お目当ての本は品切れ、いつのまにか外は雨。地下にもぐろうか、駅にもぐりこむか...
すべてはいたましさから生まれ出るが冷え切った灰ではない。
呉明益著『雨の島』の後記に出てくるフレーズ。
コーマック・マッカ―シーの『The Road』は、地球の大変化のあと、父と息子が廃墟と化した文明の足跡を巡る物語。
眠りについた息子に語りかける父親の言葉。
人々が胸の奥に抱きしめている恩寵も、善なる美も、みな痛みから発する。
すべてはいたましさと冷え切った灰から生まれ出る。
『雨の島』を執筆中に頭の中を駆け巡ったいくつかの、たとえばトム・ウェイツのリリックなど、の中のひとつが『The Road』のフレーズ。
呉明益は『複眼人』でもそうしたように、破壊され、もはや取り返しがつかなくなっている地球の環境に、線香花火のような、ごく小さいが輝度の高い熱源を付け加えてくれる。
すべてはいたましさと冷え切った灰から生まれ出る。かもしれないが、
冷え切った灰ではない。ことを願わずにはいられない。
お目当ての『雨の島』をいつでも読めるように買いに来たのだが、この本だけが欠品していた。
また、図書館で借りてこよう。
コーマック・マッカ―シーの『The Road』だが、すっかり忘れていた。
かれこれ、15年はぼくの本棚で眠ったままだった。
あの父親の言葉は、まだ出てこない。