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 「ノルウェイの森」村上 春樹【読書記録6】


あらすじ

唯一の親友キズキが自殺したことによるショックから逃れるように、東京の大学へと進学したワタナベ。真面目になんでもないような大学生活を送っていると偶然、キズキの彼女であった直子と出会う。同じ大切な人を失った同士で、懐かしさとキズキの影を感じ惹かれあっていく。ほかにも、同じ学部の緑や同じ寮に住む先輩の永沢など様々な人々と関わりつつ、喪失と再生の経験をへて青年から大人へとなっていく物語。


感想(ネタバレ有り)

・全体を通して主人公の孤独感を感じた。ただ、読んでいくとルームメイトやバイト先の同僚、永沢先輩や同じ学部の緑、直子など関わりがあり、一見は賑やかなように思える。そのため、この孤独感はどこから感じているのかと考えると、精神的あるいは思想的に孤独なのではないかと思った。
主人公のワタナベにとって人は完全には分かり合えないというのが根底にあって、孤独であることを受け入れている。本書にもあったが、本質的に自分にしか興味がないというのは自分にも当てはまるように思えて、考えさせられる言葉だった。
それ故に、内面からどんどん成長していって、強くしなやかになっていく様が面白かった。

・永沢先輩がなかなか印象深い人物であった。なんでも出来てしまう天才肌で自分のための努力は怠らず、自信に満ち溢れている。思想も唯我独尊といった感じで、マッチョ的というか逞しい考え方であり読んでいて面白かった。特に、登場時の「時の洗礼を受けた、死後30年以上たった作者の本しか読まない」「他人と同じ本を読んでは、他人と同じ考え方しかできなくなる」がかなり合理的で強烈な印象だった。それに倣って、自分も30年以上たった作者しか読まないでみようとも思ったが、村上春樹さんの作品が読めなくなるので今回は諦めることにした。

・ラストのシーンで直子を亡くした悲しみを受け入れて、いよいよ緑と付き合おうとするところで、ハッピーエンドなのかと思いきや自分がどこにいるのかわからなくなる。急な展開に恐ろしさを感じ、困惑もしつつなぜこの終わり方になったのか、ずっと気になっていた。なんとなく思っているのが、キズキの死から始まった死者への執着と失われた青春からの解放ではないかなと感じた。直子自身もキズキを失った17歳の時代に囚われおり、その直子を通してワタナベも囚われていた。そこから、挫折を繰り返し、直子の死を乗り越え成長したことで、新たな大人としての自分が世界に生まれたからかと思った。
正直、この考えにはあまりしっくり来ておらず、もう少し深く読み解いていきたい。

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