見出し画像

100日後にデビューする小説家【74日目】

デビュー作を書くための超「小説」教室 高橋源一郎著 河出書房新社

二日ほどお休みをいただいた。別に何をしていたという事は無いのだが、ただただ体調不良というものに見舞われていた。ぼんやりと天井を眺めながら、時間を無為に過ごした。その時、たまたま買っていた高橋源一郎氏の「デビュー作を書くための超「小説」教室」が郵便受けに入っていた。こちらは、以前紹介した「一億三千万人のための小説教室」よりも、一歩踏み込んで「新人賞をどう取るか」ということに焦点を当てた内容となっている。最初からこちらを買って読めば良かったのでは?と思われるかもしれないが、物事には順序というものがある。この本の構成としては、なるほど小説を書けるようになったけれども、どんな小説を書いたらどんな新人賞に応募するべきかということを丁寧に(また、高橋源一郎氏の選考委員としての経験も踏まえて)解説をされている本になる。私たち新人は、先ず「小説が書けるようになること」その先に「新人賞を取ってデビューすること」この地続きのお話がある。こんなことを書くのはとてもお恥ずかしい話だが、私は高橋源一郎氏の小説を読んだことが無い。学生時代に数多の作品を読んできたが、その中に彼の存在は無かった。しかしながら、私の師のひとりである髙橋至氏(集英社の文芸部門の編集者であった)はこの高橋源一郎氏のことをかなり高く評価されていたように思う。氏の書かれた新聞のコラムなどを、ゼミの中で扱うこともあった。(記憶違いだったら本当に申し訳ないのだが)
そして、この「デビュー作を書くための超「小説」教室」は「一億三千万人のための小説教室」とはまた違った切り口で、高橋源一郎氏の小説教室が展開されていく。印象としては、こちらの方がより抽象的で掴みどころがないような話が展開されている。ということは、やはり「一億三千万人のための小説教室」を読んでおいて正解だったという話になってくる。この本を単独で読んで「なるほど、新人賞はこうやって選ばれているのだな」と素直に考えてしまっては危険な本でもある。13年という歳月を経て、この書籍は再度「小説教室」を展開しているが、やはり高橋源一郎氏の書かれる文章は違和感なく、すっと頭に入ってくる。これは完全に私のイメージなのだが、この小説教室シリーズ2冊はとても嚙み砕いて書かれている。勿論、多少の含蓄や抽象的な表現などは登場するが、それ以上に「新人賞に求められているもの」の核となる部分を、余すことなく表現されている。これほどまでに、新人小説家に寄り添った本も珍しいだろう。それだけ、氏が新しい小説家に期待をしているということでもある。私たちはそのバトンを確かに受け取り、後世に伝えていかなければならない。
さて、書評というか、そういうものを書くと、割と生き生きした文章を書くなと思われた方もいるのではないだろうか。もともと、こうやって読んだ本に関して話をするのは好きな質なのである。じゃあ、文学評論などを書けば良いのにと思われるかもしれないが、私にはそこまで一人の作家を読み続ける程の集中力もあるわけではない。浮気性なのである。浮気性な人間が行きつく先はやはり小説ということになる。楽しく書いて、楽しく新人賞を取る。このコンセプトはブラさずにやっていきたい。もう気づけば74日目。終わりは近い。

いいなと思ったら応援しよう!