【インタビュー】俳優・浜辺美波に聞いた!「生々しいホンネが飛び交う心理戦の演技は大変だった」映画「六人の嘘つきな大学生」インタビュー
浅倉秋成が描いた小説『六人の嘘つきな大学生』が実写映画化となる。本作は、六人の就活生たちが奮闘する青春ミステリー。「内定者1名」の枠を勝ち獲るために、ある日突然、信頼していた仲間たち同士が本性を露わにし、生々しい心理戦を始める――。終始、スリリングな展開で描かれる本作に登場する大学生を演じるのは、実力も兼ね備えた注目の若手俳優たち。今回は、主人公の嶌衣織(しま・いおり)を演じた浜辺美波に直撃インタビュー。ヒリヒリする心理戦の撮影の裏側を聞いた。
取材・文:横谷和明
嶌さんは家族のために就活を頑張っている
──就職活動を舞台に6人の登場人物の裏の顔が明かされていき、それぞれの暴かれた嘘と罪の真相を検証しながら、自らの人生と向き合っていく姿を描いた本作ですが、まずは今作のオファーを受けたときの心境から聞かせてください。
浜辺:原作の小説を本屋さんで見かけていて、『六人の嘘つきな大学生』というタイトルは知っていたので、作品を読める機会をまずいただけたことがうれしかったです。読み進めていくと、最後まで展開がなかなか読めない、ミステリー好きにはたまらないような構成で、しかも読みやすくて。私はストーリーを好きになって映画やドラマに参加したいなと感じることが多いので、今回も原作を読んでぜひこの世界に入ってみたいなと思いました。
──物語は大きく就活のパート、その後を描く8年後のパートの二つに分かれていますが、脚本を読まれた感想はいかがでしたか。
浜辺:実は、脚本の準備稿の段階では何パターンかあって、しかも後半の展開がちょっとずつ違っていたんです。私の中では最終的に第1稿の方向性になるのではないかなと予想していたのですが、決定稿は私が演じる嶌さんの見え方が真逆の方向性になっていたのですごく驚きました。嶌さんのパラレルワールドを知っちゃったみたいな感覚になって、少し複雑な心境にもなりました。台本が確定するまでは役作りを固められなかったので、そこから急いで始めたのですが、台本に描かれていないことも多かったので、佐藤祐市監督とお話しするまでは、自分の中で嶌さん像がはっきりとは決まらず、ちょっと悩みました。
──決定稿を受けて、嶌はどんな人物だと思われましたか。
浜辺:彼女がスピラリンクスに就職したいのは、自分ではなく家族のためというところに嶌さんの心が表れているなと。就職活動が大変な中でも、家族の思いを背負って頑張るというところに彼女の優しさや家族愛が滲み出ているなと感じました。
──そのスピラリンクスの採用試験がドラマティックに描かれていきますが、浜辺さんは就活にどのようなイメージをお持ちでしたか。
浜辺:私は圧迫面接だったり、意地悪な質問をされたりするのは、映画やドラマの世界だけだと思っていたんです。でも、私と同じくらいの年齢の子たちに話を聞いてみると、いろいろな選定方法があるみたいで。ものすごく大変だし、実際に起こっているリアリティのある話なんだと知って驚きました。
──もっと自分の夢や将来の目標などを伝える、明るく前向きなものだと思っていたという感じでしょうか。
浜辺:そうですね。自分の夢をお話しする場なのかなと思っていたんです。でも、最初に役作りの一環として、原作に出てくる嶌さんのエントリーシートをコピーしていただいたのを見たら、夢や目標を書くのはもちろん、自分のやってきたものをいろいろアピールしなければいけないことも知って。自分が想像していたよりも、もっと現実的かつアピール要素が多くてびっくりしました。
──浜辺さんがもしも面接官の立場だったら、相手のどんなところを重点的に見ますか。
浜辺:心根ですね。純粋で真っ直ぐに夢や目標に向かって走っていくような人がいいなと思います。やっぱり人として根っこが意地悪だったり、ひねくれていたり、嫉妬したりするような人だと、のちのちトラブルになりかねない気がするので、私は不器用なくらい真っ直ぐに生きていて、周りでそれを見ている人たちが思わず応援したくなってしまうような人が好きです。
リハーサルを念入りに重ねた集団面接のシーン
──就活時代のシーンと、8年後を描くシーンの演じ分けはどのように意識されましたか。
浜辺:嶌さんは輪を乱すようなことはなく協調性が高くて、思慮深い人だと思います。根がいい人だからこそ、8年前のことを思い返してしまう夜があったり、その日々を振り返ると決して心はキラキラしていないだろうなと感じたので、彼女の心の中にある葛藤を自分なりに想像して演じました。それから、8年が経過して嶌さんの置かれた環境的に、他の5人よりも人間的に少し変化があってもいいかなと思っていたので、ちょっとした声の出し方や意志の強さみたいなものをより前に出すように心掛けました。
──内定者を一人、自分たちで決めるという集団面接シーンの撮影では、その前日にリハーサルを念入りに重ねたと佐藤監督からお聞きしました。
浜辺:本番用の衣裳に着替えて、セットの中で1日かけてリハーサルをしました。立ち回りもそうですし、どれくらいの感情を出して面接の場をヒートアップさせていくのかというところまで、本格的にみんなで話し合いながらやりました。私たち俳優部の不安感を拭ってくれたリハーサルでしたし、みんな気合いも相当入っていたと思います。それに、全員の気持ちが同じ方向に向いていることを再確認できた1日でもありました。
──8年後のパートでは、ある場面で涙を流す浜辺さんの姿は観ていて胸を打つものがありました。
浜辺:ありがとうございます。実は撮影中もずっと、あのシーンが自分の中で気がかりだったんです。スピラリンクスに入りたいという思いから始まり、5人との関係性を経て、最後に控えめな嶌さんの感情をあの場面でピークに持っていくことが、この作品にとってのキーポイントなんじゃないかと思っていて。自分の中の感情のギアをあそこまでどうやって上げていくのかを佐藤監督と話し合っていました。私の中でもこだわりが強かったですし、自分へのプレッシャーをかけすぎてしまっていたからこそ、あのシーンだけは撮影の前に少し時間をいただいて、感情や集中力を高めさせてもらっていたのを覚えています。
ポップコーンが進む映画になれば
──蔦は6人の中で控えめに立ち回るタイプでしたが、撮影の空き時間の浜辺さんはどのような感じだったのですか。
浜辺:私は、みんなとよく話していたと思います。今回の5人は何でも受け止めてくれる人たちだったので、たとえば「今のお芝居で合っていたのかな?」とか、「ここはどうする?」という感じで、不安に思ったことやそのときの悩みをどんどん口に出していました。本当は、もうちょっと自分の中に溜めておけるような器量がほしいなとも思うのですが、あのときは追い込まれていたので、全部話していました。
──それくらい精神的に大変なシーンの撮影が多かったということですよね。
浜辺:睡眠時間も休憩時間もしっかりいただいていたのですが、密室での撮影がずっと続いていたので、だんだん追いつめられてしまって……。でも、その極限状態は絆を生んでくれたと思います。物語的には対抗する役柄ですが、裏ではすごく協力関係があって、みんなで悩みを一つひとつ解決していったという感じです。
──普段だったら、弱音は吐かずに自分の中に留めておくタイプなのですか。
浜辺:そうですね。わざわざ不安を口にするタイプではないと思います。それを言ったからといって変わらないことのほうが多いので、自分の中で消化することが多いのですが、今回はみんなに話を聞いてもらっていました。
──誰かに言うだけで、楽になることもありますもんね。
浜辺:そうなんです。誰かに話すだけですごく楽になるし、「私も」「僕も」って同調してもらえると、やっぱり安心できました。この6人だからこそ、この映画ができ上がったと思いますし、私自身もあのラストに持っていけたと感じているので、本当にみんなに感謝しています。
──ちなみに、完成した映画について、皆さんと話しましたか。
浜辺:私は赤楚衛二さん、佐野勇斗くん、山下美月ちゃんと一緒に試写を観たのですが、すごく盛り上がりました。その後、別の時間帯で倉悠貴くんと西垣匠くんも試写を観て、グループ連絡網が今までで一番盛り上がりました(笑)。撮影しているときに倉くんが、「映画を観ながら、ポップコーンが進むような作品になっていたらいいよね」と言っていて、みんなで「確かに!」って言い合っていたんです。なんとなくではありますが、みんなでそこにたどり着けたらいいなとゴールを定めていたので、その目標は達成できたんじゃないかなと思ってます。
──本作は嘘や裏の顔がテーマになっていて、人間は多面的な生き物なのだということも描かれています。本作を通して、あらためて「嘘」について思うところはありますか。
浜辺:嘘や隠し事って、すごく難しいなと思っていて。やっぱりみんな隠し事はあるし、それがなかったとしてもいいことだけではないなと思っていて。嶌さんは純粋で真っ直ぐだからこそ、普通の人ならあまり悪く感じないような嘘や隠し事にずっと引っかかりを感じていて。でも、それが正しいというか、健全であると私は考えているんです。誰かに何かしてしまったときに、その人を傷つけてしまったかもしれないと、ちゃんと罪悪感を感じられる彼女のような真っ直ぐな心を持ち続けたいと思いました。