【書評】自分より"頭がいい人"に勝つ方法「あの人はなぜ東大卒に勝てるのか」津田久資著
「周りをアッと言わせるようなアイデアを生み出したい」
「会議でキレのある発言をしたい」
「提案で上司を唸らせるような提案がしたい」
毎日仕事を頑張っている皆さんは、このように思うことが多いのではないでしょうか?
本日ご紹介するのは、東大法学部を卒業し、ボストンコンサルティングや博報堂で数々のコンサル業務をこなしてきた津田久資さんの、「あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか―論理思考のシンプルな本質」です。
この本には、会社のライバルや同業他社に勝つための「論理的思考力」の本質が書かれています。
私が今年読んだ本の中で間違いなくベスト3に入る、価値観をガンガンに揺さぶられた本です。
あなたは本当に「考えた」ことがあるか
1日の仕事の中で、あなたはどのくらいの時間を「考える」ことに費やしているでしょうか?
人によって答えはまちまちだと思います。3時間の人もいれば、10分の人もいます。また、「考える」に入るか分からないような仕事もあります。
いわゆる「考える」と言われる仕事は、ざっくり2つに分けられます。
・当てはめる…既存の公式・フレームワークに当てはめる
・考える…自分で作ったフレームワークから答えを導く
このうち、前者の当てはめる事は「考える」ことに含まれない。と筆者は述べます。
なぜならこれは、ただ単にその公式を知っているかどうかという知識の問題でしかないからです。
知識というフィールドでは、自分より社歴が長い人、学歴が高い人より優れたアイデアを出すことは非常に難しいです。
同僚や競合より優れたアイデアを生み出すには、後者の「考える」が必要です。
高学歴や大企業が知識の差で勝ち続けてきた時代から、テクノロジーの発展により個人やスタートアップによる下剋上が容易に起きる時代になっています。
これからは、知識を持っている人ではなく「考える力」を持っている人が生き残る時代です。
3つの要素で発想の質は決まる
「考える力」は言い換えると発想の質(広さ)に言い換えられます。
発想の質(広さ)は、以下の3つの要素に分解されます。
発想の質(広さ) = 情報量 × 加工率 × 発想率
情報量は今自分の頭の中にある情報の量で、加工率はそれを自分のアイデアとして加工できる力です。
ここで重要になるのが、3つ目の発想率です。これは頭の中に潜在しているアイデアを引き出して言語化する力です。
これを見ると「結局情報量が多いヤツが勝つのか」と思ってしまいますが、下図をご覧ください。
これを見ると、情報を持っていてもそれを引き出す力が弱い人に対して、下の図のように発想率の高さで勝つことができます。
人のアイデアを聞いて「なんだそんな事か。そのくらいなら俺でも思いつく。」という人がいますが、この図を見ると「アイデアが頭にある」事と「そのアイデアを引き出す」事には天と地ほどの隔たりがあるということが分かります。
どうやってアイデアを引き出すのか
では、どのようにして発想率を高めていけばいいのでしょうか?
筆者は「人が考えているかどうかを決めるのは、その人が書いているかどうかで決まる」と述べています。
書くことのメリットは、ベストセラー本の「メモの魔力」や「0秒思考」などで皆さんもご存じかと思います。
ではなぜ書くことがこんなにメリットをもたらしているかというと、書いてる人だけが考えていることになるからです。腕組して黙っているだけでは、考えたことになりません。
書くことによって、フレームワークのように物事に境界線を引き、自分が今何について考えているかを意識することが出来ます。
また、書くためには言葉が必要です。
つまり、「言葉によって境界線を引くことによってはじめて、人は考えることができる」ということなのです。
「言葉」の語源は「ことのは(言の端)」です。言葉そのものが事象を切り取る端の部分、つまり境界線の役割をなしているのです。
論理的に考えるとはどういうことか
書くこと=考えることという事が分かったら、次はどうすれば論理的に考えることができるか?という事について考えます。
あなたは「論理的とはどういうことか?」と聞かれたら、なんと答えますか?
多くの人は「筋道が立っていること」と答えると思います。
A→B→C→Dの矢印にあたる部分ですが、筆者に言わせれば論理的であるためにはそれだけでは不十分で、そもそもA,B,C,Dの言葉の定義がしっかりしていなければ論理的とは言えません。
言葉という部品があやふやだと、どんなに文章がしっかり組み立てられていても論理がグラついてしまいます。
まとめると、論理的であることの条件として
①筋道を明確にして考える事
②言葉を明確にして考える事
の2つが必要です。
直感 vs 論理
ここまで読んでいただいた皆さんの中には、「優れたアイディアは論理ではなく、直感から生まれるのではないか?」と思った方もいるかもしれません。
革新的なキャッチコピーやイノベーションは、直感から生まれているというエピソードを聞くと、論理的=真面目で一般的、直感=尖ってて革新的というイメージを持ってしまいます。
しかし、筆者はこの2つは相対するものではなく、直感とは論理を突き詰めた先に、最後に使うものだと述べています。
下の図をご覧ください。
左の図は最初から直感に頼ることを表しています。これは崖の向こうに何があるかも見えていない状態でジャンプするような行為です。
それに対して、右は論理と直感を組み合わせた例です。
発想力が高い人は、まずロジックで自分の思考を分解していきます。そして岸が見えたら、最後に直感の力を使ってジャンプします。
そうすることで、優れたアイデアを生む確率を高めることが出来ます。
論理と直感は相反するものではなく、補完関係にあるという事です。
どうやって論理的思考力を鍛えるのか
それでは、私たちはどのようにして論理的思考を鍛えることができるのでしょうか。
最後に、明日から実践できる4つの方法をご紹介します。
①意識を変える…考えようとするクセをつけ、日ごろ触れる言葉の定義を意識する。
②正しい文章をインプットする…論理的な文章に意識して触れ、時には書き写す
③ノートをとる…メモを取る際、箇条書きではなく文章で書いてみる
④パワポではなくWordを開く…イメージではなく文章でまず考える
この4つを意識することで、これまでより論理的に物事を考えることが出来るようになっていきます。
まとめ
USJのV字回復で有名なマーケターの森岡毅さんが先日テレビで、「仕事には冷徹な客観性と熱い情熱の両方が必要」と仰っていました。
この本に書かれている論理の先に直感があるという事も、同じメッセージが込められているんだと思います。
人をアッと言わせるアイデアを生み出すためには、正しい言葉によって論理を積み上げて、頭の中に眠っているアイデアを引き出し続けるという地道な作業が必要だという事をこの本から学びました。
これからもnoteを通じて書くことを実践し、論理的思考を鍛えていきたいと思います。
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