書店員のイチ押し小説 第4回 佐賀之書店・本間悠さん
書店員さんが「イチ押し」だと思う本は、どんな本なのだろう?
毎日たくさんの作品に触れている「本」のプロたちに、カドブン編集部がイチ押し小説を聞いてみました!
連載第4回は、2023年12月にオープンした、作家・今村翔吾氏がオーナーを務める佐賀之書店の店長・本間悠さん!
今村さんに関する書籍の展開や本間さんおすすめの本を紹介する「ほんま大賞」など、佐賀の目利き書店員として日々たくさんの本を紹介している本間さんに、イチ押しの本についてメールにてインタビューを行いました。
今回のゲスト
佐賀之書店 本間悠さん
小さいころから読書が趣味の一つだったという本間さん。子育てがいち段落し、どこか家の近くで働こう……と思ったときに偶然近所の書店で求人があり、「書店員」という職業に出合ったそう。「今は天職だと感じています!」と語る本間さんは、現在JR佐賀駅内の佐賀之書店で店長を務める一方、新聞や雑誌の誌面で本を紹介するなど、メディアと売り場を通じて日々さまざまな本を紹介しています。
そんな本間さんが今回おすすめしてくれる本は、どのような作品なのでしょうか?
――本間さんが働いているお店の魅力を教えてください!
オーナーが直木賞作家・今村翔吾氏という強すぎるアピールポイントがあります! 地方の書店でありながらも、オーナーである今村翔吾氏をはじめ、様々な作家さんをお呼びしてイベントも行っています。
――オープンから約9カ月が経った今、佐賀之書店さんにはどんなお客様が訪れていますか?
オーナーである今村翔吾氏の作品は確実にファンが増えており、「早く続きを書いてって今村さんに伝えて」と、お客様からの伝言をお預かりすることも多いです。
また、駅という立地からか、「佐賀にゆかりのある本」の需要があり、山本甲士さんや寺地はるなさん、清水朔さんなどの佐賀県出身作家さんの作品がよく動いています。
――現在の本間さんの担当ジャンルと、好きな小説のジャンルを教えてください。
担当ジャンルは書籍全般です。好きな小説のジャンルはホラー。
社会的なテーマのある小説も好きです。
――本間さんのイチ押し小説を教えてください!
『深淵のテレパス』上條一輝(東京創元社)
今や空前のホラーブーム(と私は思っている)。出版業界もご多分にもれず、映画化された『変な家』の続編にあたる『変な家2』が2024年上半期で一番売れた本となり、ホラー小説のランキングブック『このホラーがすごい!』の発売など大盛り上がりです。『変な家』『近畿地方のある場所について』など、モキュメンタリ―形式の作品が中心となる中で、『深淵のテレパス』は、往年のホラーファンが待ち望んでいたド・エンタメのホラー小説。怪談会で「とある怪談」を聞いてしまったことを皮切りに始まる、不可解で不気味な超常現象。調査依頼を受けた「あしや超常現象調査」は、数々の超常現象に一風変わったアプローチを始めます。魅力的なキャラクターと、直球ストレートなオカルト描写、そして極めてロジカルに解き明かされてゆく怪異の真相。スッキリしつつもしっかり怖い結末に、これこれ! こういうのが読みたかったんだよ……!となること請け合いです。
――数年前から盛り上がりを見せているホラージャンルで、本間さん的「次にくる」作品をご紹介いただきありがとうございます! この作品はどんな方におすすめでしょうか?
最近面白いホラー読んでないな~と思う人に。『リング』など、いわゆる「タイムリミット付きの呪い」の謎を解くミステリ要素もばっちりなので、ミステリファンにもおすすめです。
――ミステリファンにもおすすめの作品なんですね! そんな『深淵のテレパス』の隣に置きたい1冊はどのような本でしょうか。
『超能力事件クロニクル』ASIOS(彩図社)
『深淵のテレパス』で私が一番好きなキャラクターが、しょぼい超能力者・犬井。
超能力者を題材にしたホラー作品は数多くありますが、そんな中でも「脱力系超能力者」である犬井は、超能力の描かれ方も新鮮で、愛され要素満載です。本書は超能力って本当にあるのかな……と興味を持った読者に是非読んでいただきたい、超能力入門的な1冊です。昨今の著名な超能力者と、その能力・真偽に迫ります。いわゆる信者(本書でビリーバーと呼ばれる)的な目線ではなく、かなり懐疑的な立場から描かれているところも、『深淵のテレパス』の世界観に通じるものが。『深淵のテレパス』にも登場し、『リング』の貞子の母のモデルと言われる御船千鶴子も紹介されています。
――確かに、ホラーやオカルト作品に登場する超能力・超能力者は「本当にいるのかな」と気になる存在ですよね。ホラーや謎をテーマとした作品に挑戦してみたい読者の方は、ぜひ今回の2冊を手に取ってみてくださいね!