『二人一組になってください』を読んでどうしても書きたくなったこと
1.はじめに
2024年9月19日発売の『二人一組になってください』(著:木爾 チレンさん)を読んで、どうしても書きたいことがあったので、書く。
2.前提
・4,5にネタバレ要素を多分に含む
・著者の方の他作品は読んだことがない
3.全体的な感想
「本当の友情とは?」とはこの本の帯コメントに書かれている見出しだが、この触れ込みにある通り、誰かと手を繋がないと死ぬデスゲームを通して、カースト制度が敷かれたクラス内での友情のうつろいが描かれている。クラス27人ほぼ全員の深堀りエピソードがあり、爆ぜゆく女子高生たちに思いをはせることもできて読み応えのある作品だった。クラス内の誰に強く感情移入するかも人それぞれあって面白そう。
思春期の女子高生同士の表面上の関係が、デスゲームによってメリメリと剝がれていく様子が痛快でありながらもどこか自分に重ねてしまうところもあり、心にぽっかり穴が開いたようだった。
4.「いのり」と「翠」について
「いのり」と「翠」が授業中にイヤホンで互いのおすすめ曲を共有するくだりで登場した『蝶々P』の作品に『Black Board』という曲がある。わたしが一番好きな曲といっても過言ではない。というのは置いといて、黒板にルールが記載された教室が舞台で蝶々Pの名前を見たときに真っ先に頭の中でこの曲が流れた。そして以下は同曲動画の詳細情報より。
「白いやつと黒いやつのお話。
これで僕らは一つになれるかな?」
……….。
『二人一組になってください』を書くにあたって頭の片隅にはこの曲があったのではなかろうか、と邪推したくもなる。ぜひご存じない方には一聴をおすすめしたい。
オタク、すぐこういうことが言いたくなってしまう。このこじつけを共有する人がいなかったからここに書きなぐるわけだが…。
5.結末について
最終的には主人公の「美心」と共に卒業した「花恋」が教師として【特別授業】を開催し、「じゃあ、二人一組になってください!」と教え子たちに宣言して物語が幕を下ろす。いわばループもので、『人狼ゲーム(竹書房文庫)』が思い出される結末だった。
きっと花恋が担任する教室からもいじめが消えることなく、被害者を除いた全員(花恋も含む)がいなくなることでしか罪滅ぼしができず、環境や時代が変わってもいじめが無くならないことを示唆する結末といえる。
勝手な解釈だがこの作品では、いじめの主犯は言うまでもないが、自己保身に走り、「無自覚の悪意」によって被害者の心に矢を放つその他の大衆に対する啓蒙が多分に含まれていると捉えた。
こういった内容の作品を学生のうちに読んでおきたかった。そして、本当にこの本を読むべき層に届き切らないのだろうと思うと悔しい気持ちがある。
6.おわりに
わかったようにつらつら書いたが、わたしも「無自覚の悪意」を振りまいていた側だった。誰かに抜けない矢を放っていたのかもしれない。私も地獄に落ちるべきではないのだろうか。