書店員のイチ押し小説 第6回 明林堂書店浮之城店・大塚亮一さん
書店員さんが「イチ押し」だと思う本は、どんな本なのだろう?
毎日たくさんの作品に触れている「本」のプロたちに、カドブン編集部がイチ押し小説を聞いてみました!
連載第6回は、宮崎県にある明林堂書店浮之城店の大塚亮一さん!
担当者が「面白い!」と感じた本は特設コーナーを作ってたくさんプッシュするという、本への愛にあふれた同店。約30年書店員としてさまざまな本を読者に届けてきた大塚さんに、イチ押しの本についてメールにてインタビューを行いました。
今回のゲスト
明林堂書店浮之城店 大塚亮一さん
――働いているお店の魅力を教えてください!
当店は旧屋号を含めると約40年以上になる、ロードサイドにある郊外店です。敷地内にはバーガーショップ・手芸店があり、また周りにはスーパー・コーヒー店も集まり、立地としては便利な場所にあります。
お店の特徴としては、担当者が面白いと思った本は特設コーナーでこれでもかというぐらいプッシュします(笑)。また地元出身作家さんも全力で応援します!
そして、地元FMラジオ(FM宮崎)『JOY FM HYBRID MORNING』のブックコーナーにも毎月1回レギュラー出演し、オススメ本の情報を発信しています。(詳細は店舗公式X(@mrd_ukinojyo)にて!)
――現在の大塚さんの担当ジャンルはありますか? また、お好きな小説のジャンルを教えてください。
担当ジャンルは文芸・文庫・新書・ビジネス書・学習参考書・コミックです。
好きな小説のジャンルは、ファンタジー・恋愛・ミステリ・SFなどです。
――大塚さんのイチ押し小説を教えてください!
『赤と青とエスキース』青山美智子(PHP文芸文庫)
青山美智子さんの作品はデビュー作からすべて読んでいますが、今作は今までのハートフルな作風とはがらりと変わり、一つの絵画をめぐる5つの愛の物語です。さまざまな伏線が回収されたラストに涙します。
青山さんの作品は前向きになれるものが多いのですが、今作は人の思いの繫がりがとても素敵で、長く余韻に浸れるところが惚れ込んだ理由です。
――この作品はどんな人にオススメでしょうか。
ある程度人生経験を積んだ人には誰にでも一度はある、心がギューっと締め付けられる体験を思い出すことができます。若い世代には、怖がらずに自分の思った道を進むきっかけをつかんでくれたら嬉しいです。
――そんな『赤と青とエスキース』の隣に置いてオススメしたい作品はありますか?
『世界のすべて』畑野智美(光文社)
隣に置きたいのは、全く正反対の、恋愛感情も性欲もないある男の子の物語です。でも、彼にとってはそれが普通です。今でこそ多様性という言葉をよく聞きますが、今作を読むといかに私たちは世の中の常識やルールにとらわれて生きているのかを感じさせられます。いろんな意味で普通とはなにかをあらためて考え直すきっかけをくれます。
誰しも一つは悩みがあるとは思いますが、この本を読むことで少しでも心が軽くなる人がいてくれたら嬉しいです。
――素敵な作品をご紹介いただきありがとうございます! 愛の物語と、恋愛感情を持たない男の子。どちらも“人”に焦点を当てた物語ですね。新しい小説に出会いたい方は、ぜひ手に取ってみてください!