【vol.16読書記録】読書間奏文/藤崎 彩織
私もさおりちゃんのようにずっと文学少女に憧れてた。
"一人でいるのなんて、どうってことないよ。だって私には本があるもの"
こう言い切れなかった私の小学生時代は、いい子の仮面をつけ続けた日々だ。
みんなに嫌われてひとりぼっちになるのが何よりも怖かったし、
チーム決めや二人組を組む時に一人残った子が、誰かの所に無理に入れてもらったり、先生と組んだりするのをなぜかいつもかわいそうだって思っていた。
自分の気持ちを飲み込んで。嫌なことをされてもみんなに優しく、本当の自分をどんどんすり減らす日々。そうすれば可哀そうな子にならずに済む。子供の時は本当にそう思ってた気がする。
もう、当時の本当の気持ちは分からないくらい時間が経ってしまったけど、運動も勉強も絵の才能も容姿も、何一つ兄弟に勝っていなくて。沢山友達がいる兄弟と対象的な、人見知りで緊張しいで暗い自分。小さい頃から嫌という程比較してきて、そんな自分と一緒にいてくれる人がいるのか、子供ながらにずっと不安だった。
親にすごく比べられたことも、怒られたこともないけど、とにかく自分が大っ嫌いで色んなことを怖がっていた気はしてる。
そして年齢があがるにつれてそれに加え、家の経済的事情でも悩んだ。
私も少しだけ、貧乏の味を知っている。
三千円は時給3時間分。アルバイトを始めた高校生の頃から、こう考える癖は大人になった今でも、まだ残ってる。1回のライブのチケットと欲しかったワンピースが1万円だった時、私は迷わずチケットを取るだろう。むしろワンピースは高いとさえ思ってしまうかもしれない。この時間とお金の関係みたいにどんな人もたぶん自分なりの基準を持っていて、そこが重なったとき価値観が近い人っていうことになるんだと思う。人生にとってお金は一番大事なものではないけれど。それはお金に困ったことがない人だからこそ言える言葉だなと感じる。私は言えない。お金はなくても愛があればなんて。
お金持ちではないけれど、学生の頃より自由なお金が増えた今。取捨選択をすることが難しくなって、すごく生きづらさを感じるようになった。今までどちらかしか取れなかったものがどちらもとれる場合も出てきたからだ。
さおりちゃんと同じように私の中の基準もどんどん崩れて、何を拾い何を捨てればいいか分からなくなってしまった。
迷って迷って拾ったものがもし、違かったら。満足出来ない結果だったら。
ただ目の前の道を進んできただけの人生に急に複数の道ができて目印も看板もない状態にひどく困惑する毎日。
でもその状況下だからこそ、自分は本当は何が欲しくて、何が足りないのか見つけられるのもまた事実なのかな。