認知症介護ガジェット:おかんが万引きしてしまった……屋外用セキュリティカメラで再発防止を試みました
本記事の初出は家電批評2022年7月号です。
執筆:岡野学/協力:工藤広伸(くどひろ)/編集:家電批評編集部(商品紹介のリンクはアフィリエイトを含みません)
事件です。おかんが近所のスーパーで万引きをしてしまいました
いろいろ話を聞くと、どうやらレジ袋に入ったお会計後の品物と同じものを、手持ちのエコバッグに入れていて、そちらの会計が済んでいないまま店外に出て、そこをお店の人に止められたそうです。幸い、お店側も通報を受けた警察も、おかんが認知症だということはわかったようで(似たような事案も地域で増えているそう)、大きな問題にはならなかったのですが「できるだけ一人での買い物は控えてください」とのこと。そこで実家の兄と「今後は買い物に行くときは小多機(※)の人と一緒に」と約束したらしいのですが……。
玄関にカメラを付ければ、おかんの外出を把握できるのでは?
兄に買い物に行くのを止められて言うことを聞いていたのは翌日まで。二日後からは万引きのことはすっかり忘れ、制止を振り切って買い物に出るように。ただ、この場合は小多機に連絡してスーパーに急行してもらうことも可能。問題は、兄が気づかないうちに、おかんが買い物に行ってしまうケースです。
そこで思いついたのが、玄関にカメラを付けておいて、おかんが外に出たら通知をもらう方法。これを僕と兄、小多機間で共有すれば、誰かが必ずおかんの外出に気づけそうです。
今回試したセキュリティカメラ
今回、使用したのは屋外用のネットワークカメラ。「プラススタイル +Styleセキュリティカメラ」バッテリー搭載で、付属のソーラーパネルからも充電可能。電源なしでも長期間駆動できるというタイプです。基本スペックは以下の通り
サイズ・重量/約W57×D58×H98.2mm・約211g(いずれもカメラ本体のみ)
防塵・防水性能/IP65準拠
バッテリー/リチウムバッテリー6360mAh
不満点もあるけど外出チェックには十分でした
屋外に設置できるバッテリー駆動のカメラはいくつかありますが、ちょうど家電批評6月号で試したプラススタイルのカメラが手元にあったので、それを使ってみることに。
使ってみた感触としては、売りのソーラー充電は上々。明るい場所なら直射日光が当たらなくてもそこそこ充電しているようで、頻繁にリアルタイム映像を見た初日以外、バッテリーが減っている様子はなし。カメラのモーション検知は感度が高いのか、照明の点灯や虫にも反応していますが、今のところおかんの外出は見逃していません。できれば、グーグルの「Nest Cam」のように人物判別までできると、おかんの外出だけ効率的に通知できそうですが、値段が2分の1以下なので贅沢は言えません。
ただ、通知は静止画1点のみ。記録映像も自動でアルバムに追加されず、タイムゲージ上を手動でシークしないと見られない仕様がかなり不便。ゲージも見づらいし、ぜひ改善してほしいです。
試用を踏まえて、岡野家では2つの方法でおかんの外出を全部チェックすることに決定
ケース1:突然の外出(行き先:スーパーや郵便局など)
ここ数年、おかんが自ら外出したときに行っているのは、スーパーへの買い物か、郵便局でお金を下ろすかのほぼ2択だと思われます。スーパーは地域に1箇所で決まった場所、郵便局はそこから徒歩1分の距離にあります。
使用するガジェット:+Styleセキュリティカメラ
対策:気づいた誰かが小多機に連絡し様子見に行ってもらう
おかんが予定もなく出かける場合でも、実家のある団地から出ることはまずありません。戻ってきたときの様子や聞いた話から、行くのはスーパーか郵便局くらいと推察。どちらも小多機から2〜3分の距離にあるので、誰かがカメラの映像からおかんの外出を察知できれば、小多機に「今おかんが外に出ていったので、スーパーを見に行ってください」とお願いすることができるわけです。
ケース2:決まった外出(行き先:病院、グラウンドゴルフ、小多機)
定期的に出かける必要があるのはこのくらいで、グラウンドゴルフと小多機には、小多機のスタッフさんが連れて行くので基本、見守る必要はありません。病院に行く際は路線バスに乗りますが、乗車するまでは小多機が付き添ってくれます。
使用するガジェット:ドリームエリア みもり
対策:団地の外へのお出かけ時のみ 見守りGPSを持たせる
おかんが迷子になりそうなのは、団地の外に出る「病院」だけ。そして、おかんが家を出てバスに乗るまでは小多機が見守ってくれ、病院では僕が待ち構えています。ということは、“バスに乗ったところから病院に到着するところまで”を、問題なく移動しているかチェックできればOKです。そこで役に立つのが、以前本連載で紹介した見守りGPS。これまでは、1週間ほどしか電池が持たないことや、気分で変わるおかんのバッグ全てには付けられないこと、しばらく財布に付けてみたものの「重い」と外されてしまった経験などから「常時持たせるのは難しい」と感じていました。
でも、病院に行くとき限定ならほぼ確実に持たせることが可能。その方法は、あらかじめ小多機に見守りGPSを預けておき、①病院前日に充電してもらう(=充電問題解決)、②おかんを送り出す際にバス停で装着してもらう(=当日の持ち物わからない問題解決)、③その日のうちに回収してもらう(=外され問題解決)ことです。
これなら、病院の送り出しや服薬補助といった従来の小多機の訪問ルーティーンのなかでやってもらえますし、僕もスマホからおかんの移動をチェックするだけなので手間がありません。ちなみに、この方法で運用する少し前に、一度おかんが病院に来れなかったことがありました。周辺を汗だくで探し回ったものの見つからず、数十分後に帰宅したところを見守りカメラで発見したのですが、このとき改めて居場所がわからないおかんを探す大変さを実感。見守りGPSにも多少の誤差があるため、狭い道路が無数に存在する都会では迷子になったおかんを即発見できないケースもあるとは思います。とはいえ、どこを探せばいいかわからないのと、近くを探せば必ずいるとわかっているのとでは、安心感に大きな差があります。
運用結果:外出の把握はできるようになりましたが、出先でのトラブル対応に課題も残りました……
セキュリティカメラと見守りGPSの併用でおかんの外出をきちんと把握可能になりました。ところが、今度は
リアルタイムで確認できない
小多機に連絡しても手が回らないことがある
という問題に直面しています。くどひろさんによると「高齢者の認知症対策を始めるスーパーが出てきている」そうなので、一度スーパーにも相談してみる予定です。
Q.一人で見守る場合は?
A.多数の見守りカメラで“気配”を察知しやすくする
岡野家は小多機が使えるので上記のような方法をとれますが、地域に小多機がなくサービスが使えないという人もいるはず。そんな人は、宅内のカメラを増やし、チェックする時間を増やすと、お財布の中身を気にしたり、着替えを始めたり、出かける“気配”を察知できるかもしれません。「誰でもできる現実的な対策としては、今のところこのくらいじゃないでしょうか」(くどひろさん)
なお、多数のカメラを設置する場合は、過去に行った比較テストの結果からコストパフォーマンスに優れる「ATOM CAM 2」をおすすめします。
というわけで、認知症介護に屋外用セキュリティカメラを使ってみたレポートでした。介護に関わる方の参考になれば幸いです!。
「ウチのおかんがボケちゃいまして」の最新回は紙版、電子書籍版の家電批評をご覧ください(https://www.shinyusha.co.jp/media_cat/kadenhihyou/)。