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毎日執筆チャレンジ19~30まとめ
挨拶と説明
先にこっちを書くべきだった。失敗したぜ。どうもはぷにんがーです。
『毎日執筆チャレンジ』が良い感じにキリのいい場面まで来たので、そのまとめnoteです。
例の如く1,000文字ちょっとぐらいの小説になっています。
ちなみに未完です。続きは随時更新しますので、どうぞお楽しみに。
ではいってみよう。
『黒猫から始まる物語もあります』
シーンその3(毎日執筆チャレンジ19~30まとめ)
小説『黒猫から始まる物語もあります』
まとめ③
そんなやり取りで保護したんだっけ―――なんて、たった30分ほど前の記憶を、昔の思い出のように嚙み締めている私を差し置いて。
「クマ~!ここに居たのかお前~!」
家に入る事すら躊躇っていた少年は、ミルクを飲んでいる猫を見るや否や、一目散に駆け寄った。
一方で、猫は一瞬顔を上げ、少年に短く鳴いた後、すぐまたミルクを飲み始めた。
飼い主よりもミルクが大事らしい。そんなに気にいったのかソレ。猫ちゃんと少年の温度差で風邪を引きそうだ。
「…えっと、その子で合ってる?」
「はい! 間違いなくクマです!」
「…クマって、その子の名前?」
「はい! 黒猫の『クマ』です!」
とてもいい笑顔で言い切られた。猫なのに熊。バナナに桃色の文字でリンゴと書いた画像が脳裏に浮かんで、思わず吹き出してしまった。
「…やっぱり…変ですよね…」
猫をなでながら、寂しそうに笑う少年。
おどおどして、笑って、しゅんとして―――表情がコロコロ変わる子だな、なんて思いながら、笑った事を謝る。
「ごめん。可愛いと思うよ」
「本当ですか?」
「うん。黒いし、子熊みたい」
「あー、それもありますけど…」
猫ぞう改め『クマ』は、もうミルクを飲み終え、空の皿をペロペロ舐め回していた。
その体をすっと持ち上げ、少年はクマの、無防備なお腹を見せてくれた。
「ここ、模様があるんですよ」
持ち上げられ、だらーんと、干した洗濯物みたいに伸びるクマの身体。黒一色に見えたソレは、お腹、人間や熊で言うところの胸の部分にだけ、白い毛が生えていた。
その毛が、前足から前足を、弧を描いて繋いでいるような模様を作り出していて。
まるで、夜空に浮かぶ三日月のようで。
「この模様がツキノワグマみたいなので、クマって名前にしました」
得意げな顔の少年。当の本猫は、どういう感情か、私を見ながらワーオと小さく鳴いた。
そのどちらも可愛らしくて、つい、また笑ってしまった。
「なっ、なんで笑うんですか? やっぱり変ですか?」
「違う違う。ごめん。可愛くって」
「あー。可愛いですよね、クマ」
「……………そうだね」
「……なんですか今の間」
「何でもないよ……ふふっ」
「やっぱりおかしいって思ってますよね!?」
クマを抱えながら抗議する少年。大きい声を出したからか、クマは身じろぎをして少年から離れ、私の元へ来た。
その背中を撫でながら、
「思ってないよ、本当に。むしろいいセンスだと思う」
「…本当ですか?」
「うん。君が考えたの?」
「はい! 学校で―――」
少年が喜々として語ろうとした、その時。
ガラスが砕け散るような、すさまじい音がした。
「わっ…!?」
ビックリしたクマが飛びあがり、ソファの下に隠れてしまう。かくいう私も十分びっくりしたけど。
音の方向からして、お隣さんのようだった。リビングの壁越しに聞こえてきたらしい。
という事は、相当派手にやらかしたようだが―――
「……」
少年を見やると、口を固く結び、拳を握っていた。
何かをじっと堪えているような、目を逸らしているような、そんな表情で。
「…すみません、帰らないと」
私が何かを聞くよりも早く、少年はスっと立ち上がり、ソファに向かった。
「クマ、おいで」
手を差し伸べられ、おずおず近づいてくるクマ。
その身体を優しく抱きかかえ、礼儀正しく一礼し。
「…お邪魔しました」
一人と一匹は、なんともあっさり出て行ってしまった。
「……」
急に静まり返るリビング。
そんなに騒がしい客でも無かったのに、打ち上げ後の帰り道みたいな、
妙な虚しさに襲われて。
「……やるか」
とりあえず、クマが飲み干した皿を片付ける事にした。
~ 続く ~
まとめ①
まとめ②
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