合力・結・模合・朋輩組。日本の互助システムの役割を考える。
今回のテレワーク/リモートワーク推進を通じて、組織の正体が「関係性」であることを実感した方も多いかと思います。
組織にしても、チームにしても、コミュニティあるいは家庭にしても、モノみたいに実物として存在するわけではありません。すべて「関係性」の名前なわけです。
「これからは個人の時代だ!」
「いやいや個人どころか集落の時代だ!」
色々な意見があると思いますが、「関係性」の中で生きなければいけないのは変わりがないはず。
今回は、「関係性」を基盤とする特徴的な互助コミュニティについて紹介したいと思います。
岐阜県白川村 合力・結
世界遺産・白川郷合掌造り集落で有名な白川村。
岐阜県の山間部に位置するこの集落。冬は雪で閉ざされる厳しい環境にあるため、この地域ならではの互助システムがあります。
まず一つ目は合力(コウリャク)。冠婚葬祭や災害時などの際に、必要に応じて互いに労働力を提供するものです。場合によっては、金銭や物の提供も行われることもあります。
二つ目は結(ユイ)。合掌造りでお馴染みの茅葺き屋根は、約30年から40年に一度葺き替えを行います。1日あたり200人から300人程度の人手を必要とするため、集落全体で助け合います。
もはや一家の行事と言うよりも、集落全体の行事といえるでしょう。
沖縄県 模合
続いて紹介するのは、金銭の相互扶助を行う模合(モアイ)です。本土では頼母子講・無尽講と呼ばれていたりします。
仕組みとしては、月に一度、数人から十数人の知人・友人が集まり、一定の金額を集め、誰か一人がそれを受け取る。受け取った人は、次の集まりから毎回利子をのせて支払う。後で受け取る人ほど、お金をより多く貰うことになるわけです。
とはいえ、実際には金銭の相互扶助というより、親睦を深める目的とした模合の方が多いそうです。皆で集まるためのきっかけづくりという感じでしょうか。
一方でお金が絡む以上、持ち逃げや不払いが発生した場合には、信用問題として模合がうまくいかなくなること(=模合崩れ)もしばしば。そのため、前提として信頼できるメンバーで模合を始めることが重要となります。
徳島県旧海部町 朋輩組
以前の記事で紹介したことがありますが、自殺希少地域として知られる徳島県旧海部町の朋輩組(ホウハイグミ)についても触れます。
トラブルや問題が起こることを前提として、その際の対応/協力を行うための組織といえます。
個人的な考察
こうしてみていくと、地縁型コミュニティ内の互助システムの形態は大きく二つのパターンに分けれそうです。
以上のような地縁型コミュニティ内の互助システムには、もちろん課題もあります。
まず、地域によっては過疎化と高齢化によって維持が困難という点です。白川村の結(ユイ)も、維持が難しくなっており、ボランティアなどを募っています。
第二に、閉鎖的であることによる村八分の可能性です。仲間内での結束が強くなればなるほど、そこに合わない人は村八分にされてしまう可能性がある。合わないと感じたら、逃げられることも重要です。地縁型コミュニティから価値型コミュニティへの転換もこの文脈で語られています。
そういう意味で言うと、①定常イベント/業務パターンについては、共同労働、共有財産、信頼の蓄積を介するため価値型コミュニティに応用できることが多いと感じます。地縁型コミュニティからの移行もスムーズにできそうです。
一方で、②緊急事態への対応パターンについては、「課題解決」「一時的な助け」が目的になっているため、価値型コミュニティの中でも一歩踏み込まないといけないぶん、ハードルが高い気がしました。
以上、日本の互助システムの役割について考えてみました。
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↓徳島県旧海部町の朋輩組(ホウハイグミ)について書いています。
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