見出し画像

【インタビュー】「料理は日常の中で小さな幸せを感じられる魔法のようなもの」まいのおやつさんが「おべんとう」をテーマにした絵本に込めた思いとは?

“ちょっとの工夫で毎日楽しく”をモットーに、イラストレシピと絵本を描いている、まいのおやつさん。昨年発売した絵本『まほうのわくわくおにぎり』に続く、食育絵本シリーズの第2弾『まほうのぱくぱくべんとう』が発売中です。今作では、お弁当のフタを開ける時のワクワク感や、作る楽しさが描かれています。著者のまいのおやつさんに、構想中のエピソードや作品に込めた思い、さらには作品の裏話なども教えていただきました。


——「食べ物」や「料理」をテーマにした作品を多く手掛けていらっしゃいますが、そう思うようになったきっかけを教えてください。
 
昔から食べることが好きで、元気がない時やちょっと忙しくて疲れたなという時でも、食べることが私の元気の源だなと感じていたので、食をテーマにした作品を描けたらいいなと思っていました。
 
前作と今作のタイトルに『まほうの』という言葉をつけているのですが、料理って日常の中でちょっと小さな幸せを感じられるような「魔法みたいなものだな」と最近改めて感じるようになったんです。料理は日々の生活でやらなければいけないものでもありますが、自分を幸せにするためのひとつのきっかけと捉えたら、それが積み重なった時にふと振り返ってみると「自分はとても幸せなんだ」と思えるような気がして「料理っていいな」と思います。
 
——今作のテーマとして、まずはどんなことを考えましたか?
 
「おべんとうはたからばこ」が今作のテーマになっているのですが、そう思ったきっかけは、子どもの保育園の遠足のお弁当を作ったことでした。その時に息子が「お弁当って宝箱みたい」とすごく喜んでくれたんです。その言葉がずっと心に残っていて、何か形にできたらと思い、この作品につながりました。
 
——主人公の男の子が、本棚の中で光っていた一冊の本を見つけることからストーリーが始まります。全体の構成はどのように考案されたのでしょうか。
 
この作品を思いつく数ヶ月前に本棚を買ったのですが、その前を息子がうろうろしていたことがよくあったんです。それがなんだか「ワクワク」を探しているようで、楽しそうだなと感じました。後日、保育園のお迎えに行く時間になってちょっとバタバタしている時に、ふと「ぶ厚い本を開いたら、その中が小さなキッチンになっていて、そこでお弁当を作ったらすごくワクワクするんじゃないかな」というアイディアを思いついたんです。そこに、子どもが本棚の前をうろうろしている様子が結びついて、急いでメモを取って担当編集の方に「こんな内容はどうでしょうか」と電話しました(笑)。
 
——アイディアやひらめきは普段から突然降ってくるのですか?
 
普段はマインドマップのように、単語やイラストを繋げていって、考えながら作っていくことが多いのですが、今回はなんとなく頭の中にあった記憶が結びつき「これ、いいかも!」と突然思いついた感じでした。
 
——後半で「ぼくたちもりょうりしてー」とやってくるやさいたちに「ごめんね、苦手なの」と伝えた後の、やさいたちの「ズッコーン」がかわいらしくおもしろかったです。
 
ありがとうございます! 最初は、やさいたちの気持ちがもっと落ち込んでいる感じにしようかなと思っていたんです。でも、担当の方から「もう少しコミカルな感じの方がいいのでは」というアドバイスをいただいて、吉本新喜劇のズッコケるシーンを参考にしました(笑)。
 
それぞれのやさいたちがとっているポーズや表情は「ネギはショックで、もっとふにゃってなるかも」とか「ほうれん草がムンクの叫びみたいな顔だったらいいんじゃないかな」など、息子と夫と一緒に相談しながら決めていきました。

——たまごやきやハンバーグなどの「作り方」も分かりやすく描かれていますが、気を付けたり、心がけた点はありますか?
 
作り方を描くうえで意識したのは、子どもたちに「これはこうやって作るんだよ」と、説明するならどの場面を切り取ると分かりやすいかなということや、どうすれば美味しそうに出来上がったと感じてもらえるかなということです。あとは「自分でもできるかも」「作ってみたい」と思ってもらえるように描けたらいいなと意識していました。
 
——そのほかに、食べ物のイラストを描く時に心がけていることや大切にしていることは?
 
私自身が「美味しそう! 食べてみたい!」と思えるように描こうといつも心がけています。 あとは、焼き色とツヤ感を大事にしています。使っているのは色鉛筆なのですが、例えばピーマンに光が当たって少し白っぽくなるところをあらかじめ決めておいて、そこは色を塗らないようにするとか、色味がどんな風に変わっていくのかなどは、本物の野菜や撮った写真を見ながら描くようにしています。
 
——美味しそうなお弁当のおかずがたくさん登場しますが、まいのおやつさんのお弁当の思い出を教えてください。
 
私は幼稚園に通っていたので、ほとんど毎日お弁当だったのですが、母が作ってくれるアスパラベーコンが大好きでした。刺しているピックもお花やカラフルなものがあって、それを毎日楽しみにしていたという記憶があります。小学校では給食になったので、遠足などの行事の時のお弁当はフタを開けるのが楽しみでした。
 
あとは「これ美味しかった」と母に伝えたら、しばらくそのメニューが続いたのですが、今はその気持ちも分かるようになりました(笑)。
 
——食育をテーマに描かれた絵本は数多くありますが、まいのおやつさんならではの独自性を、ご自身ではどのように考えていますか。
 
「選べる楽しさ」をいつも心がけていたいなと思っています。 例えば、おにぎりやおかず、お弁当の一覧ページでは、「どれにしようかな?」と迷う時間も含めて楽しんでいただけたら嬉しいです。前作の『まほうのわくわくおにぎり』は、保育園や幼稚園、小学校でもよく読んでいただいていて、先生方からいただくメッセージには「一番盛り上がるのは、最後の『あなたはどのおにぎりをたべてみたいですか』と書かれたページです」というご感想が多いんです。「私はこれ」と意見が分かれるようなページがあると、子ども同士で読んでいても盛り上がるかもしれないなと思いました。なので、今後もそういう部分を取り入れていけたらと思っています。

——本作を描いてみて、何か新たな発見や気づきはありましたか?
 
私の作品を読んでくださった方が、本を通して新たな体験や冒険ができるものが描けたらいいなと改めて強く思うようになりました。あとは、どうすれば「もっとこういうことを知りたい」とか「これやってみたい」という気持ちを持つきっかけを作ることができるかということを考えています。
 
——今作を読んだお子さんの反応はいかがでしたか?
 
息子もすごく気に入ってくれて、最近では自分で暗唱するようになりました。今までは「この本読んで」と言われることが多かったのですが、この絵本では「読むから聞いて」の方が多くて。それがとても嬉しいです。作中に出てくるお料理の中でどれを食べたいか一緒に選んだり、「ジュージュー」などのオノマトペを繰り返し発音したり、野菜たちと同じポーズをしたりしています。
 
——作中、「おべんとうはみらいのじぶんやたいせつなひとへのプレゼントなんだ」という言葉が出てきますが、このメッセージに込めた思いを教えてください。
 
これは私自身のエピソードになりますが、ちょっと早起きしてお弁当を作っておいて、お昼にそれを開けた時に「今日は作らなくていいんだ」、「朝早起きして作ってくれた私、ありがとう!」という気持ちになったんです。その時に、お弁当って過去の自分からのプレゼントみたいだなと感じたので、その気持ちをそのまま作品に込めました。
 
——日々、お弁当作りで悩んでいる方に何かアドバイスがあればお願いします。
 
絵本に宝物を詰めるような感覚でたくさんのおかずを描きました。その思いをのせた絵本が、少しでもみなさんの日々のお弁当作りの参考になったら、とても嬉しいです。
 
——1作目の『まほうのわくわくおにぎり』が、第8回未来屋えほん大賞の2位に選ばれました!  受賞を受けて、今の率直なお気持ちはいかがですか。
 
子どもの頃から「いつか絵本を描いてみたいな」という夢が心の中にずっとあったので、その夢が叶って、本を出版させていただくだけでも嬉しいのに、こんな素晴らしい賞をいただけたことは本当に感謝しています。

——これから手掛けてみたいジャンルの作品や構想はありますか?
 
もう少し年齢の高い小中学生向けや、大人の方を対象にした作品もいつかやってみたいです。子どもが成長するにつれて、私自身の見えてくる世界も変わると思うので、実際に息子と話しながら、その時々で描いていけたらいいなと思っています。
 
——最後に、本作の裏話がありましたら、こっそり教えてください。
 
物語の最後では、主人公の男の子が本の中で作ったお弁当箱を洗っていて、次のページはお弁当の一覧を描いたものになっているのですが、これは将来主人公が自分で作ったお弁当、という設定にしています。
 
本の世界に入って、食べ物たちと楽しくお弁当を作っていたけど、気づいたら現実の世界に戻っていて「またまほうの世界に入ろう」と思ってももうできない。「あれは本当のことだったのかな?」と思い返すこともあるけど、その世界で作った曲げわっぱのお弁当箱だけが男の子のもとに残っている。「楽しかったな」「不思議な思い出だな」と、昔のことを懐かしむ気持ちも込めて、大きくなってもまたお弁当を作っていくんじゃないかなという裏設定になっているので、ぜひそこにもご注目ください。

取材・文:根津香菜子


書籍情報

書名: まほうのぱくぱくべんとう
著者:まいのおやつ
発売日:2024年10月09日
ISBNコード:9784041152072
定価: 1,540円 (本体1,400円+税)
総ページ数:32ページ
発行:KADOKAWA

★書誌情報の詳細はこちら!
https://www.kadokawa.co.jp/product/322404000265/

★全国の書店で好評発売中!
★ネット書店・電子書籍ストアでも取り扱い中!

Amazon
楽天ブックス
電子書籍ストアBOOK☆WALKER
※取り扱い状況は店舗により異なります。ご了承ください。

書名: まほうのわくわくおにぎり
著者:まいのおやつ
発売日:2023年07月20日
ISBNコード:9784041135310
定価: 1,430円 (本体1,300円+税)
総ページ数:24ページ
発行:KADOKAWA

★書誌情報の詳細はこちら!
https://www.kadokawa.co.jp/product/322211001525/

★全国の書店で好評発売中!
★ネット書店・電子書籍ストアでも取り扱い中!

Amazon
楽天ブックス
電子書籍ストアBOOK☆WALKER
※取り扱い状況は店舗により異なります。ご了承ください。


作家プロフィール

絵本・イラストレシピ作家。初の絵本『まほうのわくわくおにぎり』(KADOKAWA)で第8回未来屋えほん大賞第2位を受賞。著書に『作るのも食べるのも!まちどおしくなるごはん』(ワニブックス)、『おいしい楽しい!しあわせ4コマレシピ』(ワニブックス)などがある。SNSの総フォロワーは150万人を超え、3歳の息子がいる(2024年9月現在)。食べることと絵を描くことが好き。
X(旧Twitter) @mainooyatsu
Instagram @mainooyatsu


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?