豊かな「暮らし」とは?〜価値観を見つめ直したタイでの1週間〜
より良く暮らすこと。
そこにこだわり仕事をしてきた。
そんな「暮らし」の価値観を根っこから見つめ直した2年前の夏、タイへのスタディツアーの記憶。
2018年8月 タイ ノーンメック村へ
働いて早10余年。できることも増えてきた。評価を受けることもでてきた。仕事のスタイルや方向性もある程度固まり、なんとなく今後の働き方が見えた気がした。
ーほんとにこのままでいいのか?ー
予定調和が嫌、いや適当な妥協を覚えた自分が嫌。限りなく着飾って言うと「もっと成長したい」だが、まあ要するにあまのじゃく。
ともあれ自分の価値観を一度リセットしたくなりモヤモヤしていたところに、「コミュニティ・4・チルドレン」が主催するスタディツアーへの参加を呼びかけられた。
タイの農村に滞在してコミュニティワークを学ぶ・・・迷わず参加の返信をした!(私のヘソクリでもなんとか払える参加費だったので。笑)
実際の募集チラシの一部
旅行以外では初めての海外。実はかなりの小心者。でも、不思議とワクワクが不安を飲み込んでいた。ー知らない世界に出会えるー それが心底楽しみだった。
สวัสดี ครับ!(サワディ カップ) こんにちは!
さすが微笑みの国。タイ。
村のみんな笑顔で出迎えてくれた! ちなみに、同じ“こんにちは“でも、女性は สวัสดี ค่ะ!(サワディ カー) と語尾が変わる。さらに同じ単語でも語尾の抑揚が上がる、下がる、でも意味が変わるらしい。むむ… 言語は奥が深い。
タイ料理と仏様
ータイ料理と言えば?ー
みなさんのイメージ通り、香辛料や香草を使った料理がメイン。ごはんは餅米。アジア料理が好きな私は(というか洋も和も中華も好き!) とても満足。
一番印象に残ったのはソムタム(青パパイヤのサラダ)。ここでは定番で、どの家庭で作られている。マンゴーやバナナの手づくりお菓子も絶品。
加工し洗練された味とは違う、自然の甘さ、辛さを活かした味。自然の動植物の命を、恵を、まさに「いただく」というにふさわしい。(タイには昆虫食の文化があり、コオロギや蚕も美味しくいただいた…!)
村のみんなは私たちのために毎晩ご馳走と宴を用意してくれた!
それからタイと言えば仏教。
村では托鉢にくる僧侶がいたし、村人はみんなで決まった日に村の寺院にお参りに行く。私たちもご一緒させてもらった。
本堂には大きな犬がでーんと寝そべり、若い僧たちはニヤニヤし雑談しながら現れた。(お坊さん、日本では厳格なイメージがあるけど。)でも、村人たちも誰も怒らない。そんな「若僧」たちを温かく見守っている。
近所であったお葬式でもお経や宴が1週間続く。(さながら地域の祭りのようだった)
仏教が村での暮らしに根付いている。
タイ語のお経はわからなくても仏様には親近感。タイでは国民の90%が上座部仏教を信仰している。
タイの地域格差ー東北(イサーン)地方ー
タイの中心、バンコク。オフィスビルやホテルなどが立ち並ぶ、言わずと知れた東南アジア有数の大都市だ。ブランドショップや大型ショッピングモールもあり、ここではきっと日本と変わらない生活が送れることだろう。
トランジットの空き時間を利用し散策。
一方、滞在したノーンメック村があるタイ東北(イサーン)地方は、首都バンコクからさらに飛行機で1時間。
都市部からも遠く、ライフラインも整備途上。経済的にも比較的貧しい世帯が多い地域だ。
滞在したノーンメック村の風景
村では仕事が少なく、両親は都市部に出稼ぎに行く人が多い。残った子どもたちは祖父母などが育てる。
こうした家庭環境や社会背景から、子どもたちを巡って、ドラッグ、若年齢での妊娠、暴走での事故死、性風俗への流入、などの問題が後を絶たない。
こうした現状を何とかしたい、と、現地でのコミュニティワークに取り組んでいるのが、このスタディツアーの主催者『コミュニティ・4・チルドレン(C4C)』だ。
村でのコミュニティづくり
トゥックが村人みんなに声をかけてまわっている。トゥックは村の地域づくりに取り組むコミュニティワーカーだ。とにかくいつも笑顔!勢いがある!知的なメガネで思考も聡明だが、勢いだけなら世間話のマシンガントークを繰り出す大阪のおばちゃん級。(いや、大阪のおばちゃんが世界基準なのか、笑)
写真左がトゥック。眩しい笑顔がとても印象的!
「子どもの笑顔を地域で育むためには」「どんな仕組みがあれば村での暮らしが改善するか」トゥックと村人たちはとにかく話し合う。
C4Cはそんな村人やコミュニティワーカーたちのひたむきな想いに寄り添い、日本とタイを行き来しながらコミュニティづくりの後方支援をしている。ツアーではそのいくつかの場面をシェアさせていただいた。
日本人と村人たちが建設した集会所とグランド。村の大事なことをみんなで話し合う場。大人が見守る中で子どもが安心して遊べる場。地域づくりに欠かせない「拠点」。日本では当たり前の環境だが整っていないことが多い。
牛銀行。村から困窮世帯に母牛を貸し出す。育てて産んだ仔牛は借り手のものになる。貴重な村の母牛を誰に貸すかもみんなで話し合って決める!
有機農法で米を育てる。「美味しくな〜れ」と、豊作を願う気持ちはみんな一緒。農業と同時に、子どもたちも参加する村のコミュニティ活動に。写真右の子は現在弟と一緒に日本に留学中。
身近な地域で日々の生活を送る。収入を得る。子どもを育む。そのための仕組みを住民たちで話し合い、創り上げる。そのプロセスで人々の絆が深まっていく。そしてやっぱり大切なのは「より良くしたい」の想いと笑顔!!
コミュニティワーク。地域づくりに国境はない。
自分は学校で習った方法論、出来上がった制度や既成概念でコミュニティワークを捉えていたのかもしれない。
コミュニティワークは人々の暮らしそのものにアプローチすることだと改めて痛感した。
ー豊かな「暮らし」とはー
ーところでみなさん、日々の暮らしの中で「幸せだな〜」って感じる瞬間はいつですか??ー
私は日本でのコミュニティワークの中でよくこの問いかけをする。
私の勝手な脳内集計だが、回答トップ5は「布団で寝る瞬間」「疲れてビールを飲んだ時」「お風呂に入った時」「子どもと触れ合ってい時」「友達とおしゃべりしている時」だ。
「AIのア◯クサとしゃべってる時」とか「ト◯タの自動運転の車に乗っている時」という人はまずいない。
そして、村にはそんなものはない。(私の家にももちろん、ない。)
洗濯は雨水を溜めて。寝る時は昔ながらの蚊帳。
タイに行って、豊かさって一体何だろうっていろいろ考えた・・・ 暮らすことってもっと単純に考えた方がいいのかなぁって。社会や組織の難しくて複雑な仕組みって誰のため?って。
(左)宴会では演奏が始まれば皆で輪になって踊り出す (右)プレゼントした剣玉に夢中。子どもの遊びは万国共通!
タイで子どもの笑顔をたくさん見た。
みんなで楽しく食べて飲んで歌って踊った。
美味しいビールも(1瓶55バーツ:約150円!)たらふく飲んだ。
お風呂が水シャワー(!)だったこと以外は、日本での回答トップ5にあるような、幸せな、豊かな瞬間がたくさんあった。
* * *
豊かな暮らしって、物質的なことじゃない。
自分の中の価値観が根っこから掘り起こされ、植え直された。
でも、忘れてはいけないのは、笑顔の彼ら彼女らには両親がいない。
バンコクまで出稼ぎに行かなくても、東京の満員電車に乗って夜遅くまで働かなくても、住み慣れた町で仲間たちと共に働き、家族と共に過ごす。みんなで子どもたちの笑顔を育む。
めざすのは消費や個人主義が柱になった都市型労働中心コミュニティじゃなく、生産や循環や互助が柱になった郊外型暮らし中心コミュニティ。
豊かさとは何か。
タイで考えさせられたそんな暮らしの価値への問いかけを続けながら、これからも自分なりの「豊かさ」を追い求めて働いていきたい!