詩です。
読んでいただきありがとうございます。