【インタビュー】『死蝋の匣』櫛木理宇×『殺人と幻視の夜』織守きょうや 作家生活のリアルと作品の魅力を「10の質問」で聞いてみた!
多くの読者の心をつかむ作家を輩出してきた、日本ホラー小説大賞<読者賞>。
<読者賞>出身作家の櫛木理宇さん『死蝋の匣』(KADOKAWA単行本)と織守きょうやさん『殺人と幻視の夜』(角川ホラー文庫)が、7月・8月と続けて発売になりました! 『殺人と幻視の夜』には櫛木さんが帯コメントを寄せています。
発売を記念し、作家生活のリアルと作品の魅力を、お二人に「10の質問」で聞いてみました。
①仕事をするときに手放せないものは何ですか?(飴やお気に入りのペンなど)
櫛木(以下、櫛):耳栓です。あとはなにか飲むもの。コーヒーが多いです。
織守(以下、織):強いて言うなら水分(基本的にあたたかいもの)でしょうか。 紅茶とかハーブティーとか、白湯とかです。
②執筆をする時間は昼が多いですか? 夜が多いですか?
櫛:デビューしてからずっと会社員と兼業でしたので、朝起きてすぐ書いて、帰宅してから夜も書いてというサイクルでした。最近ようやく専業になりましたが、習慣付いてしまって、いまもそのままです。
織:昼の予定がある日は夜、夜に予定がある日は昼に書きます。外出しない日は休憩をとりつつ一日中書いています。9時半か10時くらいから、22時半か23時くらいまで。一日予定がある日は全然書かないこともあります。
③ちょっとリフレッシュしたいときは何をしていますか?
櫛:家事してます(笑)。洗濯物干したり、夕飯のおかずを早めに作ったり。
織:おやつを食べるか買い物に出かけるかお風呂に入る。
④本作は、ホラーとミステリ、強いて言えばどちらの要素が強いと思いますか?
櫛:今回はあまり怖くないのでミステリです。
織:割と拮抗していると思いますが、ミステリでしょうか。ただ、人コワという意味ではホラー色も結構あると思います。
⑤本作を書かれるときに大事にしたポイントはどこですか?
櫛:毒親といえば母というイメージが強いかと思いますが、今回は「透明化される父」を書きたかったんです。
引きこもりや非行など家庭内問題を扱ったルポ本を読むことが多いのですが、昭和の頃は『母原病』なんて本がベストセラーになるほど、子育てといえば母親に全責任がありました。でも時代を追って読んでいくと、2010年代あたりから父親もクローズアップされはじめるんですね。母親が育児の主流なのは変わりませんが、父親不在がはっきり問題にされるようになってきた。ああこれは書けそうかなと思って、今作のメインテーマに据えてみました。
織:主人公がダウナー系なので、一人称のモノローグがあまり元気になりすぎないようにするのと、そんな主人公でも読者が感情移入できるように(彼の行動や感情に説得力を感じられるように)書くことでしょうか。
あとは、驚きが新鮮なものとしてあるように、真相に気づかれないようにしつつフェアに書くこと。
⑥本作を執筆されるときに苦労したことは何ですか?
櫛:とくにないです。わりとスムーズに書けました。
織:あったかもしれませんが書き終わると覚えていません。
⑦自分が考える、本作の一番の読みどころは?
櫛:なんでしょう……。第一章の、パイプ洗浄液の使いかたとか(笑)。まあそれは冗談ですが、前作より白石がすこし明るく前向きになってます。だから今回は、読んでいて前ほど白石に苛々しないかと。
織:各エピソードにある、主人公が視えていると思っていた世界が反転するところ。と、友達のいない主人公の、唯一の友達を告発しようとしていることへの葛藤でしょうか。
⑧自著の中、相手の作品でお気に入りのキャラクターは誰ですか?
櫛:自作のお気に入りはとくにいないです。全員、自分の分身のようなものなので……。
織守さん作品のお気に入りキャラは、他社さんの作品で申しわけないのですが、「ただし、無音に限り」シリーズの天野探偵。
織:自著→佐伯が好きなタイプのキャラクターだったはずが、書いているうちに久守を書くのが楽しくなりました。
死蝋の匣→岸本歩佳巡査長。是非とも県警本部に引き抜いてほしいです。主夫が板についてきた白石さんも好きですが。
⑨お相手の作品で、感動したところはどこですか?
櫛:織守さんは文体がとても素敵ですよね。平易で読みやすい。理知的でいて、読み手に理詰めと感じさせない。すごくバランスがいい文体でおられる。作家にとって文体は武器ですから、デビュー当時から自分の武器を持っていらして、うらやましいです。
織:調査をする側の人生、生活もちゃんと描いているところと、クライマックスシーン、白石の(元)家裁調査官としての真摯さと話術で被疑者を説得してから逮捕に至るまでの、ちゃんと盛り上がりつつ大げさに感じない、エンタメとリアリティのバランスのよさ。絶妙な匙加減だと思います。
⑩櫛木さんから織守さんへの質問
同じくホラ大読者賞出身者といたしまして、今後、怖さに全振りしたホラーを書いて下さるご予定はありますでしょうか? 期待しています。
織守さん回答:
書きたいです。
『彼女はそこにいる』を書いた後、某社からまさにそういうご依頼があって喜んでいたのですが、食事をしながら「それとは別に今こんな設定の話も考えていて」と何気なく話したアイディアに「それおもしろいですね」と食いつかれ……いえ、興味を示していただき、そちらを書くことになってしまいました。というわけで具体的な予定はないのですが……。
ホラーは是非とも書いていきたいので、各社、ご依頼をお待ちしています。
⑩織守さんから櫛木さんへの質問
櫛木さんは心霊ホラーと人が怖いサスペンスホラーを両方書いていらっしゃいますが、読み手として書き手として、どちらがお好きでしょうか。あるいは、どちらをより怖いと思われますか?
櫛木さん回答:
書きやすいのは人怖のほうですが、読むのは甲乙付けがたくどちらも大好きです。わたしは実はすごく怖がりなので、心霊ホラーは、それはもう最大限に楽しめるんですね。心底怖がることができる(笑)。
三津田信三先生のような、モキュメンタリー系の心霊ホラーを一度書いてみたいです。夜に書くと自分で自作が怖くなって、自滅するくらいのやつを……。