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2024年度「大転職時代」における人的資本経営のトレンドと対策「2番目の報酬」「CQマネジメント」「アルムナイ」「パフォーマンスマネジメント」

2024年度は「大転職時代」と称され、企業の人的資本経営における新たなトレンドと対策が必要不可欠となっています。

経済のグローバル化、テクノロジーの進化、労働市場の流動性の増加に伴い、従業員と企業の関係性は一変しました。

この新しい時代に適応するためには、企業は伝統的な経営戦略を見直し、2つめの報酬、CQ(文化的知性)・越境マネジメント、アルムナイ施策、パフォーマンスマネジメントといった分野におけるアプローチを取り入れる必要があるのではと考えてご紹介します。

人的資本経営のトレンドを深掘りし、企業が直面する課題に対して実践的な対策を提示しますが、組織の持続可能な成長と従業員の満足度向上を目指す企業にとって、これらのトピックは避けて通れない重要事項となるのではないでしょうか。

大転職時代に突入した日本

日本の労働力調査によると、就業者数は前年同月に比べて38万人増加し、17か月連続で増加しています。
完全失業者数は前年同月に比べて2万人減少し、完全失業率は2.4%となっています。

これらの統計は、労働市場の活性化と転職が増加している状況を示しており、競争力や魅力が薄い会社の採用難易度が上がっている可能性を示唆しています。

なので、「新しく人を採用する」こと以上に「今一緒に働いている人」といかに協働できるか、が例年以上にポイントとなりますが、そこから踏み込んで「この会社で働きたい」意欲を減退させない4つの取組みを下記にてご紹介します。

①2つめの報酬

世界的にインフレもあり、株価に引っ張られて賃金が上がっていますが、
実体経済が成長していない中、賃金向上できない企業は「感情報酬」の重要性が高まっています。

感情報酬は、仕事の成果や成就に対する物質的な報酬だけでなく、承認や評価といった精神的な満足感を与えることの重要性を指します。このような報酬は、従業員のモチベーションの向上、職場の満足度の向上、そして長期的な組織へのコミットメントを強化する効果があります。感情報酬は、人々が仕事での成果をより個人的な成果として感じられるようにし、全体としての職場環境を肯定的に変化させることができます。

感情報酬の事例としては、従業員の優れた業績に対する公式な表彰、定期的なフィードバックや労いの言葉、キャリア成長の機会の提供、ワークライフバランスを尊重した柔軟な勤務体系などが挙げられます。これらの取り組みは、従業員が職場での彼らの貢献が認められていると感じさせ、職場の士気と忠誠心を高める効果があります。

例えば、「ピアボーナス」がこの一端として取り上げられますが、「賃上げが会社の状況的に厳しい」会社にとって、この感情報酬をうまく扱えるか否かが会社の成長に大きく寄与します。

(事例紹介)
企業名:株式会社サイバーエージェント
従業員数:2,225 人
事業内容:メディア事、インターネット広告事業、ゲーム事業、投資育成事業

サイバーエージェントは感情報酬に着目して様々な施策を行い、様々な文化を醸成させて社員のエンゲージメントを向上させることに成功していたので、ご紹介させていただきます。

【背景】
・離職率が高かったので、感情報酬に着目しようと考えた。
・人事方針として「挑戦と安心はセット」ということを定め、すべての人事制度を縦軸に感情報酬と金銭報酬、横軸に挑戦と安心を置いた全4象限にマッピングするようにした。

【やったこと】
・女性活躍を推進するmacalon(マカロン)という制度の作成。
体調不良時に取得できる特別休暇、妊活に関する個別カウンセリング、キッズ休暇など、8つの制度をパッケージ化したもの
・ホテルの大宴会場を貸し切って行われるアカデミー賞の授賞式のような大掛かりな年2回の全体表彰
・「成果ミッション」という新評価制度の作成。
「成果ミッションは単純なジョブ型ではなく、何をジョブとし、どんな組織貢献を行うかを上司と部下が話し合って決める制度です。
ジョブ型を進めると、どうしてもI(私)が主語になってしまう事が多い。
そのため、『私は仲間に対して、こういう形で貢献したい』という熱量や温度感を大切にし、それをもとに組織貢献の中身をジョブとして考えるようにした制度。

【結果】
・育児出産後の復職率が100%近くになり、ママ社員の活躍が文化になった
・初期の頃の詰め文化が主だったが、褒め文化が主流になった
・「自分は〇〇がやりたいです」という「I」を主語とした会話ではなく、「自分はみんなのために〇〇がやりたいです」という「We」を主語とした会話がされるようになった


参考元↓
https://www.recruit-ms.co.jp/issue/case/0000001040/?fbclid=IwZXh0bgNhZW0CMTAAAR1l6M-VznDBuqYj8UPnJ3eKXXUfFxjU1AQflwJT9ToaO_w7SJPDd21dSYU_aem_AZZa1kOcqz-FHchLGSh207G5Zm9VJsy-JKPXDEKZTPSaYCNnWVe04R2MuzFK8x1agE_Xwwq37c_uoXqwxFBw1Zy7

この事例の参考になる点としては、「人事制度を縦軸に感情報酬と金銭報酬、横軸に挑戦と安心を置いた全4象限にマッピングして分析している」点にあります。
感情報酬に着目する意識ももちろんですが、そもそも現在の会社の施策が、従業員のどんな要望に応えるために行われているのか?を分析する事ができるので、ぜひ皆さんも参考にしてみてください。

②CQマネジメント

CQマネジメントは、異文化間でコミュニケーションを取り、関係構築するスキルを指します。
CQ(Cultural Intelligence Quotient/カルチャーインテリジェンス指数)は日本語に訳すと、「文化の知能指数」というような意味になります。

IQ(知能指数)やEQ(感情指数)と同様に、CQも指数として数字で測る事ができます。

近年では、外国のプロフェッショナル人材をエンジニアとして採用するなどして、外国との関わりが密接になっています。
また、転職が盛んになった事で、会社内で別の会社の文化がぶつかり合う事も増えました。

CQマネジメントは、①異文化に興味を持つ心(CQ Drive)、②異文化に対する知識(CQ Knowledge)、③異文化問題を乗り越える戦略を立てる力(CQ Strategy)、そして④異なる文化に対して適切に行動にする力(CQ Action)の4つの要素で構成されています。

※サポネットの下記リンクより引用
https://saponet.mynavi.jp/column/detail/tn_romu_t00_cultural-intelligence_220531.html

①異文化に興味を持つ心(CQ Drive)はその名の通り、自分と違う文化がどう違うのか?なぜ違うのか?を知ろうとする力です。日頃から自分と違う考えの人に興味を持つ事で能力がついていきます。

②異文化に対する知識(CQ Knowledge)は実際に異文化について持っている知識量のことです。「文化」とは氷山のようなものであり、目に前に現れているのはほんの一角に過ぎず、文化を完全に知るには、影響を与えている法律や政治、宗教、習慣、言語、教育、技術などの様々な体系を理解する必要があります。

③異文化問題を乗り越える戦略を立てる力(CQ Strategy)は、文化の違いによって問題が起きた際に、どのように解決するか戦略を考える力のことです。
文化に関わる問題は、繊細なためミスがないように考える必要があります。

④異なる文化に対して適切に行動する力(CQ Action)は上述した意欲、知識、戦略をもとに適切な行動をする力のことです。
相手の文化に合わせるだけでなく、場合によってはこちらの文化に合わせてもらうなど臨機応変な行動力と踏み込む力が重要になります。

CQマネジメントは、会得する事が難しい力ではあるものの、日本が海外からの訪日外国人が増えている現状や、日本から海外に出て行くにあたって必要な能力です。

また、それだけでなく、転職をした後結果を出すためには、異なるカルチャーにうまく対応する力他必要です。
さらに、転職が増える事で、会社に様々な文化や考えを持つ方が増え、文化が入り乱れる事が予想されます。
そのため、今のうちからCQマネジメント力を身につける事ができるように動いておくと良いでしょう。

(事例紹介)
企業名:アイディール・リーダーズ株式会社
従業員数:14名 (2023年3月31日現在)
事業内容:経営者や役員などのエグゼクティブ層に向けたコンサルティング、コーチング

味の素はCQマネジメントを通して、業績向上と離職防止に成功しているため、ご紹介させていただきます。

【背景】
・タイ人の従業員が報連相をせず、納期を守らなかった。
具体的には、「クレームや労働災害などのインシデントが発生した際に、現地の課長に『何か知っているよね』と聞いても、日本人と違って基本的には答えてくれない」と言う現状があった。

【やったこと】
・タイの方について、理解した上で、タイ人にとって適切なコミュニケーションをとるようにした。
具体的には、タイの方の価値観として、「最も幸せなことは、脳みそを使わないこと」だという事を知り、「クレームや労働災害などのインシデントが発生した際に、「給料を下げないし、あなたが不利益を被ることはないから、クレームの件について教えてください」と伝えるようにした。

​【結果】
その後、タイでの経験から、CQの重要性を痛感し、現在、所属するシンクタンクでは社員全員にCWQアセスメントを行い、施策やリーダーシップに活用中。

参考元↓
https://jinjibu.jp/hr-conference/report/r202311/report.php?sid=3390&fbclid=IwZXh0bgNhZW0CMTAAAR1uCjqlY-ea6a3mfHaFYiQ0sb3JdhNXoBP3EpVtvqwhaQqVq44GNHtxxSs_aem_AZZ11mReoyduqeCl1F9R7HsxNb5lJ-dB7bmTWJ6xom3dbT472E7C3_TPN5oNL2mc90TeZitKAJJjno3ikpGtxuUt

この事例の参考になる点としては、「報連相をせず、納期を守らない」という日本では、当たり前でない価値観であってもリサーチを行い、従業員を理解しようとした事にあります。
海外の人材でなくても、業界の違う方や前職の会社の規模によって仕事のやり方や価値観が違う事は多くあるので、従業員の前職などを調べてその従業員が大事にしているであろう価値観を理解してコミュニケーションをとる意識を持つと良いでしょう。

③アルムナイ

昨今、採用現場で「アルムナイ」と言う言葉を聞くことが増えてきたと思います。
アルムナイとは「離職者・退職者の集まり」を意味し、ビジネス上では退職した方を再度採用する事を指します。
アルムナイは海外や外資系企業で始まった採用方法ですが、近年では日本企業も着目している手法です。

アルムナイを活用するメリットは、少ない採用コストで即戦力人材を採用できることにあります。近年ダイレクトリクルーティングなどの手法も広まり、すぐに戦力化するような人材は多くの時間とお金をかけないと採用できない時代になってきました。
また、大幅なコストをかけて採用した人が前職では活躍していたものの、自社に入ったら上手く戦力化できなかったという事例も少なくありません。
アルムナイ採用の場合、以前自社にいた人なので能力やカルチャーのミスマッチもないですし、会社に慣れているのでオンボも早期に終わらせることができます。

アルムナイのやり方としては、イベントを開いたりホームページに記載する事で、アルムナイを行っている事を発信することが挙げられます。
また、本業としては転職した方が副業を探すことも増えているので、副業人材として活躍してもらいつつ、ご本人が転職したい際に候補に入れてもらえるよう囲っておくという手法もあります。

(事例紹介)
企業名:デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
従業員数:457,000
事業内容:監査・保証業務、リスクアドバイザリー、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、税務・法務の5つのビジネスとコーポレート機能から構成

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社(以下デロイトトーマツ)
はアルムナイ採用を通して、働きたいと思われる文化作りに成功していたので、ご紹介させていただきます。

【背景】
・デロイトトーマツは、社会・経済・産業のグローバル化やテクノロジーの発展によって、クライアントの経営課題が多様化・複雑化していく事を危惧していた。
・その頃のデロイトトーマツはグループの法人ごとに今よりも独立して動く事が多い状況だった。
・2015年にグループでの結束力を高める事が重要だと考え、「One firm」の旗印のもと、グループの結束力を高めより良い文化を作ることにした。

【やったこと】
・アルムナイ(卒業生・退職者・OG/OB)の方々向けに、卒業後の継続的なキャリア形成の支援
・定期的な情報提供としての『メルマガ発行』
・アルムナイの方向けのイベントの開催

【結果】
・アルムナイ関連のイベントで最大700名が集まるようになった
・会員数4500人のアルムナイネットワークが構築された
・OBOGが現在デロイトトーマツにいる方と話せるネットワークができた

参考元↓
https://www.dodadsj.com/content/190108_deloitte/

この事例の参考になる点としては、退職後の方とつながるための施策を行ったことにあります。
デロイトトーマツほど大きなイベントや工数のかかるメルマガまで行うのは大変だと思います。
ただ、「退職後の方と繋がっておく」という考えはぜひ転用していただきたいです。

工数が少なくできる施策としては、以前会社にいた方も含めた懇親会を開催する事が、挙げられます。
このような施策を行っておくと、退職者が戻ってきてくれたり、そうでなくても新しい取引先開拓につながることもあるのでおすすめです。

④パフォーマンスマネジメント


パフォーマンスマネジメントとは、高頻度(週一)で1on1をして目標の管理を行い、1on1の中でメンバーが行っている工夫や取り組みをキャッチアップして評価に反映させる施策の事を言います。

パフォーマンスマネジメントは、2014年にAdobe社が始めた事で海外で広まった施策で、業績向上と離職防止に効果のある施策です。

最近の離職理由として、「評価に納得できない」というものがとても多いです。日本企業の大半は、期の始まりと終わりにだけ面談して評価をつけるという事が多いですがこのやり方だとメンバーからの納得が得れない事が多いです。

そこで、週一で「目標達成のために何をしていくといいだろう?」「目標達成のために手伝えることはある?」とメンバーが目標達成ができるように支援していく、そして、1on1の中で話した内容や工夫を評価に反映させていく事で、メンバーに適正な評価を行う事ができます。

さらに、週一で目標達成について支援してもらえたり、「今のままだと評価としては〇〇だけど、もっと△△ができたら評価を上げれると思う」と目線合わせをする事で、メンバーとしても評価に納得しやすくなります。

(事例紹介)
企業名:Adobe Inc. 
従業員数:約29,000名
事業内容:ソフトウェアおよび関連サービスの提供

Adobeはパフォーマンスマネジメントを通して、業績向上と離職防止に成功しているため、ご紹介させていただきます。

【背景】
・マネージャーが1人のメンバーについて年次評価を決定するのに8時間かかっていました。当時アドビには約2,000人のマネージャーがいたので、会社全体では8万時間かかっている現場でした。

【やったこと】
・高頻度で目標達成のための話し合いと、現状の評価を振り返る1on1を行った
・1on1トレーニングを、マネージャー向けとメンバー向けのそれぞれで10回ほど行った
・1on1の中で従業員からマネージャーに向けてフィードバックすることもできるようにした

【結果】
・退職の急激な減少(72%削減)
・1人あたり平均10%の売上向上
・年間8万時間の評価工数の削減

参考元↓
https://www.adobe.com/check-in.html

この事例の参考になる点としては、1on1を目標達成と評価を絡めて行ったことにあります。
また、1on1はマネージャーの能力差によって効果が出てしまう事が多いので、研修を導入してマネージャーによる差分が出にくいように工夫している点も参考にしてみてください。

まとめ

2024年度の「大転職時代」に適応するための施策として、2つめの報酬、CQ(文化的知性)・越境マネジメント、アルムナイ施策、パフォーマンスマネジメントといったアプローチを今回はご紹介しました。

中でも、パフォーマンスマネジメントは海外では当たり前なもののまだまだ日本では広まっていない考え方になります。
もし、購読いただいた方の中に、「パフォーマンスマネジメントについて知りたい!」と思われた方はお気軽にご連絡ください。


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