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「教師の在り方」をアドラー心理学から考える 支配ではなく信頼をベースに
学校現場では、子どもたちを「どのように導くか」が常に課題となります。指示や管理によってクラスをまとめる方法もありますが、アドラー心理学の視点に立つと、より大切なのは**「信頼関係をベースにした関わり」**です。教師と子どもが対等な立場で向き合い、共に学ぶ姿勢を持つことで、子どもたちは自主的に考え、行動できるようになります。
では、どのようにすれば「信頼を基盤としたクラスづくり」ができるのでしょうか。今回は、アドラー心理学の考え方をもとに、教師の在り方について考えてみたいと思います。
1. 「対等な関係性」を意識する
アドラー心理学では、「すべての人は対等である」という前提に立っています。これは、教師と子どもの関係においても例外ではありません。教師は「上から指導する存在」ではなく、「共に学び合う存在」として関わることが大切です。
例えば、次のような場面を考えてみましょう。
• 子どもがルールを守らなかったとき、「どうしてそんなことをしたの?」と責めるのではなく、「何があったのかな?」とまず話を聞く。
• 宿題を忘れた子に「ちゃんとやらないとダメ」と叱るのではなく、「どうすれば忘れずにできるか、一緒に考えてみよう」と問いかける。
このように、子どもを対等な存在として尊重し、対話を重ねることが、信頼関係の土台となります。
2. 「勇気づけ」を意識した関わり
アドラー心理学では、子どもが「自分はできる」「自分には価値がある」と感じられるように支援することを「勇気づけ」と呼びます。これは、単にほめることとは異なり、子ども自身が成長を実感できるような関わりをすることを指します。
例えば、子どもが何かに挑戦したときには、結果ではなくプロセスに目を向けることが大切です。
• 「最後まであきらめずに頑張っていたね」
• 「自分なりに工夫しながらやっていたのが良かったよ」
• 「前よりもできるようになっているね」
こうした声かけによって、子どもは「自分の努力は意味がある」と実感し、次の挑戦へとつながっていきます。
3. 「支配」ではなく「信頼」をベースにする
教師の立場として、子どもたちの行動を「管理」したくなることは少なくありません。しかし、過度な管理は、子どもが「指示されなければ動けない」という依存的な状態を生み出してしまうことがあります。
そこで意識したいのが、「子どもを信頼し、任せること」です。
• ルールを決めるとき、教師が一方的に決めるのではなく、子どもたちと一緒に考える。
• 学級活動の運営を、教師がすべて管理するのではなく、子どもたち自身に委ねる。
• 何か問題が起きたとき、「先生が解決する」のではなく、「どうすればいいか、みんなで考えよう」と投げかける。
こうすることで、子どもたちは「自分たちで考え、動く力」を身につけていきます。
おわりに
教師として、子どもたちを「正しく導かなければならない」と考えることは自然なことです。しかし、アドラー心理学の視点に立つと、**教師の役割は「管理者」ではなく、「信頼し、勇気づける存在」**であることが分かります。
子どもたちは、信頼された分だけ自分で考え、成長していきます。子どもたちと共に学びながら、「支配ではなく信頼」を基盤とした教育を目指していきたいです。