醤油が主役の晩ご飯。
醤油にもラーメンにもお好み焼きにも、いろいろにも文化圏がある。
家人が九州の刺身醤油を買ってきてくれた。
甘みの強いやつだ。
母が存命の頃は、時々送ってくれていた。
いっときは、刺身にはこれだよな、とこだわっていた。
いつのまにか、関東の醤油に馴染んでしまい、九州の醤油を買うこともなくなっていた。
晩ご飯のメインはポークチャップ。
これが、また大好物。
折角だからとタコの刺身を作ってくれた。
そうだからか、ポークチャップの付け合わせが、炒飯、厚揚げ、ピーマン。
ではでは。
わさびをのせてタコの端っこにちょんとつける。
甘みは広がるが、甘ったるくはない。
これなら北海道出身の家人も大丈夫。
長崎県の江迎という町を思い出した。
平戸の松浦藩第一本陣がある。
庭には藩主のお籠を降ろす礎石と水琴窟があった。
ぼくが30代後半だったと思う。
本陣を守り継ぐ一族は、醤油、酒、真珠養殖を家業としていた。
ご当主は、その頃すでに九十歳を超えた侍のような美丈夫。
190cm近い長身に皮のライダースーツ。
米国から直接輸入したというピンクのハーレー・ダビッドソンに跨る写真を見せてもらった。
縁あって、製品の販売促進、新規事業の企画などを手伝っていた。
一帯の大地主は、家を建ててやるからこっちに住みなさいと言ってくださったが、丁重にお断りした。
ご当主がことあるごとに言っておられた。
醤油にしても、酒にしても、その土地の文化に深く根差して生まれ来るものだ。だから、儲けのために全国一律の味や質にするなどもってのほかである!と。
日本橋丸善の近くに山口県の物産館がある。
そこに行けば、母が送ってくれていた醤油や味噌が簡単に手に入る。
もう、随分行っていない。