吾輩は童貞である。魔法使いになる気はまだ無い。⑧恋活パーティー編その2
前回の記事
上記は今回の記事の直接の続きになるので、ぜひ読んでみてほしい。
これは魔法使い化の未来に抗う、アラサー童貞の記録である。
筆者スペック
身長:160代後半
体型:やや細め
学歴:私立文系
職業:税金関係
趣味:映画鑑賞(ハリウッドからクソ映画まで)
泣きそうなこと:職場で童貞煽りしてきた女の送別会の幹事を任された
恋活パーティーレポート③初お茶の章
恋活パーティー会場のあるビルから出て、俺とマッチングしたポメラニアン(24、実家でポメラニアンを飼っている研究職)と、近場のカフェでお茶することに。
別記事にして引っ張った割には、大層な内容はない。
複数の初対面の異性と出会いの場で話すというのは気力も体力も持っていかれる。過去に言及したように、こういうものは苦手ではないのだが、やはり苦痛ではあったのだ。
二人して精魂尽き果てており、お互いの話した内容を大体頭から飛ばしていたため、復習みたいになってしまったのは少し可笑しかった。
彼女は、俺とは異なりこういう催しには何度か参加しているらしい。しかし、マッチしなかった男に付き纏われたり、マッチした男が他所で女を作ったため交際前に振られるなど、あまり良い目には遭っていないようだ。
今回も他の男がめちゃめちゃ身体を寄せてきて怖かったんだとか。
「俺はそんなことしないけどね」なんて、言ったところで意味はない。
「そっか~、大変だったんですね…」という、無難なコメントに留める。
話の流れが断たれてしまった。
静かな雰囲気のカフェに入ってしまったため、周りのガヤガヤが無さ過ぎて少し気まずい。間を保たせる術を持たない童貞の俺は、誤魔化すかのようにコーヒーカップに口をつける。そして、
俺「ところで、誰を第一希望に?」←こんなこと聞かなくていい!!
ポ「ケツアナゴ(筆者)さんが第一希望ですよ」←そう答えるしかない!!
足りない頭を振り絞っても何も出てこなかった俺は、未だ終わっている自己評価の払拭のためにポメラニアンを巻き込んでしまったのだ。
口にしてから「こんな会話に何の意味があるんだ…」と自己嫌悪に苛まれる始末。そこで、映画RRR(インド映画)が死ぬほど好きという切り札を思い出した。
俺「そういえば、アレまだ上映してるらしいですよ」
ポ「すごいロングランですね~、私もう一回観に行きたいくらいですよ」
俺「観たのは字幕版ですか?」
ポ「はい」
俺「……吹き替え版観に行きませんか?」
…
……
………
ポ「はい!誘ってくれて嬉しいです!是非行きましょう!」
脳内のジェイク「お前はマチアプで出会えるか?街コンで捕まえられるか?お前のような野蛮な童貞に恋人ができるものか!」
脳内のラーマ「マチアプでも、街コンでもない。恋活パーティーをご存じか?」
そして踊り出す脳内の俺「ポランガットゥドゥンムロナポットラギッタ ドゥーキナットゥポレランマ ジャタラーロポタラージュ ウーギナットゥキルセップル エスコニカッラサム セスィァナットゥマッリセットゥ ニーダロナクッラグンプ クーディナットゥエッラジョンナ ロッテロナミラガパトック カリピナットゥナー パータ スードゥナー パータ スードゥナー パータ スードゥ」
ナートゥ ナートゥ
恋活パーティーレポート④初デートの章
翌週。
少し早めに待ち合わせ場所に着弾した俺は、溜め込んだ息を吐きだした。
緊張は解けない。
この日のために有料会員となり、無料会員の有象無象よりも一足早く予約画面に入り、ど真ん中、一番良い席を予約した。
鑑賞後の感想戦のためにも、雰囲気の良い飲み屋は抑えてある。
隙は無い。そこにあるのはド緊張した童貞だけだ。
ポ「お待たせしました!」
しばらくして、ポメラニアンが待ち合わせ場所に現れた。
俺「こんにちは!今日も良い感じですね!」
この時点で俺の命運は決まっていたような気がする。
お互いに好きなことが分かりきっている映画を観る。映画デートにおいて、これほど安心できることはない。俺たちは特に滞りなく映画鑑賞を楽しみ、「やっぱりめちゃくちゃ面白かったですね~!!」「吹き替えも味があっていいですね~!!」と会話に花を咲かせた。
恋活パーティーレポート⑤初ディナーの章
異国情緒のあるお洒落な居酒屋で感想戦。
恋活パーティーとカフェでは表層的な話しかしなかった。
ひとしきり感想戦をしたのち、酒も入った俺たちは、お互いに少し踏み込んだ話をする。
好みの異性の話。過去の恋愛遍歴。プライベート。仕事の話。
ポ「そういえば、最近仕事でこんなことがあって~、社長が~上司が~うんたらかんたら」
くどくどくどくどくどくどくどくど。
小さな違和感。
ポ「ケツアナゴさんは何か無いんですか?仕事の悩みとか」
──今俺たちはそういう話をする間柄か?
これは諸説あるだろうが、よほど親しい仲でない限り、仕事の愚痴をこぼすのは悪手だと思う。普通はどうあがいても面白くならないからだ。
俺「うーん、そんなに無いかも。あるにはあるんですけど、ほとんど自分の経験が浅いから起こってるトラブルだし。飯食って風呂入って寝れば大体忘れますかね。まあ、日々修行だなって」
ポ「そうなんですねえ、私は…」
心の外側に突き刺さった小さな針を、俺は抜こうとしなかった。
──俺はこの子と付き合って、抱くのだ。愛のある営みをするのだ。散々人を選びに選んで、それでも今までの収穫は何もなかったではないか。機会は最大化すべきなんだ。そもそも俺は女を選り好みできるほど大層な人間か?仕事は大変だろうから愚痴の一つくらいこぼしたくなるだろう。こんなことでナシ判定をするのは器が小さすぎやしないか。むしろ俺を信頼して愚痴ってくれているのではないか。酒が入ったからこうなってるだけで、素面では大丈夫のはずだ。これは脈アリだ。男なら女の子の愚痴くらい笑って聞いてやれよ。向こうは俺に慰めてもらいたいだけなんだよきっと。何より、今までかけたコストはどうなる?俺は絶対にこの子と付き合うんだ。
心の中の童貞の俺に言い聞かせる。
悲しいかな、童貞の俺は、それで言い負かされるほど童貞だったのだ。
そして、帰りがけ。
俺「よかったら、またお出かけしませんか?」
ポ「いいですよ!再来週なら空いてます!こういうところに行ってみたいなって!」
ほぼ二つ返事で約束を取り付けた俺は、針を抜かないまま帰路についた。
──まあ、完璧な人なんていないし。何か違和感があっても、そこは付き合ってから追々話し合っていけばいいんじゃないかな。
その思考自体は間違いではないと思う。正直童貞だから分からない。
ただ一つ、
分かっているのは、
俺に”再来週”は来なかったということだ。
改めて予定が大丈夫そうか確認したら、残り一週間の時点で死刑宣告が。
死刑宣告の日はというと、会社の用事で川でBBQをしていた。
渋々承諾した予定ではあったが、あれがなかったらマジで首吊ってたんじゃないかと思う。
何がいけなかったのか?
ポメラニアンとは同じ映画が好き。ただ、それだけだったのだ。
会話が盛り上がったかと言われれば、全然そんなことはなかったし、微妙な沈黙が流れれば、俺は張り付いたような笑顔でニコニコしているだけ。向こうが仕事の愚痴というカードを切ったのも、割と仕方なかった部分がある。それを心の奥底では許容できなかったというのもある。俺が具体的に何に目くじらを立てていたのか、彼女はそこまで読み取っていたとは思えないが、なんとなく、空気感というか、雰囲気でそこまで乗り切れていなかった感じを察知していたのではないだろうか?
それか、並行して男とやり取りしていて、その男の方が魅力的だったかだが、そこまで考えても詮無きことだ。
二週間後に会う予定を立てていた。それ以外は特に用事が無いから他愛のない電話さえもしなかった。LINEもだ。そこも問題だったのではなかろうか。
現在酔っぱらいながら執筆しているので支離滅裂になっていそうだが、まあ、何より本当に致命的なのは、相手を好きになろうとしていただけで、相手が好きなわけではなかったということだ。
だから「良い感じ」という、ひどく漠然的な誉め言葉しか出てこなかったのだ。本当に素敵だと思うなら、キレイだの可愛いだのの言葉は出てくるのではなかろうか。
自分に矢印が向いている希望が持てる女性だったから彼女にしようとしたというだけで、俺はポメラニアンそのものを求めていたわけではなかったのだ。
俺は取り繕うのが苦手だ。嘘をつくのも下手だ。
伝わっていたんだろう。深層で相手に興味がないことが。
だったら、そんな恋路が上手くいくわけがない。
「趣味が合う人と恋人になりたい!」とのたまう輩をよく観測するが、趣味が合うだけじゃ上手くいかない気がするぞ。
今だからこそ思うこと
当時の俺は荒れに荒れ、「俺のかけた時間と金を返してくれよ!!」などというどうしようもないほど情けない台詞を出力し、怒り狂いながら山奥で鮎を釣っていた。
まあ、冷静になった今だからこそ当時の俺に、そして、童貞の諸兄らに伝えたいのは…
・沈黙が続いたときにキョドってはいけない。むしろそれが自然であるかのように余裕を持って振る舞え
・どこかのタイミングでタメ語に切り替えた方がいい。ずっと敬語だと壁ができたままな気がする
・付き合う前から違和感があるような相手を無理に狙いに行かなくていい
・自分が選り好みできるほど大層な人間ではないと思うことは勝手だが、誰彼構わず捕まえて収穫を得ようとする必要もない
・せめて付き合うまでは連絡は絶やすな
・それまでかけたコストのことは考えるな。全てがお前の糧になると思え
そして、童貞は傷が癒えぬまま次なる戦場へ向かう。
これは魔法使い化の未来に抗う、アラサー童貞の記録である。