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中学受験における計算力の重要性
以前の記事(中学受験算数 解法暗記の重要性)で算数の解法暗記の重要性について紹介しました。
もちろん、中学受験の入試問題を解くうえで算数の解法をストックすることは非常に重要なのですが、解法暗記に努めても得点が伸び悩むケースがあります。その生徒に必ず共通しているのが、計算力が身についていないことです。
そのため、「どの解法を適用すればよいのかは分かっているけれども、時間内に最後まで解き切ることができない」という問題が発生します。
特に、四谷大塚の合不合判定テストの場合、制限時間50分に対し問題数が多いこともあり、計算力不足が原因で得点を思うように伸ばせなかったというケースも多発しています。
中学受験の算数は、「算数で合否が決まる」といわれるほど大切な教科ですが、その算数の問題を解くのに必要となるのが「計算力」です。
難解な文章問題も、一見すると「計算」とは無関係に見える図形問題も、正確な計算力がなければ正解に辿り着けません。
今回は、計算力向上のためのPOINTをご紹介します。
計算力向上のためのPOINT
中学受験における計算力は、ただ単に計算問題を解くことができる力とは少し異なります。
もちろん、本番の入試や模擬試験の算数において最初の問題に出題される、いわゆる「計算問題」を解く力も計算力の1つなのですが、中学受験においては、中学受験の算数の問題を正確に最後まで解き切る計算力が求められており、これこそが中学受験で必要とされている計算力であると考えます。
そして、計算力を身に付けるためには以下の3つが重要になります。
⑴四則計算のマスター
四則計算とは、小学校で習う足し算・引き算・掛け算・割り算をまとめた呼び方です。
四則計算の正確性が合否を分けます!
四則計算の順番については改めて確認しておいてください。
⑵計算の工夫
中学受験の算数において、計算の工夫は非常に重要です。
特に、分配法則は最も利用するので、確実に使えるようにしておいてください。
今回は以下の問題を通して解説します。
【問題1】
6.28×1.4-2.4×3.14+6.28×0.3(筑波大附属中)
【解説】
POINT
A×B+A×C=A×(B+C)
今回は、共通している3.14に着目します。
6.28×1.4-2.4×3.14+6.28×0.3
=3.14×2×1.4-2.4×3.14+3.14×2×0.3
=3.14×2.8-3.14×2.4+3.14×0.6
=3.14×(2.8-2.4+0.6)
=3.14×1
=3.14
【問題2】
3×4×5×6×7-2×3×4×5×6+5×6×7(豊島岡女子学園中学)
【解説】
POINT
A×B+A×C=A×(B+C)
今回は、共通している5×6に着目します。
3×4×5×6×7-2×3×4×5×6+5×6×7
=30×3×4×7-30×2×3×4+30×7
=30×(3×4×7ー2×3×4+7)
=30×(84-24+7)
=30×67
=2010
⑶重要事項の暗記
中学受験の算数、特に難関校の試験で顕著ですが、問題数が多かったり、問題文自体が長文だったりと、試験時間に全く余裕がありません。
そのため、解答を導き出すための計算を可能な限り早く処理し、少しでも時間を作り出す必要があります。
そこで重要なのが、頻出の計算を暗記することです。
頻出パターンを九九のように暗記することで、計算ミスを確実に減らすことができ、さらに解答スピードも飛躍的に上がります。
以下の点については、特に重要なので必ず押さえておいてください。
①分数⇔小数変換
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②平方数の暗記
※特に11以上の平方数の暗記は必須です。
11×11=121
12×12=144
13×13=169
14×14=196
15×15=225
16×16=256
17×17=289
18×18=324
19×19=361
③3.14の計算
少なくとも、3.14×2~3.14×9までの値は暗記しましょう。
これらを暗記することで飛躍的にスピードが上がります。
3.14×2=6.28
3.14×3=9.42
3.14×4=12.56
3.14×5=15.7
3.14×6=18.84
3.14×7=21.98
3.14×8=25.12
3.14×9=28.26
④三角数
規則性で最も重要な数字です。
1=1
1+2=3
1+2+3=6
1+2+3+4=10
1+2+3+4+5=15
1+2+3+4+5+6=21
1+2+3+4+5+6+7=28
1+2+3+4+5+6+7+8=36
1+2+3+4+5+6+7+8+9=45
1+2+3+4+5+6+7+8+9+10=55
1+2+3+4+5+6+7+8+9+10+11=66
1+2+3+4+5+6+7+8+9+10+11+12=78
1+2+3+4+5+6+7+8+9+10+11+12+13=91
1+2+3+4+5+6+7+8+9+10+11+12+14=105
1+2+3+4+5+6+7+8+9+10+11+12+14+15=120
計算力向上にお薦めの書籍
中学入試 分野別集中レッスン算数 計算(シグマベスト)
計算問題に特化して掲載しているので、効率的に点数をアップさせることができます。基本的な項目から入試基礎レベルまで網羅しています。
また、冊子が比較的薄く、モチベーションを維持しやすい点も良いです。
約2週間で終わる分量にもかかわらず、中学入試レベルの計算問題に必要な最低限のエッセンスは詰め込まれておりお薦めできます。
中学入試基礎ドリ 算数 計算問題[文英堂]
計算問題は繰り返しが基本ですが、ある程度以上のレベルになってくると計算の工夫をいかに上手に使えるかも重要です。
こちらは、同単元を4回繰り返す構成になっています。
入試レベルの計算問題を解くうえで必要な解法のコツが無理なく学べる点でお薦めです。
最後に
「解法暗記×計算力」
これこそが算数が苦手な受験生にとって、算数の成績upの最速の方法であると考えます。
また、中学受験で身に付けた計算力は、大学受験の数学や化学においても威力を発揮します。
実際、大学受験生の指導をしていても、化学の複雑なモル計算などに関しては、中学受験を経験した生徒が圧倒的に強いです。
更に、共通テストについても、近年は制限時間に対して処理すべき問題が明らかに多く、中学受験で培った計算力は必ず役立ちます!
近年、計算力が不足している学生が間違いなく増えています。
東京大学(理系)の入試問題に以下の計算問題が出題されたことが非常に話題になりました。
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東大数学では、以前に比べて思考力よりも計算力重視になったといわれますが、これもその流れを汲んでいるのではないかと感じています。
今回の記事を参考に、中学受験突破はもちろんのこと、今後も必ず役立つ計算力を是非身に付けてください。