冷蔵庫に飼いたかった
夏になると毎年、冷蔵庫に牛を飼いたかった。
また牛か。
アンパンマンと母の腹筋壊しにきたあの息子の上に、とんでもなく牛乳を飲む兄がいる。1リットル飲んでしまう日もある。水よりも麦茶よりもジュースよりも牛乳を飲む。特に夏場は牛乳を飲む量が増えた。なんでやねん。麦茶飲めや。
夏、冷えた牛乳はおいしい。これはわかる。ただ、外で走り回って大汗かいて、「のど渇いたー!」って冷蔵庫開けてがぶ飲みするのは牛乳じゃない。麦茶やろ。
なにも牛乳飲むなとは言わん。むしろ牛乳好きでよかった。背伸びるんちゃうかなと期待してる。ただ、ほんまに、限度がある。
夕方買った2リットルの牛乳が朝にはもうないという日がきた。12時間でなくなった。いや、寝るまでの5、6時間か。限界や。私は朝のコーヒーにちょっと牛乳入れたいだけやのに、これから毎日3リットル買うのか。この夏、毎日、牛乳を、3リットル、買う、おばさん、参上、とぅー。
いやー!やめてー!
もう嫌や、牛乳買うの嫌や、牛乳のほうから家に来て。冷蔵庫開けたらいつでも牛乳飲めるようになってて。そうや、冷蔵庫に牛飼おう。そしたらいつでも新鮮搾りたてを飲めるやん。大きい冷蔵庫いるなぁ。ドア開けたら牛の顔面ドアップか。なんで縦におる。お乳搾られへんやん。冷蔵庫は横長にしてドアはガルウィング、左側を頭にして待機してもらおかな。頭の位置は尾頭付きの魚と同じ向きにしたくなるよね。干し草どれぐらい食べるんかなぁ。飼うよりどこでもドアみたいに冷蔵庫のドア開けたら牧場に繋がってて、ちょうどお乳搾ってほしい乳牛が待ってるのがいいかなぁ。それも冷蔵庫におるんやから冷えてるで。え、冷えてるか?生きてるわけやから、搾ったときは生温かいやろ。それはちょっとなぁ。ぬるい牛乳は飲まれへんねんなぁ。冷蔵庫キンキンに冷やしたらいけるかな。いかれへんよなぁ。そうかぁ。あかんかぁ。牛、飼われへんかぁ。
夏になると毎年悩む日がくる。
牛乳買うか、牛飼うか。
大人になった兄はその後、牛乳を飲む量も落ち着き、そんなに背が伸びることもなく、骨密度を伸ばしました。思てたんとちゃう。
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