見出し画像

【Kim06】(3) 介入研究の難しさよ

前回の続きです。


介入研究の難しさよ

この研究では,統制グループにも教師による指導を受けさせています。そのため,統制グループの児童の夏休みの過ごし方も,おそらくより読書活動が活発になる方向に変化したのでしょう。

実験グループと統制グループを比較する本研究のデザインから言えば,これは効果の検出を妨げるように働きます。

しかし著者のKimはそのことを承知の上で,上記の介入手続きだけが異なる介入研究を行ったのです。そのほうが,結果の解釈が明瞭になるからです。

指導も全く行わずに事前テストと事後テストだけ受けてもらう「観察グループ」を設定する方法もあったでしょうが,そのグループに割り当てられてしまった生徒の学ぶ機会を完全に奪ってしまうことへの抵抗や,他のグループに割り当てることができる参加者数が減ってしまう問題が生じます。

このように,読書介入の効果は思ったほどはっきり出るわけではありません。それは本当に効果がない,ということを意味するのかもしれませんが,そもそも理想的な介入計画で研究が行えないことが理由かもしれないのです。個人の研究者が可能な研究計画には限界があります。

メタ分析へ

こうした「個人の研究者の限界」を乗り越える方法が実はあります。

通常,研究論文では,調査に参加してくれた参加者一人一人のデータを統計解析にかけます。この場合,分析単位は「一人」になります。

しかし,論文で報告された「研究(結果)」をそれぞれ一人の参加者のように見なして,「研究」を分析単位として統計解析をかけるのです。これによって,一つ一つの研究結果を越えて,より一般性のある結論を導くことができます。

この方法を「メタ分析」と言います。

実は,このKimの論文を含めて,多数の読書介入研究をメタ分析した論文が,Kim自身によって2013年に発表されているのです。

Kim, J. S., & Quinn, D. M. (2013). The Effects of Summer Reading on Low-Income Children's Literacy Achievement From Kindergarten to Grade 8: A Meta-Analysis of Classroom and Home Interventions. Review of Educational Research, 83(3), 386-431.

次回から,こちらのメタ分析論文をご紹介します。

++++++++++

最後まで読んでくださり,ありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?