【全4回連載:畜産の新しいカタチ】牛のげっぷ・ふん尿を資源に!メタンガス排出削減の最新動向と使えるソリューション特集!
こんにちは!ER.の鈴木です!
この夏も暑いですね・・溶けそうですね・・。
世界各地で熱波や豪雨被害が出ていたりと心配ですが、気になる気候変動対策のなかでも、近年ホットになっているのが畜産由来のメタンガス対応!
すでに聞いたことあるよという方も多いかもしれませんが、牛のげっぷやふん尿にはメタンガスという気体が多く含まれており、このメタンガスが二酸化炭素の25倍の温室効果があるとされ、畜産由来のメタンガス対応も急務となっています。
ということで「畜産業のメタンガス排出」について全4回シリーズで海外の政策動向や最新のソリューションなどお届けしていきます!
第1回目としてまずは、
①改めて畜産業(牛)のメタンガス対応になっている背景ってなんだっけ?
②メタンガス削減にむけて海外はどうしてるの?
をざっくりご紹介します!
16億頭の牛とメタンガス
私たちの生活に身近な存在の牛。
地球上には16億頭もの牛がいると考えられていますが、牛のげっぷなどから排出される無色・無臭のメタンガスは、二酸化炭素の約25倍の温室効果がある(※1)と言われています。
それってどれくらいの影響力なの?って思う人もいるかもしれませんが、具体的にはアメリカの酪農企業13社から排出される温室効果ガスの合計=数基の大型火力発電所から排出される温室効果ガスの合計である、という調査結果も明らかになっています。
ちなみに日本における温室効果ガス排出量のうち、農林水産業から生まれる温室効果ガスは約4%。そのうち、牛のげっぷやふん尿から排出されるメタンなどは約30%を占めていると言われています。
※1:環境省 温室効果ガス排出・吸収量等の算定と報告より
日本で見ると「え?たった4%だけ?なんでそんな畜産ばかり取り上げるの?」と思われるかもしれませんが、世界全体の温室効果ガス排出量で見た場合は畜産含む農業分野が約10%を占めており、そのうちの半分が家畜によるげっぷやふん尿由来と言われています。
またメタン濃度単体で見ても年々排出量が増加していることがわかっています。
地球上の土地は有限であり、ブラジルなどでは畜産業に対する土地利用とアマゾンの熱帯雨林保全でせめぎあっている一方、増えゆく人口のタンパク質源を支えるための大豆ミートや培養肉などの技術開発も進められています。
こうした流れの中で、既存の畜産業自体の環境負荷低減も急務ということから、畜産の中でも頭数が多い牛から排出されるメタンガス対応に注目が集まっているわけです。
メタンガス排出に課税も!?海外の政策動向2023年
畜産業のメタンガス対応に向けては、各国も政策レベルで取組が進められています!今回は海外の政策動向を簡単にまとめてみました。
▼米国:大規模な予算措置でサプライチェーン一気通貫の取り組みを推進!
農業関連の気候変動対策についても国際的なイニシアチブを主導する米国。
なかでも、畜産業は米国全体のメタン総排出量の36.1%を占め、米政権の行動計画中にもその対応が明記されています。
酪農・肉用牛業界においては、酪農業の持続可能性に関する取組をけん引する「酪農イノベーションセンター」や「持続可能な牛肉のための米国円卓会議」が温室効果ガス排出削減を主要な目標に掲げ、生産者に過度な負担を強いないように留意しつつ、サプライチェーン全体での取り組みを推進。
生乳生産過程の温室効果ガス排出源として「飼養管理」「飼料生産」「ふん尿管理」「エネルギー使用」の4点に重点を置き、炭素隔離、ふん尿の肥料化や再エネ化など、生産者も利益を得られる形でカーボン・オフセットを目指しています。
さらに、酪農・肉用牛業界の意向も踏まえて数千億を超える大規模な予算措置も実施。政府・業界や研究機関などが一体となって、気候変動に配慮した農畜産物の市場拡大、生産者へのインセンティブ付与の実現に向けて力を入れています。
なお、2021年11月には、オクラホマ州を拠点とするロー・カーボン・ビーフ社が「低炭素牛肉(LCB)」として温室効果ガス排出量を削減した牛肉を差別化・付加価値化して販売開始!まだマーケットには出回っていないようですが、商品として消費者へ訴求する動きも活発になっていくことが予想されます。
▼ニュージーランド:メタン排出する家畜に課税案!
約1000万頭の牛と約2600万頭の羊を保有する輸出大国のニュージーランド。同国の温室効果ガス排出量の半分は農業が占めており、そのうち約90%は生物由来のメタンガスといわれています。
ニュージーランドでは業界ごとに排出量を定めていたなか、これまで農業は排出量取引制度の対象外となっていました。
他方で、2022年10月11日にジャシンダ・アーダーン首相が記者会見を実施。気候変動対策のために、世界で初めて家畜やおならによるメタンガス排出に対して農家に課税する提案を推進する方針を発表。2025年までに導入する意向を示し、話題になりました。
これに対し農業団体は「我々の農家や業界を不当に危険にさらす制度は受け入れない」と強調するなど制度推進に伴う代償について懸念を強めていますが、一方、政府は農家に重い代償を科すことなく、排出削減の奨励策を盛り込みたい意向があり、徴収できた税収は「新技術、研究、農家への奨励金を通じて農業分野に還元する」などとしてメタンガス排出削減対応に取り組む農家さんを奨励すると説明しています。
▼オーストラリア:
肉用牛生産が全農業産出額の約20%を占めるオーストラリア。
生産される牛肉の約7割はアジアや米国など78カ国以上の国に輸出し、全体で約2640万頭の牛を放牧しています。
豪州肉用牛業界では近年、動物福祉、環境に与える影響、牛肉の栄養と人の健康などの消費者や社会のニーズの変化に対応するため、2017年4月に科学的根拠に基づく透明性の高い、豪州独自の牛肉持続可能性に関するフレームワークを発足。
土壌管理による草地造成や放牧計画の作成、水路のある農場においては肥料や土壌流失による河川の水質汚染に対する取組など環境への責務が定められ、特に集水域の水質汚染に関心の高いグレート・バリア・リーフを抱える州では、法令により集水域における個別農家レベルでの環境対策の対応や記録が義務付けられています。
ニュージーランドはじめ、畜産主要国ではかなり踏み込んだ政策提言までされてきていることが伺えます。
他方で、畜産や飲食業界からすると大打撃を与えた新型コロナウィルスの傷もまだ癒し途中。
実際、畜産業の方からは「コロナだけでも大打撃を受けたのに、さらに脱炭素対応なんて・・」というお声も聞きまして、本当におっしゃる通りだと思います。。
それでも少しでもこの脱炭素の潮流をチャンスにしていくことで、畜産業の価値を再定義したり、新たなビジネスチャンスに繋げられるかもしれません。
日本の食文化を支えてきた畜産業を営む方たちのさらなるイノベーションに繋げるため、次回はシリーズ2回目として、北海道をはじめ全国でススム、畜産業のふん尿などによるメタンガスを使った最新の再エネソリューションについてご紹介します!
私たちの日々の食卓を支えてくれている日本の畜産業の明るい未来に向けてLet’s ジャストラ!
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