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需要は分解して考えろ - マーケティング活動で超重要な「需要の本質」 -

こんにちは。株式会社Icraの鴻上です。

先日書いた「憑依論」についてnoteにたくさんの方から「スキ」をいただきました。ありがとうございます!
(もっと♡押してください)

自分の脳ではなく「相手の脳」で物事を見る重要性について書いたわけですが、実際のところ100%他者に憑依するということはめちゃくちゃ難しいです。
(というかほぼ無理です)

なのでマーケティング活動をする上では、少なくとも購買行動に直接影響する「需要」についてだけは「何を考えてるか同じようにわかる」くらい憑依しようとするのがいいと思っています。

今日はその、マーケティングで超重要な「需要」について自分の考えをまとめてみます。
(あくまで個人的な考察なので、ツッコミどころも多いかと思いますがご了承ください)


需要の定義 - 「需要」とは何か?


まずは「需要とは何か?」という定義から。
今は「需要」という概念を以下の定義で捉えています。

【需要の定義】
需要とは、商品(プロダクト・サービス)に対する欲求である。

ちなみに「欲求=何かを求めること」だと考えているので、
「欲求>需要」で
「欲求を満たす手段としての解決策(商品)に対する欲求」というイメージです。

人が何かを購入するという行動は「需要」と「供給」のマッチングであり、「需要」というのはマーケティング活動において理解を深めるべき1つのセンターピンです。

ただ「需要」という概念だけではまだ取り扱いが難しく、掴みづらい感じがするので、これを分解して捉えてみましょう。

需要の構成要素 - 需要=根本欲求+パラメータ


需要の分解をする前に、人が購買行動をするときの具体的なプロセスを考えてみます。

<ある日の昼ごはんの事例>

1、欲求が生まれる
 「お腹減ったなぁ」という欲求が生まれる。

2、判断基準を考える
 欲求を満たすために「何を食べるか」に対する判断基準を考える。

3、解決策の案を出す
 欲求を満たすための解決策の案を出す。

4、解決策を選択する
 解決策の案の中から一番いいと思われるものを選択し、購買行動をとる。

衝動買いのようにこれらが順番通りに行われないこともありますし、
コモディティ商品などの場合は意識的に思考されないこともありますが、
購買行動においてこの4つのステップが存在していると考えます。

このプロセスにおいて、「起点となる欲求」と「解決策に対する判断基準」の2つが合わさったものを「需要」と表現できるのではないでしょうか。

ここで需要を以下のように定義してみます。

【需要の定義2】
需要とは、「根本欲求+パラメータ」である。

補足)
根本欲求=「購買行動の起点となる欲求」
パラメータ=「根本欲求を満たす解決策の判断基準」

なんか使いやすそうになりましたね。

実際こう分解して考えると結構便利で、

例えば、パーソナルジムは「痩せたい」という普遍的な根本欲求に対して「誰かか⁨⁩らの強制力がある」という新しいパラメータを狙ったことで新しい市場が生まれたんだな、とか

スタバに行く時ってそもそもの根本欲求が「コーヒー飲みたい」じゃなくて「買い物中に休憩したい」「家以外の場所で仕事したい」とかだな、とか

いろいろと考察できるようになります。

「誰かから強制力がある方法がいいな」という新しいパラメータに気づけたのがパーソナルジム


需要の発生 - 「需要」はどのように生まれるのか?


需要が「根本欲求」と「パラメータ」に分解できるとしたら、マーケターとしては今の生活者が「どんな根本欲求を持っているのか?」「どんなパラメータを持っているのか?」が重要ですよね。

そこを理解するために、「根本欲求」「パラメータ」がどのように生まれるのかも考察してみます。

1、「根本欲求」は、知覚から生まれる。

まず「根本欲求」ですが、これは知覚から生まれるのではないかと考えています。

わかりやすいのは「お腹減った」「眠たい」「痛みをなくしたい」などの生理的な欲求です。

これは体の臓器などの変化を知覚することで生まれています。

それ以外の根本欲求は、外部情報の知覚から生まれています。

例えば、誰かがかっこいいガジェットを使っているのを見て「自分もあんなの欲しいな」とか、
友達が投資で稼いでいるというのを聞いて「俺も投資やろうかな」とかみたいな感じですね。

後者については、同じ情報を知覚しても欲求が発生する場合と発生しない場合があります。

これは前回書いた「憑依論」の中で書いた記憶(データベース)の違いから発生しているところが多いと考えています。

2-1、「パラメータ」は、記憶(経験・知識・価値観)から生まれる

次に「パラメータ」ですが、こちらは2つのパターンがあると考えています。

1つは、「根本欲求」が発生した段階タイミングで思考されるパターンです。

これは過去の経験や持っている知識、それらから生まれている個人の価値観によって瞬間的に思考されます。

2-2,「パラメータ」は新たな経験・知識により付加され、変化する

もう1つは、新しい経験をしたり新しい知識を得ることで、パラメータが加わったり変化する場合があります。

例えば、私が家を買う時の話です。

「家を買いたいな」という根本欲求が生まれた瞬間に、
「買うなら3LDKはいるよな」
「治安がいい地域がいいな」
「スーパーとかが近いところがいいな」
みたいなパラメータがまず思考されました。

その後、具体的に購入に向けて不動産会社の方と話している中で「洪水の時に被害がないように、ハザードマップはちゃんと見たほうがいいですよ」と言われ、

それによって「ハザードマップ上危険区域じゃないところ」という新しいパラメータが加わりました。

ここで重要なことは、「相手の記憶(データベース)を理解した上で、新しい情報を知覚させることで、意図的に需要(根本欲求とパラメータ)を作り出すことも可能」という点です。

マーケターに倫理観が求められるのはまさにこの点だと思います。

需要の変化 - 同じ人でも需要は変化していく


パラメータが経験・知識によって新しく付加されていくということは、同じ人間であっても需要は変化していくということです。

需要は点ではなく線(文脈)で捉えようとする視点を持つのがいいと思っています。

例えば、私の「投資でお金を増やしたい」という根本欲求から、これまでどんな風に需要が変化していったのかを見てみます。

経験:
・新卒入社した会社で「持株会」に加入した結果、貯金より金額が増える(「伸びる個別株買えばめっちゃ儲かるじゃん」という価値観になる)

需要:
(根本欲求)「投資でお金を増やしたい」+(パラメータ)「他に伸びそうな個別株を買いたい」


経験:
・ZOZO SUITS発売の情報を聞いてZOZOの株を買った結果、株価が下がって大損(「個別株は素人が手を出してはダメだ」という価値観になる)
・ビットコインの価値が伸びているという情報を聞く

需要:
(根本欲求)「投資でお金を増やしたい」+(パラメータ)「仮想通貨で大儲けしたい」


経験:
・ビットコインを買った結果、価値が下がって大損(「値動きが激しいのは自分に向いてないかも」という価値観になる)
・「投資素人でもインデックス型ファンドへの投資信託なら安定して伸ばせる」という情報を聞く

需要:
(根本欲求)「投資でお金を増やしたい」+(パラメータ)「安定して高確率で資産を増やせる方法がいい」「長期でインデックス投資でじっくり増やせればいい」

金融リテラシーの低さがバレてしまいますが笑、経験から加わる新しいパラメータによって需要が変化することが理解いただけたでしょうか。

ある欲求に対する自分の需要の変化を考えてみてください

この話からマーケターが考えなくてはいけないことは、
「今生活者がどんな経験をして、それによって今後どんなパラメータが新たに生まれうるのか」です。
市場を観察し、自分自身が最先端の需要に触れて購買経験をする中で新しいインサイト(洞察)を得てマーケティングに活かすことが求められると思います。

まとめ


  • 需要とは、商品(プロダクト・サービス)に対する欲求である。

  • 需要は「根本欲求」と「パラメータ」に分解できる。

  • 根本欲求は知覚から生まれる。

  • パラメータは記憶から生まれ、新たな経験・知識により付加される。

  • 同じ人間でも経験・知識によって需要は変化していく。

今回の重要なポイントはこんなところでしょうか。

ぜひ、
自分が何かを購入した時に
・どんな根本欲求・パラメータがあったのか?
・それはどのようにして生まれたのか?

について分析してみたり、

他社のマーケティング事例について考えるときに
・どんな根本欲求・パラメータを狙っているのか?
・そのためにどんな表現を生み出し知覚させているのか?

と分析してみてください。

そうするとより需要に対する解像度が上がっていくと思います。

弊社で実際のマーケティング戦略を考える上では、この概念をオリジナルの戦略フレームワークに落として活用しています。

その内容についてはマーケティング教育カリキュラム「MARKETING OS BOOTCAMP」でお話ししていて、具体的なワークを通して使えるレベルにインストールしていただけるので、もし興味があればぜひお問い合わせください!

需要について理解を深めて「売れる戦略」を作れる状態を目指します

また、
「自社の事業が伸びなくて困っている」という事業者の方。
もしかしたら「狙う需要が間違っている」かもしれません。

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