Keisuke Inohara / 猪原敬介

北里大学一般教育部講師。専門は教育心理学,認知科学。毎日更新で,ごく一部の人だけが興味…

Keisuke Inohara / 猪原敬介

北里大学一般教育部講師。専門は教育心理学,認知科学。毎日更新で,ごく一部の人だけが興味ある情報をお届け。Xもやっています。テーマは読書,語彙力,読解力,発達,教育。

最近の記事

【振り返り2409】9月の全体ビューは255ビューでした

9月16日から始めたこのnoteですが,早くも最初の月末を迎えました。 進めていく形式も暗中模索というところですが,とりあえず「月末の振り返り」を入れていくことにしてみましょう。月末日当日に記事を書くことにすると,その日できなかったらと不安になるので,ここでは記事自体は2日前くらいに書いちゃいます。つまり,9/28時点の振り返りになりますね。 全体ビューは255ビューnoteのダッシュボードを見てみると,全体ビューの数や,記事別のビューやスキの数が分かります。 今日の見

    • 【オオカミ少女】(1) 授業で「オオカミ少女」をどう扱うか

      私も心理学の授業をやるようになってから長いです。 始めて授業を行ったのはまさに10年前,2014年に神奈川工科大学で「現代社会の心理学」と「心理学」という,心理学概論に当たる2科目を非常勤講師で担当させて頂きました(これは最初の教育歴として,本当にありがたいものでした)。 それから10年。10周年ですね。 現在でも,北里大学で「心理学A」と「心理学B」という心理学概論に当たる2科目を前期・後期で担当しています。その中で,ずっと気になっていましたものがあります。それは,「

      • 【読書学会24】(3) 労働は読書を減じるか,絵本セラピー,本選びのセレンディピティ

        前回の続きです。 読書状況調査の発表以外で,ここの読者の皆様に共有したい,と思った発表についてです。 労働は読書を減じるか立命館大学の桜井政成さんのご発表「本当に働いていると本が読めなくなるのか:JGSS データを用いた検証」は, の本がベストセラーとなったこと触れ,実際のデータで「本当に働いていると本が読めなくなるのか」を検討したというものです。 こうした「仕事と余暇の葛藤」はWLC(Work–Leisure Conflict)と概念化されているようです。WLCが

        • 【読書学会24】(2) 国語世論調査24と比較をしてみたものの……やっぱり調査間の比較は難しい

          前回の続きです。 読書状況調査の不読率についての結果さて,今後まだ論文化する予定もあるので,あくまでも読書学会での報告内容に基づく議論に限定したいと思います。報告された中で,不読率に関するものは以下の2つの結果がありました。 ◎「総合」における「0分(読まない)」という回答が32.20% ◎「紙の書籍(雑誌・漫画以外)」における「0分(読まない)」という回答は59.20% 「総合」の不読率について「総合」というのは,「紙の書籍・雑誌・漫画本・電子書籍・新聞のすべてを含む

        【振り返り2409】9月の全体ビューは255ビューでした

          【読書学会24】(1) 日本読書学会「読書状況調査」というのをやっています

          【国語世論24】記事でしばしば話題にしたのが,日本読書学会「読書状況調査」です。 9/22(日)に,第68回日本読書学会大会が東京都文京区にある「林野会館」で開催されました。読書学会は毎年ここで開催されています。 私も以下の「日本読書学会読書状況調査の概況報告」の共同発表者となっていますので,参加してきました。 井関龍太・小山内秀和・猪原敬介・福田由紀・濱田秀行・足立幸子・平山祐一郎. (2024). 日本読書学会読書状況調査の概況報告. 第68回日本読書学会大会, 2

          【読書学会24】(1) 日本読書学会「読書状況調査」というのをやっています

          【Kim13】(2) え,語彙力って伸ばせないの?

          前回の続きです。Kimらの2013論文では,語彙力だけ読書介入効果がない,という結果になってしまった,という話でした。 え,伸ばせないの?私たち教育心理学者は,関心のあるテーマについて,調査をしたり,実験をしたりします。その最終目標の1つは「より良い介入プログラムの開発」だったりします。 介入研究の結果というのは,ある意味,これまでの調査や実験といった基礎的な研究の答え合わせ的な部分があるのです。答え合わせの結果が「不正解」なのであれば,少々心穏やかではありません。 し

          【Kim13】(2) え,語彙力って伸ばせないの?

          【Kim13】(1) 読書介入のメタ分析論文

          ある論文を読んで,衝撃を受けたことがあります。それは2013年のKimらの論文です。 Kim, J. S., & Quinn, D. M. (2013). The Effects of Summer Reading on Low-Income Children's Literacy Achievement From Kindergarten to Grade 8: A Meta-Analysis of Classroom and Home Interventions. Re

          【Kim13】(1) 読書介入のメタ分析論文

          【Kim06】(3) 介入研究の難しさよ

          前回の続きです。 介入研究の難しさよこの研究では,統制グループにも教師による指導を受けさせています。そのため,統制グループの児童の夏休みの過ごし方も,おそらくより読書活動が活発になる方向に変化したのでしょう。 実験グループと統制グループを比較する本研究のデザインから言えば,これは効果の検出を妨げるように働きます。 しかし著者のKimはそのことを承知の上で,上記の介入手続きだけが異なる介入研究を行ったのです。そのほうが,結果の解釈が明瞭になるからです。 指導も全く行わず

          【Kim06】(3) 介入研究の難しさよ

          【Kim06】(2) 読書介入は文章理解力を高めるか判然とせず,そもそも読書介入で読書行動が十分に変化していない……

          ふぅ,しばらく【国語世論24】の割り込み記事が続いてしまいましたが,元に戻りましょう。前回の続きです。 【Kim06】論文では,実験グループにも統制グループにも「黙読時の理解方略の指導」と「ペア読み」の指導を学期中に行い,加えて,実験グループの生徒だけは,夏休み中に上記の指導を実践するための環境づくりが行われた,ということでしたね。 実験グループと統制グループの違いがここだけなので,これで事後テストの成績が実験グループ>統制グループとなっていれば,読書介入によって成績が高

          【Kim06】(2) 読書介入は文章理解力を高めるか判然とせず,そもそも読書介入で読書行動が十分に変化していない……

          【国語世論24】(5) 読書はまだ価値が認められていて,書店での購入多し

          前回の続きです。 さて不読率の話もだいたい片付いたので,他のデータもみてましょう。 なぜ読書が減っているのか,その理由この前段階で という質問があり,「減っている」が69.1%でした。これはそれほど驚きません。 興味深いのは,「減っている」と回答した人に,以下のように追加質問していることです。 その結果が以下です。 2つの意味で興味深かったです。 1つは,第一位が「情報機器(携帯電話,スマートフォン等)で時間が取られる」(43.6%) だったということ。おそらく

          【国語世論24】(5) 読書はまだ価値が認められていて,書店での購入多し

          【国語世論24】(4) 年代別の不読率。書籍で差がなく,他はU字。

          前回の続きです。 「文字・活字による情報に触れる時間」はむしろ増えている問11では,こんな質問もしています。 その結果は, となっており, ◎減っている 26.0% ◎それほど変わっていない 37.3% ◎増えている 35.3% となっています。 つまり前回の議論に付け加えるならば,「何らかのまとまった文字を本当に読んでいない,という意味での不読率はわずか6.5%だし,今後ももっと減ることが見込まれる」ということになるわけです。 年代別各種不読率さて,不読率の話

          【国語世論24】(4) 年代別の不読率。書籍で差がなく,他はU字。

          【国語世論24】(3) 「読まない」の捉え方によって,不読率は20.6%や6.5%にもなり得る

          前回の続き。 痒い所に手が届く質問さて前回,不読率が62.6%であるが,高いかどうかは分からないな,という話をしました。この不読率の高さの一因は,「雑誌・漫画」を本から除外するという「本」の定義の狭さにもあります。 そこで「『雑誌・漫画』を入れたらどうなるのだろう?」という疑問が出てくるわけですが,これにもきっちり答える質問項目が含まれています。以下は電子書籍の利用についての質問ですが,ここから電子書籍に「雑誌・漫画」を含めています。 問9までは電子書籍には「雑誌・漫画

          【国語世論24】(3) 「読まない」の捉え方によって,不読率は20.6%や6.5%にもなり得る

          【国語世論24】(2) 不読率62.6%が高いかどうかは……「分からない」

          前回の続き。 月に何冊本を読むか,という質問に対して「読まない」の割合である不読率が62.6%であり,確かにちょっと高いなぁ,という話でした。 ちなみに,書き忘れましたが,「国語に関する世論調査」では,読書についての質問項目が毎年あるわけではありません。前回は平成30年(2019年)に問われた模様です。また,尋ねている読書冊数であり,読書時間などは尋ねていません。 過去に比べて不読率が高まったかどうかは「分からない」さて62.6%は猪原の感覚からすると「確かにちょっと高

          【国語世論24】(2) 不読率62.6%が高いかどうかは……「分からない」

          【国語世論24】(1) 調査設計者の視点でみると「国語に関する世論調査」のセンスが光って見えた

          *【Kim06】記事を始めたばかりですが,割り込みでこちらの記事をアップロードします。 「国語に関する世論調査」は,平成7(1995)年度から文化庁が毎年実施しているものです。 昨日(9/17),最新版の令和5(2024)年度「国語に関する世論調査」の報告書が出たので,さっそく読んでみました。 調査の概要概要は以下の通りです。 ◎調査時期:令和6年1~3月 ◎調査方法:郵送法 ◎調査対象:全国16歳以上の6000人に郵送し,3559人(59.3%)から回答を得た 調査

          【国語世論24】(1) 調査設計者の視点でみると「国語に関する世論調査」のセンスが光って見えた

          【Kim06】(1) 読書を用いた言語力への介入研究。その典型例

          このnoteでは,私の専門である読書や言語力(語彙力や文章理解力のこと)についての本や論文を紹介していくつもりです。 なるべく新しい論文を紹介していくつもりなのですが,それらの最新論文の前提となるような過去の論文についても紹介しておくことで,「ここで紹介した論文のような方法を,この最新論文でも使っているよ」といったように説明が省けるのではないかと思います。 そこで今回は,近々紹介する予定の論文で引用されている,2006年にKimが報告した論文についてご紹介します。 Ki

          【Kim06】(1) 読書を用いた言語力への介入研究。その典型例

          本日からnoteを始めます

          色々と思うところがあり,noteでブログを始めます。 (noteはブログなのでしょうか?良く分かりませんが……。) 内容は限定しませんが,猪原が提供できる価値ある情報となると,研究関連,心理学関連のものになってくると思います。学会開催や,大規模調査結果の公開など,時事の話題にもなるべく対応出来たらいいなと思っています。 誰もが興味のあることではないが,誰かは興味のある内容にしたいです。 方針としては以下です。 ++++++++++ ◎毎日更新(朝7:00に投稿する予

          本日からnoteを始めます