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コトノハ0009:明治34年のパッション

やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君

これは歌人である与謝野晶子の明治34年に刊行された初の歌集『みだれ髪』に掲載された歌です。

すごい歌です。

「やわ肌」は、やわらかい感触の肌の事なので女性の肌を連想させますね。
「あつき血汐」の血汐は体の中を潮のようにながれる血。それが熱いのですから、興奮しているというか情熱的な感じ。
「道を説く」は人の道を教えるみたいな意味なのですが、道学者という言葉があって、常識や道理を重視しすぎて世情に暗かったり人情がわからないという批判的な意味で使われることがあって、ここはたぶんそれ。
「君」はやわ肌に対応しているので、ここでは男性。

私の現代語訳としてはこんな感じ
女性の熱い思いを受け止めず、二人で過ごすすばらしい時を知りもしないで、真理だとか道徳とか偉そうに語ってるあなたはバカじゃないの

明治という時代は「女性は家に居て慎ましやかに暮らせばいい」「求愛は男性がするもので、女性がするのはふしだら」なんて考え方が普通だったはずで、その時代にこんな恋愛至上主義みたいな情熱的な歌を詠んだんだから与謝野晶子という人はすごい人ですよね。

ちなみに晶子は奥さんがいた与謝野鉄幹と略奪婚しているので、これが結婚する前の鉄幹へのラブレターだとするとこんな感じかも
「既婚者だからという常識に縛られて、わたしの熱い思いに応えてくれないの? そんな自分の愛に正直になれない人生なんて、寂しすぎない?」

#contents_jp #ことば #名言

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