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気持ちを整える練習

怒りや悲しみというのは、悪い感情なのだろうか。

子育てをしていると、子どもが怒りで絶叫したり、泣き止まなかったりする場面は日常茶飯事だ。インターホンを別の子に押されてしまって泣いたり、先頭を誰が歩くかで揉めたり、大人から見れば実にどうでもいい内容で彼らは怒ったり泣いたりする。

ある時、5歳の長男が友達とのやり取りの中でキレてしまったことがある。
「〇〇くんはいじわる!悪い子!宇宙に飛んで行っちゃえ!!〇〇くんなんて嫌い!!」と、保育園の玄関先で泣き叫ぶ彼に、わたしはどう声をかけるべきかと悩んだ。

「そんなこと言っちゃダメ」「〇〇くん、悲しいよ」とでも言うべきかと思ったけれど、それはどうしてもしっくりこなかった。なぜなら、〇〇くんが長男の堪忍袋の緒が切れるくらいにちょっかいを出していたのを目の前で見ていたからだ。正直、わたしも〇〇くんには腹が立っていた。

だから、わたしは「そうなんだね。長男くんはイヤだったんだね。」とただひたすらに、彼の気持ちを受けとめることに徹した。そうして、「いまお母さんにしてほしいことはある?」と尋ねると、「背中トントンして欲しい」と言うので、そのようにした。
ヒートアップとクールダウンを繰り返しながら、20分か30分かけて落ち着きを取り戻し、長男はその日も登園していった。

この出来事でよくわかったのは、「湧き上がる感情は止められない」ということだ。怒りも悲しみも、自分の意思で止められるものではないから、出てきた感情をその通り受けとめるしかない。

とは言え、受けとめたものをすべて表に出し尽くしていたら、社会的には不都合な場合が多い。先の例で言えば、保育園の玄関で「〇〇くんは悪い子!飛んでいけ!」と叫んでいた長男だけが、悪口を叫ぶ子に見えてしまったように。

だから、大切なのは「出さないこと」「抑えること」ではなく、「出てきた感情をどう収めていくか」ということだと思う。それは、湧き水の通り道を作って、川へ合流する流れを作り出すことに似ている。無理に蓋をしたり塞き止めてしまったりすると、結局別のところからあふれ出てしまうものだ。

長男には「出てきた気持ちを落ち着けていく練習をしよう」と伝えている。
深呼吸でも、水を飲んでもいい。一旦その場を離れてもいい。安心できる人に話を聞いてもらうのもいい。

そうやって自分の感情と上手に付き合いながら、大人になって欲しいと思う。


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