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 「ムーン・パレス」ポール・オースター【読書記録5】



あらすじ

幼いころに父と母を亡くし、伯父と一緒に暮らしていたフォッグ。唯一の家族であり、フォッグの人格の基盤ともなっていた伯父が突然に亡くなってしまい、深い悲しみからだんだんと無気力な生活へと落ちていく。
そんな中、偶然であった仕事先の老人をきっかけに、出会いと別れを繰り返しながら自らの家系の謎に迫っていく。
若いころの無鉄砲さやナイーブさを描いた青春小説。


感想(ネタバレ有り)

・賢く若さゆえの純粋な主人公が、大切な人との出会いと別れを繰り返していくうちに、自分自身の立ち振る舞いを身に着け成長していく。出会う人々の距離感に心地良さを感じた。良い人ではあるが悪い側面も持っていて、それぞれ自分のこだわりがある。そういった、人の身勝手さのようなものに揉まれて成長していくんだなと読んでいて思った。

・主人公が一文無しのホームレスと化し、公園で暮らすようになることで気づいた個人と社会の境界みたいなものが面白かった。ひとたび外に出れば、厳格なルールと行動規範を課せられ、それを守るうちは大衆の一部として誰からも無関心とされるが、規範を乱せば一斉に正義の名のもと攻撃の対象となる。これは、そこに暮らす人が増えれば増えるほど攻撃の激しさと規範の厳しさが増すのではないかと思った。そこから、気分屋の自分は人混みや都会に苦手意識があるんじゃないのかと感じた。

・読んでいて思ったのが文章や表現の緻密さだった。本書に絵画の要素もでるため感じたのだが、まず、西洋絵画はキャンパスの隅々まで使い絵の具で立体感まで表現したりする。それと同じように、細部までを表現するかのように言葉が詰まっている。それに比べて、日本画は余白を大事とする。あえて余白を残すことで想像の余地を与え、自らの思想によって画を楽しむ。この違いが、感じられて面白いなと感じた。
ただ、最近聞きかじっただけの知識であるため、もっと深く勉強すればより面白い洞察を得られるのではないかなと思うので、これからも精進していきたい。

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