【友達って何だろう】『ブレイブ・ストーリー』宮部みゆき(角川書店)
運命を変えたい。 人生をやり直したい。
それが全てか? 本当は、どうしたらよかったんだろう。
ぶつかり合える出会いが、主人公を変える。
おすすめ度・読者対象・要点
おすすめ度:★★★★★
読みやすさ:★★★★☆
読者対象は小4・5~ 高校生以上ももちろん良い。
主人公の亘は小学5年生。
普通の生活を送っていたけれど、突然家族がバラバラになってしまう。
家族を、元の暮らしを取り戻したい一心で、運命を変える扉があるとされる廃ビルへ!
扉から異世界へ移った亘は、どんな願いでも叶えてくれる塔を目指し、旅をすることになる。
読みやすさは、上・中・下(単行本では上・下)となることや、導入の長さから、一つ星を下げたが、物語に無駄は一ミリも感じないのでデメリットではない。
好きなポイントと注意点
分かりやすく言えば異世界ファンタジー。
運命を変えるための冒険物語。
でも私が思う一番は、本当の友達に気づかされるところなのではないかと思っている。
運命を変えようとする道中で、亘は、大切なことに気づいていく。
その大切なことが、運命を変えることより、何よりも大事なのだと読者も気づくのではないだろうか。
ブレイブ・ストーリー。勇気の物語。
人にぶつかる、本音をぶつける。それは、勇気が要ることなのだ。
ちなみに、アニメの主題歌は「決意の朝に」。
そこからも、一文を切り抜きたい。
ちなみに、宮部さんの描くファンタジーはいい。
宮部さん自身、ゲームが好きだということもあり、なんとゲームのノベライズも担当するほど通である。
効果音に頼らないファンタジー小説の良さも体感できるだろう。
注意点があるとすれば、日常パートである序章が長い。
この長さがあるからこそ、よりわが身に置き換えて小説を楽しめるのだが、昨今の異世界ファンタジーと比較すれば、スローに感じて手が止まるかもしれない。そこが注意点だ。
でも、日常が崩れる前段には”日常”が描かれるべきではなかろうか?
耐えられない長さではない!読みやすいので頑張ってほしい。
余談
ブレイブ・ストーリーは、さまざまなことがテーマになっている。
当時の社会事情もあるのかもしれないが、いまにも通じるような複雑な家庭事情、それに巻き込まれる子ども、いじめ、そして正義。
勧善懲悪はストーリーとして分かりやすく、受け入れられやすい。
幼い子供には導入にはかならず善悪がはっきりして、悪が裁かれる話でないと物語を楽しめないといわれる。人間の本能がそうできているのかもしれない。
ただし、この物語を楽しめるひとなら、それ以上の話にぜひ触れてほしい。
善悪というのはいろんな物語、エッセイ、なんにでも取り上げられるが、すべてが白か黒か、というのはないのだ。
だから、人は話し合い、寄り添いあい、互いを認め合って生きている。
悪人にも悪人になってしまった過去や原因がある、ということではないのだ。
それを悪とする、というのが、今の立場が正義、としている意思なのだ。
賢い目線で見るならば、書くテーマが多く読書感想文にもうってつけといえるかもしれない。
初めて歌詞を引用するという、くさいことをしました。
でも、よかったら本を読んだ後に、この楽曲も聞いてみてほしいと思う。
ぐんと背中を押してくれること請け合いだ。