読書感想『15歳からの社会保障』
こんにちは、栗原白帆です。横山北斗さんの『15歳からの社会保障』を読了しました。
これまで「たくさんの人に読まれるといいな」と思った本は数知れずありますが、「これ全員読むべき!!」と思った本は初めてかもしれません。
教科書にしてもいい。それくらいこれから生きていくのに必読の書です。
私は日本の福祉はとても充実していると思っています。欧米諸国と比較しても、そん色ないくらい。にもかかわらずそういう印象が薄いのは、せっかく様々な制度が整えられていても、必要な人がそこにつながりづらい。
なぜか。
それは日本の福祉が「申請主義」をとっているからだ、と登場する社会福祉士が説明する場面があります。
繰り返しますが、日本の福祉は他の国と比較しても引けを取らないくらい充実していると思います。問題は、それを利用するためには利用者が自分の力でつながっていかなければならない、という点です。
現実に社会保障を必要とする人は”困難を抱えている人”で、そういう人の多くは「知らなかったことが理由で利用ができない人」(P.22)になってしまっているのが現状です。
特に日本語がわからない人、大人や他人を信用することができない人にその傾向が顕著です。自分でなんとかしようとしてしまい、倒れてしまう。
情報がないということは、丸腰で戦場を歩くようなもの。
あまりにも無防備です。
この本では、社会保障の種類ををただ紹介するのではなく、架空の事例を用いて、困難を抱えた人と社会福祉士(ソーシャルワーカー)が会話する形式で、こういう場合はこの社会保障を利用できる、という説明がされているので、まず、すごく読みやすい。
そして事例が秀逸です。本当に自分や身の回りにいつ起きてもおかしくないものばかり。
実際に自分が困ったとき、目次を読めば今の自分に近い事例がすぐわかり、利用できる社会保障はなんのなのか、わかるようになっています。
それぞれの事例は小説仕立てになっていて、ある日突然日常が奪われてしまった主人公が自分事として社会福祉士の手を借りながら社会保障制度につながっていく様子が描かれていきます。
読んでいると、私たちには困ったときに頼れる制度がたくさんあることがわかります。でも知らないと使えない。知らないと、使えないんです。求めなければ、誰も教えてくれません。
無知ゆえに破滅していくひとがいる。無理をして、倒れてしまう人がいる。罪を犯さなければならない人がいる。
「そんなの自己責任でしょ」と思う人がいるかもしれません。
でも筆者も述べているように、「知らないことは、個人の責任では決してない」(P.214)のです。
筆者は「国や自治体が社会保障制度の情報を必要な人に届け、利用しやすくするための取り組みを積極的に行うこと、つまりは社会保障制度を申請する権利の行使をサポートする施策が重要なのです」(P.215、強調筆者)と述べていますが、現実にその施策ができるとしても、相当時間がかかりそうです。
だからまずは全員がこの本を読むべきだと思います。
自分のためだけでなく、身近にいる困っているひとのためにも読むべきです。
困っている人に「こういう制度があるらしいよ!ここに行けば色々教えてもらえるよ!」と言うだけなら、なんの資格も必要ありません。
国や自治体でなくても「社会保障制度を申請する権利の行使をサポートする」ことができます。
情報は力です。
知っていれば、絶望的な状況でも次の手を考えることができます。
学校の図書館には必ず置いてほしい。
私はさっそく勤務校の図書室で購入リクエストをかけました。
マストリードの一冊です。
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