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頭木弘樹著 『食べることと出すこと』 読了

頭木弘樹著 『食べることと出すこと(ISBN:9784260042888)』を読みました。

久しぶりに「闘病記(こう呼んで良いのかすら悩む)」を。潰瘍性大腸炎を患った著者の記録というかエッセイというか。

闘病記や、奇跡の回復手記ってなんというか仰々しいというか「テテーン!」て感じしません?

この本、それ無いです。「他人は他人、自分は自分、他人の痛みを想像したらそれが全てと思うな、根っこのところは絶対にわからんぞ。それは頭に入れとけよ。ただこういうケースもあるっていうのは知っといて!それだけでも想像するときにちょっと変わるかもしれないから。」っていう本です。

始まりから一貫して著者の「え?マジ?なんで?」っていう視点がずっと続きます。これは病気に対してのみならず、ご自身の置かれている環境、対人関係、世の空気、諸々。

著者自身で一問一答を繰り返している感じ。そして、心理的な内容も多かったし、文学紹介者の著者らしく「引用」も多いので、私には読みやすく面白かったです。

自分、入院してたときに、点滴で腕の筋が痛くてフォーク欲しかったんです。でもお見舞いに先割れスプーン持ってこられて。「違うんだよ!ブッスーと!深々と!エイヤーと!刺せるものがほしいんだよ!」とやり場のない怒りに苛まされたことがあって。あと「日本人なら気合いで箸使える」と言われたりとか。

だから、この本の中に出てくるお見舞いの話や精神論でせめてくる人の部分、私、不謹慎かな、ニヤニヤしながら読んでました。
あと、同じ釜の飯を食わないと気まずくなったり、病気なのに程度が違って話が噛み合わないというのは、やはり私自身経験があるので「あるある」過ぎてその時の気まずさが蘇ってきました(一度本閉じて寝た笑)。

まあ、共食というのはなんというかもともと神様にお供えしてそれとおんなじの食べて云々みたいな伝統的なものがあるから(食文化か何かの本で読んだ気がする)仕方ないかな〜と私は諦めています。
あとあれだ、私は海外に行ったときに現地の人の食べてるものをすぐ食べたがるタイプだからかな、きっと。すすめたくもなるよね、まあね、みたいな。なんでかわからないけれども染みついている何かと思っている。
とはいえ、無理強いしてないか、気をつけようと決めました。自身にもアレルギーがあって、すすめられて困惑することがあるから。自分がやられて嫌なことは他人にしない。

そうそう、「こういうケースがあるんだよ!」という著者自身の体験談が「へー!」とか「面白い」とか「つらい」とか人によって反応変わってくるだろうから、この本の色んな人の感想をむしろ読んでみたいとすら思いました。
自分と異なる感覚を、知ってみたい。

最後に。著者紹介にあった『排泄文学』アンソロジー、まってます。

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