金木犀の香りはいつかの未来のキミが思い出す今日だから
ふわりと包み込んでくれるような優しい香り・金木犀。
毎年、爽やかな秋晴れの日に、この金木犀の香りを嗅ぐと、母と歩いた懐かしい街の風景を思い出す。
小学校入学準備で、どこかに母と二人で行ったあの日。
「いちねんせ~いになったら いちねんせ~いになったら」
母と手を繋ぎながら、大きな声で歌っていた。
そのとき、ふわっと甘い香りがしてきて。
大きく息を吸う。
「幼稚園の匂い?この辺幼稚園あるの?」
と私が聞く。甘いその香りは、どこか幼稚園ののりの匂いにも似ているような気がしたからだ。
「違うよ、金木犀のお花の香りよ」
母が言った。
「ふーん…好きな匂いだなぁ…」
お花は少し離れたところにあったのか、弱視の私には金木犀は見えなかった。
でも、空は青くて、心地よい風が吹いていたことは、確かに覚えている。
あの日のことを、なぜだか毎年思い出す。
金木犀のふわっとした甘い香り
幼稚園みたい
ちいさな私
手を繋いでいて
上を見上げると隣を歩く
母
青い空
心地よい爽やかな風
もうすぐ1年生か
幼稚園ともバイバイなのか
情景と匂いと感情
この日のワンシーンは 他の思い出よりも映画のワンシーンみたいに思い出されて。
ずっと不思議だった。
写真があるわけじゃない
でも、確かに映画のワンシーンみたいに綺麗に思い出す
懐かしくて 心地よくて 切なくて
まだ6歳の私が感じた少し大きくなるドキドキ感。
金木犀の香りってスゴイな
毎年あの日にタイムスリップさせてくれるのだから。
***
そんな金木犀の香りにまつわる面白い記事を見つけました。
金木犀の香りを嗅ぐと、懐かしくなるのには、科学的な根拠があったそうです❕
昭和大学医学部生体調節機能学・准教授である政岡ゆりさんのお話によると、日本人にとっての懐かしい香りベスト3は金木犀と、畳、シッカロール(ベビーパウダー)だそうです。
いずれの香りも、10歳以下の幼少期の記憶を思い出す人が多いのだとか。
政岡さんによると、
そうか、私は毎年秋になると、あのふわりと優しい香りを嗅ぐたびに、あの日のことを思い出し続け、すっかり記憶として定着したのですね。
きっと、今後何十年と生きるのであれば、いくつになっても思い出し続けるのでしょうか。
あの日からずっと今日まで繋がってきて、あの日の香りと共に生きている。
生きている限り、過去と現在と未来はずっと繋がっていく。
あの日を思い出すと自分だけじゃなくて、母たち家族や幼稚園の記憶が思い出されるように。
今日の私も、確実に未来の私と繋がっていて、未来の子どもの記憶や未来のある日の感情に繋がるかもしれない。
今日は今日だけのためにあるんじゃない。
過去と未来の自分だけのためでもなく、
過去と現在と未来の、自分と誰かの記憶と心に、ずっと繋がっていく。
そう考えると、自然と背筋が伸びました。
香りとともに思い出されるいつかの記憶のなかで、
私たちは楽しい顔をしているか
笑っているか
悲しい記憶より 寂しい記憶より 辛い記憶より
笑っていて 幸せな記憶を 増やしていきたい。
いつかの未来 大切な息子が思い出す日が
金木犀の香り漂う今日になるかもしれないもんね。
金木犀の甘い香りから、いろいろ考えてしまったけれど、
私はただただ、
あの甘くて懐かしい金木犀の香りが大好き❕
思いっきり深呼吸したくなる。
元気が湧いてくる香り。
ずっとずっと、毎年咲き続けますように。