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児童書のススメ②

しばらくぶりに書いております。
予告通り、娘がマイコプラズマになってから潜伏期間を経て主人、そして私と息子にやって参りました。熱を出して寝ていたのですが、少し楽になった時にある本を手に取りました。それはずっと昔から家にあり、実家からも一緒に連れてきてもまだ読まずに本棚にありました。そしてずっと気になっていましたし、読まなければという謎の強迫観念もありました。

なんで読まなければと思っていたかというと、その本の題名に聞き覚えがあったからでした。小学3年生の時の目力の強い、いつもポニーテールをしていた担任の先生がくれる学級新聞というかお便りの名前がその題名だったのです。ということは結構その先生のことが好きだったんでしょうね。

さてその本はというと、ご存知の方も多いと思うのですが、エーリッヒ・ケストナーの児童文学『飛ぶ教室』です。私が読んだのは、岩波書店のケストナー少年文学全集4『飛ぶ教室』で高橋健二訳です。出版社によっても時代によっても訳す人が違うかもしれません。同じものであっても訳す人によってニュアンスが違うであろうし、そこから受ける印象は大きく異なるかもしれないので詳しく書いてみました。


父も母も編集者で、特に母は本なら買って良いという方針の本の虫でした。本人自体もその娘二人も買ったまま読んでない本があるという情けない癖を持っています。私の子供たちに伝染してなくて良かった。。。。なので、私と姉もまだまだ読みきれていない岩波少年文庫がずらーっとあります。

そしてその本を恥ずかしながら、夫との賭けで読み始めました。全部読み切ったら100万あげるというのです。「ふざけたことを言ってくれるわ!」と言ってから7年立ちましたが、残念ながらまだ達成には及びません。一概に岩波少年文庫と言っても全部が同じクオリティーで面白いわけではないとだけ言っておきます。それは原作自体の問題なのか、訳の問題なのかは分かりません。それでも、その読書は私に幾冊かのかけがえのない本との出会いをくれました。

私が思うかけがえのない本とは読み終えるのが本当に寂しくなってしまう本か、もしくはあっという間にラストまで駆け抜けて終わってしまう本。どちらも読んだ後に胸が高鳴って本を抱きしめたくなって目頭が熱くなるような本です。

そしてその本が1冊増えたのです。

調べたところ、こちらは同じ岩波書店でもハードカバーの全集なので文庫と訳している人が違いました。イラストはケストナーとずっとタッグを組んできたイラストレーターのヴァルター・トリアーのものでどちらも一緒です。

大体の本に言えることですけど、読み始めは少し我慢が必要です。とにかく『飛ぶ教室』は「まえがき」が長いのですが、ケストナーさんは完全にそれを開き直っています、でもなかなかの退屈な?部分を読んでいると、このケストナーさんのことが少しずつ好きになります。とても暖かい人で本の登場人物のように(実際に前書きとして登場しているのですが)愛すべき人なのです。だからどうぞ「まえがき」を読み飛ばさないでください。重要なことも書かれていますから。

街のキラキラ灯りが玉ボケになっています。

この本を読んで思ったことは、今、娘に読んで欲しいと思いました。少年少女の時代に読んで欲しいと思いました。そして大人も読んでほしい。私は小学生や中学生時代が決して好きではありませんでした、でもその苦いような日々の中にも感じることの出来た美しさや喜びが懐かしく蘇る気がしました。自分の幼い時の記憶が楽しいものだけじゃないと思っている私だけがこの本に共感するのではなく、誰しもが自分の少年少女時代を感じられるものだと思うし、また今を生きている子供達にも届いてくれるような気持ちがしました。

私には本に出てくるような友情や友人がいただろうか?その当時にはいなかったかもしれない、でも辛い時に声をかけてくれた子の名前や声を忘れてはいないし、その当時、私には尊敬できる先生がいて、父や祖母がいてくれた。そしてやがて、仲間に出会う時が来る。今の私には大切な人がたくさんいて感謝することがいっぱいあります。

エーリヒ・ケストナーはドイツ人で、この『飛ぶ教室』を出版した当時は信じられないことにナチスの支配下にありました。自由主義であったケストナーの本は出版が許されておらず政権下には焚書もされたようですが、あまりに人気の作家であったため、児童文学作品だけは出版を許されていたそうです。

ケストナーの児童文学を読んで育った子供達が戦後のドイツを今あるドイツへと変えていったのかもしれないと思うと感慨深いです。ドイツ人の友人が私にもいて、以前訪ねて行ったことがありますが、彼とは気も合うしなんというか気を張らずにいられました。街並みや食べ物、生活を見ても、もし外国に住むならドイツが良いなと思うくらい好きな国です。

ちなみに、読んで初めて知ったのですが、このお話はクリスマスのお話でした。とても意外でしたが、『飛ぶ教室』を読んだ今年のクリスマスは家族と厳かに幸せな気持ちで過ごしたいなと心から思えました。昨日今日と冷え込みがキツイ。布団にくるまって寝ましょう。

それと、「あとがき」も必ず読んでくださいね。

<<見出しの写真>>
寒い寒い季節は苦手ですが、空気が澄んで街灯の灯りが煌めくのはとても綺麗ですよね。何年か前に夜の街を歩いて帰りながら撮った写真です。2枚目の写真では娘に真上の電灯を見てもらってライティング代わり。寒いけどキラキラの街とキラキラの笑顔(親バカ)

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