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仕事でほされたときに読む本

今でこそ異動や処遇に一喜一憂することはないが、若い頃は不本意な異動等に過敏に反応したものだ。何で自分が?一線から外された? みたいな。

そんな時期にはビジネス書の「成功」ノウハウを読むのもバカバカしくなる。仕事だけが人生の成功ではないさ、と自分に言い聞かせるため、オルタナティブな生き方を書いた哲学的な本を求めたものだ。

多忙な職から身を引いて閑暇な生き方をするよう知人に勧めたセネカの「人生の短さについて」、資本主義経済への転換期に森の小屋で隠遁生活を送ったソローの「ウォールデン 森の生活」など。
隠遁しながらも「市民的不服従」の態度を貫いたソローの思想は、後のガンジーやキング牧師の運動に繋がっていく。組織に属さずして社会に影響を与えた彼の生き方は、会社という組織でほされたときに勇気と慰めをくれる。


日本文学では鴨長明「方丈記」がある。

下鴨神社神官の次男としてエリート街道を歩んできた鴨長明は、21の時に神官への就職に失敗、50のときにも神職ポストへの就職に失敗した。その後は出家し、都から離れた大原に方丈(四畳半)の終の棲家を建てて暮らした。

「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」に始まる冒頭を読むと、さぞかし老成した作家がメタ的にこの世をはかなんだ文章に思える。さにあらず。光文社古典新訳文庫の訳者あとがきにはこうある。

よく知られているように、無常観を全面に出した書物だが、だからといって、「方丈記」を通して無常観に関わる達観がもたらされているわけではない。むしろ、読めば読むほど鴨長明の迷いや葛藤が見えてしまい、達観どころか、かえって苦しくなる。


鴨長明の迷いや葛藤について、超超超訳方丈記としてまとめた。

🦆鴨長明 👨聞き手(旧友)  場所:鳥貴族

🍶一本目
👨「懐かしいなぁ。しかし、ボンボンだったお前がなんで僻地の狭い家に住んでんの?」
🦆「川の流れと同じように世の中って無常でしょ。最近も大火事、大竜巻、大飢饉、大地震が立て続けに起こったり、政治的に不安定だったりで。そんな儚い世で見栄張って豪邸建てる必要あんのかなぁと疑問に思って」
👨「ごもっとも。立派だね」

🍶二本目
🦆「それに身分が低いと近所に気を使っておどおどすんじゃん。まして隣が金持ちならへこへこするみたいになんじゃん。嫁や子供がうらやましがったり、お隣さんから見下されたり」
👨(ん?話変わってきた?)

🍶三本目
🦆「俺、とことん不運なんだよねー。婆ちゃん家を別の者が継ぐことになって、それ以来縁が切れちゃってさー。思い出深い場所なんだけどねー。」
👨(愚痴?)
🦆「それで三十のときに家建てたんだけど、婆ちゃん家の十分の一の広さw 金ないから門も作れないわ、建付けは悪いわw 川そばで洪水も心配だし、治安も最悪」

🍶四本目
🦆「で、五十のときに出家したの。それまで住んでた家の百分の一もない広さ。引っ越すたびに狭くなってくわw」
👨「そ、そろそろお開きにする?ここは俺が奢るわ」
🦆「だいじょぶっ... でも今の暮らし気に入ってんの。読経さぼっても誰からも何も言われないしw 楽器引いたり、歌詠んだり、近所のガキと遊んだり」
👨(開き直り...)
🦆「たまに街中に行くと落ちぶれた自分にへこむけど、家に帰って落ち着くと俗塵達が気の毒になるよw 我こそ自由を謳歌する鳥なり、魚なり。zzz...」
👨   .....    「お会計お願いします」


鴨長明はソローのように人生の先生にはなってくれないが、傷を舐めあう仲間くらいにはなってくれるかもしれない。


さて、前の職場のことで、本社から出勤停止1週間、30%減給1ヶ月の処分を受けた。不運なのだが当時の責任者なので仕方ない。

誰を飲みに誘おうか。



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