人的資本経営における人財の資産化で売上アップ
奈良県のB社は、等級制度、そして人事評価制度と目標管理制度、給与体系の連動を図ることで、社員の現状の立ち位置を自己認識してもらい、ステップアップするための課題も社員がつかめ、上司との面談を通じて、確実に社員が成長できる体制が整ったことから業務効率向上につながり、毎年、売上高を10~20%伸ばし続けている。
約9年前に、B社の社長から、社員ががんばったことを、会社として評価ができる仕組みをつくりたいと相談を受け、人事評価制度と、それと連動した目標管理制度を構築、導入した。
その時も、社長をはじめ、取締役、管理職で「人事評価制度構築プロジェクトチーム」をつくって、この会社の業種や特徴、強みなどを利かすことができる人事評価を構築した。
当初は、社員も人事評価があることから、緊張感を持って仕事に取り組むようになって、評価基準が明確になったことで、何をどのようにかんばらないといけないのかなどについても認識を深めることができ、会社自体の活性化、社内のコミュニケーションなども良くなった。
そして、それから約8年が経過したころ、社長からこんな相談を受けた。
「約8年前に構築した人事評価制度は、当初は良かったけれども、年月を経るうちに、社員も馴れ合いになってきてしまって、設定する目標は、「まぁ、こんなものかな・・・」というレベルで、目標達成の検証も無難な自己評価をするようになってきた・・・ こんな雰囲気を打破して、社員が評価される基準をより明確にして、社員のモチベーションを、さらに挙げていくといった取り組みはできないものだろうか・・・」というものだった。
私は、当初、構築した目標管理制度と、それと連動した人事評価制度を導入した際、明確な成果を生み出すことができたことから、今回は、さらに明確な成果につなげるために、等級制度、そして、その等級制度と連動した人事評価制度への再構築、それと連動した目標管理制度、さらにそれに給与体系も連動を図った、いわゆる私が組織を抜本的に改革する際に必要な4点セットで再構築することを提案した。
この提案にはこんな狙いがある。
等級制度については、詳しく後述するが、等級制度は、社員が会社の中で、今、どこに位置づいて、何を求められているのかが明確になる。そして、1等級上げるには、どのような人材になればよいかについても明確に定められている。この1等級上の等級定義が、社員の次の目標になるのである。
そして、人事評価は、その等級の社員として果たすべき責任を果たしているかを評価する。責任を果たしていれば評価をされるし、責任を果たせていなければ、果たせるようになるための課題を明確にして、次期に取り組む。目標管理は、そのスキルアップを図り、会社への貢献度を高めるための目標を設定して、それが達成できたかどうかを評価する。
そして、社員がポジションしている等級の給与も明確で、等級が上がれば、給与がいくら上がるのかも明確になる。
等級制度と人事評価制度、目標管理制度、給与体系を4点セットで、社長をはじめ、取締役、管理職と私のプロジェクトチームで、検討して構築を進めた。
約1年ほどかけて構築を完了した。
この4点セットを、一気に進めようとすると難しい問題にあたって、なかなか前進することができない場合もあるが、このクライアントでは、そういった問題や課題もすべで洗い出して、ひとつずつ解決して進めていった。
そして、導入後にこんな成果を生み出すことができた。
・社員が等級を昇級するルートは、総合職と専門職に分けて設計したことから、社員が自分の将来進めたい目標を明確に設定することができるようになった
・社員の自分の現状の立ち位置が明確になったことで、自分が担っている責任について理解が深まった
・ひとつステップアップするための目標も明確になった
・将来の目標とひとつステップアップするための目標が明確になったことから、仕事に取り組む意識と目標達成への意欲が高まった
・目標管理制度における目標達成できる社員が増えた
・人事評価のフィードバック面談での上司と部下のコミュニケーションが深まり、信頼関係も深まった
・社員の責任感の高まり、積極的な行動につながった
この会社は、等級制度、人事評価制度、目標管理制度、給与体系を連動した整備を図ることで、社員の将来の目標、直近の目標を設定させ、その目標達成に向けて取り組む社員を評価して、評価に値する社員には、適切な処遇を行うという対応を整えた。
これが、社員を単なる人材としてとらえるのではなく、会社の資産(=人財)としてとらえた対応の具体的な事例である。
これからの成果が、毎年、売上高を10~20%伸ばし続けているという大きな成果を生み出すことにつながっている。
このクライアントの社長がおっしゃっていたのは、「中小企業では、社員を評価するのは、社長の匙加減のところがほとんど。それでは、社長が好きな社員は、いいけれども、そうではない社員は評価されず、不公平が起こってしまう。そんな環境だと、社員の仕事をがんばろうとは思わない。私は、社員が、皆、成果を出した社員は評価される、成果が出せなかった社員は、その原因を一緒に考えて、成果が出せるようにしていきたいと考えています。」ということでした。