【思い出ごはんレポート】扇谷さんと平田さんのあま御膳
酸いも甘いも、たくさんこの島で味わってきた。
お皿に入りきらないくらいの思い出と感謝を、
次の世代にも伝えていければ。
「ご飯はもちろん、海士のお米。
サツマイモは、新しく役場に来たIターン(移住者)のご家族と一緒に掘ったのよ。
せっかくこの島に来たのなら、島らしいことせんとね。」
そう語るのは、今回のシェフのお一人、扇谷さん。
町の議員さんを長年務められる、島で知らない人はほとんどいないであろう『島のお母さん』的存在です。
「こじょうゆ味噌は、昔はみんな糀(はな)を立てるところから、わがとこ(それぞれの家庭)でやってたのよ。
今はもう、なかなかやる人はいないね。」
うちはいつも、水飴を入れるのよ。
うちは、酒とみりんで味付け。
もうお一方のシェフ、平田さんも加わり、調味料の作り方に保存の仕方に、話に花が咲きます。
かき揚げには、必ずイカを入れて。
糸もずくとイカは、冷凍しておけば1年中いつでも食べられる。
最近ビニールハウス栽培が始まって、胡瓜は地のものが1年中食べられるようになった。
柿は、庭の木からとってきたもの。
うちの子はわがとこのこじょうゆ味噌の味で育っていて、帰ってくると、いつもこしょみそ*を作ってって言う。
*こしょみそ…こじょうゆ味噌を使ったナスやネギの炒めもの
そんなお料理にまつわるエピソードを聞いていると、地元の方たちがコーヒーで一服しにご来店。
もちろん、お互い顔見知りです。
ふと、出世魚のヤズの呼び方の話題になり、地元の方も巻き込んで話がはずみます。
「ヤズ、ハマチ、マルゴ、ブリだね。ツバスと呼ぶところもあるけれど。」
「ここらでは8kgはないと、ブリとは言えんわ!」
みなさん、魚にはちょっとしたこだわりがあるようです。
***
なじみのお客さんたちを見送ったあとは、お茶を淹れてほっと一息。
『あま御膳』でふるまったお料理はどれも、島の四季とともに暮らす人達の食卓を彩ってきた、昔から伝わる郷土料理です。
(参考:あまごはん )
その味や作り方を、今の若い世代や、Iターンの人たちにも伝えていきたいというお二人。
思い出を紐解いていくとそこには、消費という点で終わることなく、自然と人とのつながりの中で生まれ、受け継がれてきた数々の営みがありました。
小さい頃は、日頃の魚のお礼にお歳暮代わりのお餅やあずきを親戚に届けるのが、年末仕事の一つだったとのこと。
年越しそばも菜種油も芋も、かつてはわがとこで作っていました。
どの家にも大抵は杵や臼があり、家ごとにお餅をついて、煮しめをしたらお正月。
1年中、季節の移り変わりに応じた仕事があって、この日になれば海苔つみ、この日になればわかめ狩り。
イカがたくさんとれる日は、学校を休んだことも。
「当時は島外の高校も大学も、なかなか行ける人がいなくてね。
130人くらい同級生がいて、5人くらいだったかな。
私は被服科のある家政高校に行きたくて、親に「島外の高校に行きたい!」って言ったら、「イカがいっぱい取れたらね。」なんて言われたりして。」
実家を出て嫁いでからも、姑さんや舅さんから、調理の仕方やこの島で暮らしていくための仕事を、たくさん教えてもらったそう。
「つらいこともあったけれど、言うだけじゃなくて、一緒にやって教えてくれて。
そのおかげで、こうして今の自分があるからね。
笑顔で一生懸命やっていたら、私のいないところでも
「こんなに働き者の嫁はいない」って、褒めてくれていたみたいでね…」
思い出話は、あとからあとから、尽きることがありません。
これからも手渡し、受け取る人がいる限り、
想いは受け継がれ、新しい思い出を紡いでいくのでしょう。
島の恵みと人の営みがぎゅっと詰まった『あま御膳』、
どうぞ召し上がれ!
Writing:島猫工房 Soneko
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