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閑文字

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詩をまとめています。楽しんでいただけたらうれしいです。
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2022年4月の記事一覧

詩『波乗り』

なみのりという言葉はポケモンで知った。
河原で拾ってきた石でできた自分が、蜻蛉のようにスイスイ滑って、画面の中だったらどこにでも行ける。向かうところ敵なしで、叱られるまではチャンピオンでいられる。
夕方のニュース番組で波乗りを知った。
蒼空を率いて、うねる大波を掻っ切って、白い泡の血飛沫を上げながら、滑り抜ける。自分の手から離れた世界にいる英雄は、返り血と泥みたいにこびり付いた汗を拭って白い歯を見

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詩『お花見』

SNSの登場で、桜の価値が高騰している
桜は、散るから美しいんじゃなくなった
宇宙のはじまりの光の爆発のように、咲いた桜は
クレープの背景になって、冷凍保存される
散ることを取り上げられた、冷凍桜が
掌中の世界に、陳列される
今日も桜は忘れられていく